作曲家志望者向け講座「山口ゼミ〜プロ作曲家になる方法〜」開催記念 特別連載 第一回:何故、いま「プロ作曲家」なのか?

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2012/12/20 (木) - 19:30
作曲家志望者向け講座「山口ゼミ〜プロ作曲家になる方法〜」開催記念 特別連載 第一回:何故、いま「プロ作曲家」なのか?

左から:山口哲一氏、伊藤 涼氏

プロデューサー 山口哲一
音楽プロデューサー 伊藤 涼


昨今、様々な音楽環境の変化に伴い、作曲家の在り方も多種多様になった国内音楽シーン。そんな状況の中、新しいコンテンツビジネスに対応したプロデューサーを育成する「東京コンテンツプロデューサーズラボ」が、2013年1月から作曲家志望者向けの講座を開始するという。今回は、「山口ゼミ〜プロ作曲家になる方法〜」と題されたこの講座(8日間のコース、第1回は1月21日)を主宰する音楽プロデューサーの山口哲一氏と伊藤涼氏のお二人に、講座の狙いや開設経緯等を伺った。
 

矢印(赤) 『山口ゼミ〜プロ作曲家になる方法』 http://www.tcpl.jp/openschool/index.html#kouza15
※2013年1月9日に無料説明会開催。詳細はコチラ → http://www.tcpl.jp/news/2012/12/19vol3.html

 

山口 哲一(やまぐち・のりかず)
プロデューサー


1964年東京生まれ。株式会社バグ・コーポレーション代表取締役。
SION、村上"ポンタ"秀一、村田陽一等の実力派ミュージシャンのマネージメントを手がけ、音楽プロデューサーとして 東京エスムジカ、ピストルバルブ、Sweet Vacationなどの個性的なアーティストを世に送り出した。
音楽における、ソーシャルメディア活用法の実践的な研究の第一人者でもある。プロデュースのテーマには、ソーシャルメディア活用、グローバルな視点、異業種コラボレーションを掲げている。
(社)日本音楽制作者連盟理事、『デジタルコンテンツ白書2012(経済産業省監修)』編集委員を務める。
著書に『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本(ダイヤモンド社)』(共著:ふくりゅう)、
2012年10月25日リットーミュージックから『ソーシャル時代に音楽を"売る"7つの戦略』を出版。
Twitter:http://twitter.com/yamabug
ブログ:http://yamabug.blogspot.jp/
詳細profile:http://ht.ly/42reJ

 


伊藤 涼(いとう・りょう)
音楽プロデューサー


千葉県生まれ。2001年にアメリカ、マサチューセッツ州ボストンのBerklee College of Music卒業。帰国後、株式会社ジャニーズ事務所が運営するレコード会社、Johnny's Entertainmentに入社。
近藤真彦、少年隊、Kinki Kidsの音楽ディレクターを経て、2004年にデビューしたNEWSのプロデューサーになる。2005年には修二と彰の「青春アミーゴ」をミリオンセラーに導き、その後も山下智久のソロシングル「抱いてセニョリータ」のヒット、テゴマスのジャニーズ初の海外デビューや、タイの兄弟ユニットGolf&Mikeの日本デビューを仕掛けた。
2009年6月にJohnny’s Entertainmentを退社し、同年7月に株式会社マゴノダイマデ・プロダクションを設立。音楽に関する企画運営をしながら、フリーのプロデューサー・作家としても活動する。
「ここにいたこと (AKB48)」、「走れ!Bicycle (乃木坂46)」の作曲者。
Twitter:https://twitter.com/ito_ryo
株式会社マゴノダイマデ・プロダクション:http://www.mago-dai.com/

 


●まず、今回「プロ作曲家になる方法」というサブタイトルで「山口ゼミ」を始められる動機を聞かせていただけますか?

山口:僕は、マネージメントとプロデューサーという立場で、新人アーティストを育成するという仕事を長年やってきましたが、最近の音楽ビジネスの環境の変化に危機感があるんです。

昔は、アーティストとしてメジャーデビューすると、たとえ売れなくても3年間くらいは一流の環境で作品作りができましたし、アーティストとして成功しなくても、その経験を元に、才能と熱意があればサウンドプロデューサーや作詞家、作曲家になるということができたんです。今、活躍しているサウンドプロデューサーで、アーティストとしてのデビュー経験がない人ってほとんど居ないのではないでしょうか?いわば、メジャーデビュー経験がプロ音楽家の「育成の場」になっていた訳です。

現在、こういう環境が減ってきているんですね。1年で結果が出ないとレーベル契約が終わってしまうし、制作環境も余裕が無くなってきている。このままじゃマズイなと思っていた時に、作曲家志望者向けのセミナーをやって欲しいと、依頼を受けました。それで、どうせやるなら徹底してやってみようと。大学のゼミみたいな感じで、受講生ときちんと双方向のコミュニケーションをとりながらやりたいなと思ったんです。

僕は、これまで、アルバイトをしながら活動していたアマチュア音楽家を何人か年収1,000万円クラスに育てた経験はあります。だから育成には自信があるのですが、自分が作曲や編曲をする訳では無いので、細かいスキルは分からない。そこで伊藤涼さんに「副塾長」みたいな感じで手伝ってくれないか、と声を掛けたんです。

●伊藤さんは、ジャニーズ・エンタテイメントでディレクターだったんですよね。

伊藤:はい。アメリカの音楽大学を卒業してから、直ぐにジャニーズ・エンタテイメントに入社しました。近藤真彦や少年隊、Kinki Kidsのディレクターを経て、NEWSのプロデューサーになったんですけど、並行して修二と彰の「青春アミーゴ」や山下智久のソロワーク、タイ人の兄弟ユニットGolf&Mike、NEWSからの派生ユニットであるテゴマスも仕掛けたりして、色々やってました。

山口:現在、職業作曲家が、楽曲を採用されたい代表が、ジャニーズとアイドルじゃないですか。伊藤さんは、ジャニーズ・エンタテイメントのディレクターとしてコンペを発注して選ぶ側を経験していて、一方、フリーになってからは、作曲家としてコンペに参加する側で「乃木坂46」のシングル曲を書いている。コンペの出入りの両側を体験している人だから、今回の講座に最適任だなと思ったんです。

伊藤:今、職業作曲家になるのは大変だと思うんですよ。コンペはたくさんあるけど、売れるアーティストのコンペになると宝くじ並みのすごい倍率だし、今までUK・USをターゲットにしていた海外の作家も日本のマーケットにどんどん売り込んできていますしね。

山口:CD不況とか言うけれど、日本は世界一の音楽マーケットだもんね。円高だし。狙ってくるよね。

伊藤:数年前に日本の音楽マーケットがUSのマーケットを抜いて世界第1位になったのをきっかけに、海外の作家や出版社は日本になだれ込んできましたね。彼らはビジネスにおいて攻撃的で、これまで日本人という仲間内だけで完結できていた音楽制作の現場にまさに“殴りこんで”きたって感じです。

欧米化した日本のPOPSに彼らのサウンドが必要とされてることも手伝って、どんどん著作権のシェアを奪っていってます。もちろん、サウンドのレベルもかなり高いですよ。僕も10年前からヨーロッパの作家達と仕事をしていますけど、彼らのいわゆる“デモ音源”の完成度はハンパなく高くて、そのままテレビやラジオで流れたとしても遜色ないほどカッコいいんですよ。日本人作家のデモと比べると雲泥の差ですね。

CDをリリースする上で、タイアップが重要な役割を果たしている今の音楽業界では、聞き映えが良くてデモ時点で完成度の高い海外作家のデモが選ばれてしまう傾向にある。でもやっぱり、日本人にしか作れない音楽っていうのがあるんだから、日本人作家はそこを大切にしていかなきゃと思いますね。

●海外作家に負けている場合じゃないと。山口さんはどうでしょうか?

山口:僕としては「負けるな日本の若者!」という気持ちもあるけど、同人音楽の「ボカロP」への対抗心もあるんですよ。「ニコニコ動画」のUGM(user generated media)の仕組みは、とても良くできていて、リスペクトしています。才能発掘の場にもなっていると思います。ただ、初期に成功したボカロPは、元々、音楽業界で仕事していた「プロ」もいたけど、その後に続いた人たちは、ニコ動のカルチャーから出てきている印象が強いです。だから、従来の音楽シーンの流れとは断絶していて、音楽業界の良いところが引き継がれていない気がするんですね。それに、アマチュアっぽいことが「善」とされるという価値観もあるから、今、敢えて「プロ作曲家」育成、って言いたいなと。時代逆行っていわれもいいやって(笑)。

伊藤:たしかに、何でもライトな方が好まれる時代だからこそ、あえてプロ意識とか熱く語りたいですね。

 

●マネージメントという部分ではいかがでしょうか?

山口:いわゆる「作家事務所」っていうのも、何か時代の間尺と合わなくなっている印象があるんですよね。なので、何か新しい仕組みが作れるといいなと。この「山口ゼミ」のOB会的な形で、何かできないかなとか、まだ漠然とですが考えています。

伊藤:実際、フリーの作家が増えていますね。作家事務所はコンペを持ってきてくれてもマネージメントはしてくれない、あるいはできない、というのが現状です。なかなかコンペには勝てないし、たまに勝てても50%近いマネージメント料を事務所に持っていかれるんなら、作家事務所なんかに所属するメリットが少ないと考える作家が多くなった。

僕は作家事務所にもちろん所属していないんだけど、個人でコンペに参加するだけでなく、国内外の作家たちとチームを作って制作やプロモーション、ブランディングもしてます。これからはそれぞれの長所を持ち寄って、さらなる高みを目指せる作家コミュニティを作れたら面白いんじゃないかと思っています。

作曲家志望者向け講座「山口ゼミ〜プロ作曲家になる方法〜」開催記念 特別連載
●他に、この講座ならではの部分はありますか。

山口:クリエイターとしてのスキルやセンスが大事なのは当然ですが、業界慣習を知っておくことや、気遣いみたいなこともプロで続けてくには重要ですよね。今回は、せっかくマネージメントをしている僕が主宰するので、そういう「人間教育」もちゃんとやりたいと思います。これまで新人アーティスト育成で失敗もしているから(笑)。お世話になった人を裏切ると仕事は無くなるとか、そういう部分もちゃんと伝えたいです。

伊藤:この音楽業界の慣習って特殊ですからね。簡単に伝えられるようなことでは無いですけど、この業界で強く生きていく為には知っておきたいですね。そうしないと簡単に交通事故にあってしまったりしますから。それにせっかくこのようなセミナーをやるなら、夢を大きく、ここから本物のスター作曲家を産み出したいですね!

山口:そうですね。この種のスクールやセミナーって、どうしても「元・現役」のクリエイターの方が教える場合が多いじゃないですか。以前に活躍していても、もう実際に現場からは離れてしまっている人。だから、ここでは、今、第一線で仕事をしている人だけにして、そのパッションを感じてもらいたいなと思っています。

●確かにゲストのみなさんも、第一線で活躍されている方々ですね。

山口:今回のセミナーにゲストとして参加していただく浅田祐介さんにしても、島野聡さんにしても、アーティストも経験し、サウンドプロデューサーとして大ヒットも出して、しかも長くこの仕事をしている方々ですからね。それから、おそらく、2012年に日本で一番沢山のアニソンを制作したであろう佐藤純之介さんには、その時に持ってる仕事をリアルにコンペとして教えて貰って、応募させることになっていて、楽しみなんです。バリバリの現役で、今、ヒットチャートにいる人たちと接することで受ける刺激は若い人ほど大きいと思います。

伊藤:コンペの話は僕のところにもたくさんくるので、受講生から良い曲が出てくれば、どんどん出していきたいですね。可能性のある曲はブラッシュアップしてディレクターにプレゼンするのもありだと考えていますし。

山口:僕は、伊藤さんと三回に分けてやる「デモテープの公開添削」が、「山口ゼミ」一番の肝だと思っています。公開添削は、先日(12月12日のセミナー「作曲家最前線」)試しにやってみたんですけど、いきなり聞いて講評するのは、緊張したなぁ。

伊藤:面白かったですね。公開添削っていう“熱を持った場所”って今の音楽業界では敬遠されがちで、人前で裸になるなんて野蛮だみたいな(笑)。だからみんなコソコソとネゴシエーションしたもん勝ちで、楽曲の良し悪しなんてそっちのけ。でも良い作品を作って、納得して世に送り出せるプロになりたいなら、是非このセミナーでこれを経験してほしいですね。今後もどんどんやっていって、ハートの強いプロを育てたいです。

●盛りだくさんの講座になりそうですね。受講するのに参加資格などはありますか?

山口:特にありません。「プロの音楽家になりたい」と思っている人なら誰にでも資格があるってことですかね。また、実際少し仕事をしたことがある人や、コンペに通った経験はあるけど、でもこの先プロでやっていけるかどうか不安、みたいな人も歓迎です。そういう人にも教えてあげられることがある気がしています。

伊藤:今は、自宅でコンピューターひとつで音楽を作れちゃうから、一人で完結してしまいがちですけど、人と会うこと、話をすることは、作曲家にとってすごく大切だと思います。ポップスとして強い楽曲をつくるには、コーライト(共作)も有効な方法だし、こういった人と出会えるこういうセミナーにどんどん参加してほしいですね。

山口:自分の強みを知ることが大切だと思うんですよ。得意と苦手を把握して。音楽の仕事は、弱点克服も時には必要だけれど、長所を伸ばして、短所は他人に補ってもらうのが基本ですから、このゼミの中でチームを組んで行けたらいいなと思っています。だから、やる気のある人に集まって欲しいと思っています。

 

(次回に続く)

■『山口ゼミ〜プロ作曲家になる方法』http://www.tcpl.jp/openschool/index.html#kouza15
■無料説明会(2013年1月9日開催)案内ページhttp://www.tcpl.jp/news/2012/12/19vol3.html