第151回 株式会社BADASS 取締役 松川将之氏【後半】

2018/04/13 (金) - 12:00
株式会社BADASS 取締役 松川将之氏

今回の「Musicman's RELAY」は株式会社サウンドクリエーター 安福元柔さんからのご紹介で、株式会社BADASS 取締役 松川将之さんのご登場です。東海地方で学生時代を過ごされた松川さんはPUNK/LOUD MUSICの洗礼を受け、大学進学と共に移り住んだ京都で始めたイベントで10-FEETと出会います。10-FEETとともに上京されてからはマネージャーとしてバンドを支え続け、現在は「ヤバイTシャツ屋さん」も担当されている松川さん。そんな松川さんにライブの魅力にとりつかれた青春時代から、若い人たちがいきいきと働くことができる音楽業界へ向けた提言までお話を伺いました。

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第151回 株式会社BADASS 取締役 松川将之氏【前半】
 

10-FEETは「ちょっとずつ、前回よりはいい」が続いているバンド


―― 10-FEETの根幹の部分、サウンドや次のアルバムのコンセプトとかっていうクリエイティブな面を松川さんが全部仕切ってきたんですか?

松川:もちろん意見は言いますけども、基本的にはメンバー自身のセルフプロデュースです。

ファースト・アルバムをリリースする際に、「お前もツテを探して10-FEETのためになることをやれよ」って当然言われ。そういえば、MUSCLE DOGGY GROOVESのツアーに同行させてもらったときに、SMASHの方と名刺交換させてもらったことを思い出して、久々に連絡して会いに行ったら音を気に入ってもらえて、「今度アメリカのバンドでジャパンツアーを回るバンドがいるんだけど、10-FEET合いそうだから一緒に回る?」と。そのバンドが、なんと僕が初めてCDを買ったThe Suicide Machinesだったんですよ。

―― おお!

松川:「ここへ来てThe Suicide Machinesと回れるとは!」と思ってメンバーに聞いてみたらリアクションは、もちろん喜んでくれたんですけど、想像していたよりは普通で(笑)。でも僕にとっては衝撃的なできごとで、本当に嬉しかったですね。

―― で、ツアー回ったと。

松川:はい。そこで片言で、「実は初めて買ったCDがこうで…」って話をしたら、メンバーさんによっては「へ〜」くらいなリアクションもあれば、ギターのダンさんは「そうなんだ!」とフレンドリーに話してくれたり、すごく運命を感じるような瞬間でした。

―― 10-FEET は2001年4月に最初のシングルを出して、2002年4月にアルバムをリリースしていますね。

松川:はい。The Suicide Machinesのツアーに回ったのは、2002年の10月でしたね。

―― 10-FEETはものすごく売り上げが安定したバンドですよね。オリコンも1桁台までいったり。

松川:でも、2017年で結成20年なんですけど、ドカーンといったタイミングは一度もなかったんですよ。ずっとキープしていて、じわじわ、じわじわ右肩上がりで、ちょっとずつ、前回よりはいい、前回よりはいい…っていうので続いています。

―― 素晴らしいじゃないですか。

松川:でも後から出てくるバンドや同世代のバンドには、ズドーンと売れて、追い越されていくこともあります。それこそ初期の頃は青春パンクが流行り始めたときで、当時10-FEETはイベントには呼ばれてもコツコツ、コツコツと。それで青春パンクが落ち着いてきたなと思ったら、ELLEGARDENとかBEAT CRUSADERSとかが追い抜いていって、その後もマキシマム ザ ホルモンもズドーンと行ったので、皆に抜かれる感じになりました。とは言っても、こうやって長くコンスタントにツアーを回れていて、ずっと売り切れという状態も続けられているので、これはこれでとてもいいことで嬉しいなと。

―― すごい。

松川:で、あるとき、ふとツアーで地方の300キャパくらいのライブハウスに行ったときに、リリースの度に細かくツアーをまわることが多いので、何度も来ているこのライブハウスで過去動員したお客さんの累積を計算したら、10-FEETは結構上位、もしかしたらトップかもという気もして。

―― 息の長いバンドですよね。普通、会社や飲食店では10-FEET的なモデルは一番、ビジネスとしては堅いですよね。常に一定のお客さんがいて、少しずつ増えているというのは。

松川:本当の力、すごさですよね。10-FEETのマネジメントは2018年で18年目に入ったんですが、最近これは弱点でもあるんだと気づいて。いわば、そのアーティストのやり方しか知らないってことで、「ヤバイTシャツ屋さん」のマネージャーもやることになったときに、年齢の差もありましたが「アーティストによってこんなに感覚が違うんだ」っていうことをすごく感じたんですね。

それと同時に、別に悪い意味じゃなく、ヤバTがすごく他人に感じたんです。それはどういうことかと言うと、10-FEETという存在が限りなく1人称に近い存在なんだなと思いまして。それがゆえに、いろいろ任されている部分も多かったですし、僕がジャッジして決めてしまったりする部分もあったなと思って。そこに対して10-FEETのメンバーは文句も言わず一緒にやってきてくれて、振り返ることもないまま17年間忙しく突っ走ってきたなと。例えば、「今から500キロ走れ」って言われたらかなり厳しいと思うんですが、気づいたら走っちゃっていたっていう感じなので、何とか成立しているんだろうなと思うんですよね。

―― そんなに長いことやることになると思っていましたか?

松川:全然思ってなかったです。

―― やっぱりメンバーの結束は強いんですか?

松川:アーティストにもよると思うんですけど、別に仲良しこよしでやっているようにも感じないですし、どっちかと言うとヤバTのほうが仲良い感じはします。

―― いい距離感を持っていると。大人なんですね。

松川:そうですね。他のバンドさんと全く違うなというところは、10-FEETは3人とも元々がド不良じゃないんですよね。なので「何だよ」みたいな衝動的な衝突がない。不良のチームって、そのちょっとした「何だよ」から行き着くところまで行き着くこともあると思うんですが、不良じゃない点は長く続いた要素の一つにはあるなっていう風に思いますね。

―― きちんとお互いを尊重して、相手の立場も考えて話し合えるということですね。
 
松川:そうですね。まぁ、気を使い過ぎてしまったり、判断に時間がかかり過ぎてしまったり、そんな部分はもちろんあるんですけど(笑)。

 

10-FEETとヤバイTシャツ屋を2人でマネージメント
 

 

―― 今、他に抱えていらっしゃるアーティストは何組いるんですか?

松川:インディーレーベルとしては、NUBOとG-FREAK FACTORYっていうバンドの2組がいて、過去には既に契約が切れたTHE TRUST BLAST。マネジメントは10-FEETとヤバイTシャツ屋さんのみです。

―― それをスタッフ何人で回しているんですか?

松川:インディーレーベルのほうはほとんど関与できていない状況なんですが、10-FEETとヤバTに関しては僕と部下の2人で大筋を回しています。10-FEETのレコーディングやプロモーションに関しては最近は別のスタッフさんが手伝ってくれています。

―― 大筋を2人だけで?

松川:はい。なので結構人手は足りていない状態で、周りからは「何でその規模感で動いているバンドを2人で回すの?」みたいな感じでよく言われます(笑)。

―― 10-FEETとヤバTは、どのくらいツアーをやっているんですか?

松川:10-FEETは2017年11月1日に8枚目のアルバムを出して、10月末から6月までツアーを回っている最中です。ヤバTは昨年9月にシングル、1月に2枚目のアルバムを出して、1月から3月までツアーを回るんですが、10-FEETのツアーの合間合間にイベントが入ったり、プロモーションやキャンペーンが入ったりしているので、被っていなくて行けるところは行くみたいな感じでしています。

―― それはお忙しいですね。

松川:そうですね(笑)。物理的に体が足りないということはよくありますね。

―― それは国内だけですか?

松川:国内だけです。今回の10-FEETのツアーは61本ですね。

―― 8カ月って、240日しかないわけですよね。そのうち60日間ってことは、移動も考えるとほとんど毎日のように。週末は必ずやっているってことですよね?

松川:今の10-FEETのツアーの回り方としては、2〜3週間回っては1週間休んでというタームでやっています。1月・2月は大都市のワンマンシリーズをやっていまして、その期間は1本やったら3〜4日空けているので、その空いている3〜4日にヤバTのツアーを入れています。1月・2月は常にジグザグしながら。でも、たとえば10-FEETの北海道の翌日にヤバTの北海道を入れたりと、地方は極力まとめています。

―― それだと病気できないですね。

松川:そこはすごくあると思います。僕がいなくなると物理的に支障が出てくる部分はあるような気はします。

―― 現場もマネージャーも、健康管理は大事って感じですね。全国ほぼ一緒に行ってらっしゃるんでしょう?

松川:そうですね。

―― 打ち上げでガンガン飲んでっていうタイプじゃない?

松川:打ち上げはだいたいやるんですが、昔と違って「おい、飲めよ」とは言われなくなりました。「今日は僕飲まないです」って言ったら、勧められないです。そこは良かったです。

―― 前は強要されていたんですか?

松川:お酒を飲むことに関しては、今と違って昔は、先輩の言うことは絶対みたいなところがあったり、若いやつが飲んでなんぼっていうのがあったりしたので、若い頃は無理矢理飲まされていた時代もありましたけど、今はそういうのはあまりなくなりましたね。

―― ちょうど今、10-FEETとヤバTを半分ずつくらいのエネルギーの割き方をしていらっしゃるんですか?

松川:そうですね。基本的に頭の中はやらなきゃならないことが常にあって、ヤバTの現場にいながら10-FEETの仕事をすることもありますし、その逆もありますし。でも基本、10-FEETの場合は、PAさん、照明さん、ローディーさん等々、乗り込みが必要なセクションはほぼほぼ全部付けていますし、長年やってきたっていうのが自分たちでもあるので、10-FEETとヤバTのライブが被ったときはヤバTのライブに行っています。

―― あぁ。経験が少ないほうを補うと。

松川:はい。どうしても10-FEETのほうに行かないといけないっていう日が、年に1〜2回は出てきちゃうので、そういうときは部下にヤバTのほうに行ってもらっています。

 

 

若いバンドの音楽を若い子に届けるなら、僕らの世代の一般常識は押し付けない
 

 
株式会社BADASS 取締役 松川将之氏


―― 振り返って、大学を辞めて東京に来てこの仕事をやってよかったと思いますか?

松川:はい。僕はどちらかと言うと、広く浅くよりも狭く深くのほうが向いているなと思うので、レコード会社とかイベンターさんのようにタイミングによっていろんなアーティストに接するというよりは、マネジメントで自分が関わるアーティストをとことんやっていくというほうが性格的に合っているなという気はしています。

―― それに応えてくれるアーティストじゃないといけないわけですから、そういう意味ではラッキーですよね。

松川:そうですよね。

―― かつての相方は今どうしているんですか?何か接点はありますか?

松川:相方はたまに連絡が来たり、Facebookで写真をちらっと見るくらいで。お子さんとの幸せそうな写真をアップしていたりするので、それはそれで良かったなと。

―― あぁ。じゃあ向こうは、そんなに未練がある感じでもない?

松川:じゃないと思いますね。長い年月が経って、彼も性格が当然変わったりする部分もあると思うんですけど、今思えば、当時の彼の性格ならマネジメントよりも音楽業界の他の業種の方が長所をいかして輝けるだろうなと思います。

――そういうことからも、自分はマネージャータイプだったなと思いますか?

松川:今はそう思いますね。

―― 今後の目標をお伺いしたいのですが、もちろんその2つのバンドを大きくしていくということはあるとして、それ以外に何か計画はあったりしますか?

松川:具体的な計画はまだないんですが、ヤバTをやることでマネージャーとしてというか、音楽に関わる裏方として以前よりも視野が広がったと感じています。それはヤバTだからというよりは、10-FEETをずっとやり続けた上で、他のアーティストをやったことで違うものが見えたっていう感じなんですが、もっと音楽業界がああなればいい、こうなればいいなというものをすごく感じるようになりました。

僕が若い頃は、周りの年上の方から「俺が若い頃はこうだったんだ。何甘いこと言っているんだ!」みたいなことをよく言われていたんですね。それは音楽業界に限らず、どこの社会でもそうだと思うんですが、僕も若いバンド、ヤバTに対して同じように思っていることに気づいたんです。

―― ヤバTの平均年齢っていくつくらいですか?

松川:24〜25歳です。

―― だいぶ若いんですね。

松川:それでふと「若いバンドの音楽を若い子に届けるのであれば、別に僕らの世代の一般常識は押し付けない方がいいな」と思ったんですよね。もちろんいいものは取り入れればいいんですが、今の時代に合わない僕らや諸先輩の座組みを無理矢理押し付けて、それで若い人たちの感性を押さえつけてしまうよりも、そこはそこで若い人たちに任せて、僕らは僕らでやれること、若い子たちにはできないことをやればいいやと思って。経験であったり、人脈であったり、ノウハウであったり、そんな若い人たちにはないものも持っているので。で、アーティストは若い人たちってたくさんいるんですけど、裏方の若い人たちってすごく少ないなと思って。

―― より少なくなってきていますよね。

松川:はい。昔は「音楽業界はかっこいい」とか「華がある」とかって若い子たちが憧れる仕事の1つだと思ったんですが、今そういう風に思われていないなと思ったんです。

―― 残念ですよね。

松川:はい。もちろん、音楽の世界にあるいい部分を若い子たちに伝えたいのはあるんですが、20年前、30年前とかに僕らの世代が音楽業界に憧れたような感覚を、今の若い子に持たせようと思っても無理だと思うんですよね。それはなぜかというと、そもそもCDとかが売れる枚数が全然違うので、同じような夢を若い子に見せるのは到底不可能かなと。だからと言って、「若いスタッフは甘いな」みたいなことを愚痴って、より若い子を排除した世界になっていったら元も子もないと思うんです。

でも若い子たちはやっぱり必要なので、昔のような華や憧れはなくても入ってきてくれるような何かを考えて取り組んでいかないと、まず自分たちのチームも終わると思いますし、音楽業界全体としてもよろしくないなということは、すごく思いますね。

―― その通りだと思います。

松川:僕の部下も2016年で30歳になって、20代がいない事務所ってどうなんだって思いますし。僕が20代の頃、事務所では意見が言いづらかったり、周りの先輩たちが言っていたことは、その先輩たちが若かった頃はそれで良かったかもしれないですけど今の時代には合わないなって思うこともあったりしたんです。

でも、若い子ならではの発想を僕が身につけることも無理だと思うので、それを身につける努力をするんじゃなくて、そういう子が入りやすく辞めにくい枠組みを作っていかなきゃなってすごく思うんです。同世代の人とこういう話をすると「すごくいいね」って、「こういう風にしたらさらにいいんじゃない?」って意見ももらえて、40代の業界人はどうあるべきなのかなと考えたりもしています。

今の若い子に分かりやすく「音楽業界もいいな」って思ってもらおうとしたら、もうちょっと休みが増えて、給料が増えることだと思うんですよね。つらいけど楽しいから働く人が多かった昔と比べて、「『つらいのに楽しくない』そんな状況で何のためにこの世界で働くの?」ってますますなっていくと思います。そんな中でどうやって若い子に楽しさを感じてもらいながら働いてもらうかと、どうやってお金を渡せるかという。働かない人に大金を渡すのも、それはそれで違うと思うので、頑張ったら頑張った分だけ報われるシステムがあればいいんじゃないかなと思っています。

―― まったく同感です。ただ、それをどう具体化するかというのがなかなか難しいですよね。結局、担当しているアーティストを押し上げて大きくしていくっていうことに繋がりません?

松川:もちろんそうなんですが、一般職にはなくて音楽業界にはあるなと思うのが、印税とかロイヤリティーだと思うんです。頑張った分だけ成果としてドーンと出るような。スタッフもたまにそういう話、ロイヤリティをもらったりという話は聞くので、固定プラス歩合制というものがより浸透していったら、もっと魅力を感じてもらえるというか、一攫千金を狙ってスタッフでも頑張ろうと思うんじゃないかなと思っています。

年収1000万円っていう4桁の数字は何となくボーダーラインになると思うんですが、「若い子が頑張って、これだけ成果を出したんだったらそれに見合った報酬があってもいいのにな。でもさすがに、固定給で月90万円は渡せないな」って今はなると思うんです。そこが固定プラス歩合っていうことになれば、20代の裏方で年収1000万円以上になる人は出てくるんじゃないかと。20代で1000万円を超えれば、音楽業界を選択する旨味も出てくると思いますしね。

―― 実際、若いスタッフで年収1000万円を超えている人はいるんですかね?

松川:まずいないような気がしますね。裏方でいえば、ライブスタッフでそこに到達する人はごくごくわずかだと思います。
 

若い人にはできない音楽業界全体の未来のことを考えてやりたい

 

 

―― 別の記事で読んだんですが、松川さんは「月曜日も定休日に」とおっしゃっていましたね。

松川:そうです。そういうこともいろいろと考えています。

―― そうですよね。だって人が休んでいるときに仕事しているのに、他の会社がやっているからって月曜日からまた普通に働くって一体いつ休んでいるんだろう?と思います。

松川:そうなった発想というのがあって、やっぱり仕事を減らすことってできないと思うんですよね。そのアーティストのことを突き詰めていくほど仕事は増えていくと思うし、頑張れば頑張るほど増えていくと思うので、そうなったときに有効的に時間を使いたいなと思ったんです。

僕らの仕事って地方に行く機会が多いので、たとえば仕事で札幌に行って帰ってきました。旅行で北海道に行って帰ってきました、ってやると二往復じゃないですか。片道だけでもそこそこ時間が掛かりますし。これは、会社の決まり云々ではないんですが、もっと自由に、そこの土地に行ったんだったらそこで旅行してから帰ってくればいいじゃんと思うんですよね。

――「せっかく行くなら…」って普通は思いますよね。

松川:はい。そうすれば一往復分の時間をカットできます。そういう風にいかに時間を捻出するかっていうことだと思いまして。それで地方に行ったついでに旅行をして帰ってくれば、追加の宿泊代は掛かりますけど、往復の交通費は経費なんだとしたら、交通費は0円で地方に行けるわけじゃないですか。そうすれば、仮に若い子に給料を5万円上乗せすることはできなくても、彼らが払う5万円の支出を減らすことで、5万円あげることと同じになる。そうやって、出るお金を減らしてあげて、よりお金が残るという風になれば、さっきのお金の話じゃないですけど、また魅力的になるなと思うんです。

―― そうお考えになるっていうことは、若い人がもう音楽業界に来てくれていないっていう実感をすごく持っていらっしゃるわけですよね? このままいったら、もう若い人が来なくなっちゃうんじゃないかと。

松川:本当に若手みたいな人がいないですし、なんちゃってスタッフみたいなノリだけでやっている人はいても、「この子、スジあるな」という人は音楽業界を選ばない気がしています。あと、ライブスタッフでローディーさんとかでも30代で若手と見られてしまって、20代の人たちがもっといてもいいんじゃないかなって思うんです。でもローディーさんに聞いたら、「若い子いないんだよね」って。

―― 求人倍率自体はすごく好調なので、音楽業界を選ばない人も増えてきていますよね。だからそこは音楽業界全体として、統一した見解みたいなものを真剣に出さないと、本当に人が来なくなっちゃうかもしれませんよね。

松川:先の座談会も最初は全然違うテーマだったんですが、最後に一言「僕はこれが言いたくて来ました」っていう感じで投げかけたんです。やっぱり目先のことや自分たちのことだけ考えていたら、因果応報で自分たちの未来を自分たちの手で壊すと思っているんです。

周りの人からしたら偉そうにと思われるかもしれないですが、そういうことに目を向けなければいけない年齢になってきましたし、若い子たちは当然自分に与えられたことをやるだけで精一杯だと思うので、若い子にはできない音楽業界全体の未来のことを考えてやらなくちゃなと思いました。そうしないと、自分たちが活動する場所がなくなっちゃうと思ったので。

それは10-FEETを始めたときも似たような感覚を持っていて。そのとき10-FEETはワンマンだけで生き残っていくバンドじゃないと思っていたので、結局音楽シーン全体で盛り上がっていかないと、自分たちが活動するシーンがこの先なくなってしまうと思ったんです。今でこそ、物理的に厳しくなってきたのでできなくなったんですが、当時はツアーを回っても地元の若いバンドを対バンでつけたりしていました。そうすることによって、その土地の音楽シーンが活性化しライブハウスの経営が成り立つわけです。

――そして自分たちがまたそこに行って、ライブができると。

松川:そうですね。自分たちが行くときに、その会場がなくなっていたら意味ないですしね。だからこそ先輩との付き合いや、横の繋がりを大切にしつつ、若い子たちをフックアップすることにも、意欲的に目を向けてきました。

―― 要するに、音楽ビジネス全体のエコシステムを構築しておかないと、ということですよね?

松川:そうですね。僕よりも年上の人たちと話をしていても、飲んだ席で小言のように愚痴を言う人はいっぱいいるんですよね。でもだからといって、どうしたらいいかという次の発想にいく人は少なくて「問題点に気づいているんだったら、それを改善するために考えるのが本来仕事なんじゃないの?」って思うんです。だから、僕は愚痴るだけで終えず、着手したり、何かしら変えることにチャレンジする40代にしたいなとは思います。

―― 何か提言があるときは言ってください。スペースを取って、それを発表する場としていただいてもいいし。

松川:ありがとうございます。

―― 今考えていらっしゃることとかってなかなか言う場所がないじゃないですか。

松川:はい。例えば、会社のHPの内容を変えて「こういう風に考えているから、我が社はこういうシステムを取り入れています」というようなことを載せていったほうがいいんじゃないかと考えたりしています。「働きたいな」と思う人はその会社のHPをちらっとは見るわけじゃないですか。そういうことを考えると、見せ方を変えてもいいんだろうと思いますしね。アーティスト募集をするために他社のHPを見たらいろいろとあって、打ち出し方じゃなくて、根底にある考え方を参考にできるところは、積極的に取り入れていきたいなと思いますね。

―― 若い人が思い切ってチャレンジできるような環境作りって大切ですよね。

松川:10-FEETとかそんなバンドのスタッフになんてなれないよって思っている子も多いと思うんですが、ダメダメな僕が自分のパーソナルな部分の話をすることで、「頑張ったらいくらでもこういう仕事に就けるチャンスがあるんだ」と思ってもらえることと、こういう風に話している人のもとで、音楽業界で働くことも悪くないなって思ってもらえるために、今回のインタビューを受けたいなと思ったんです。ですから、「自分なんて」みたいに思わずに若い人にはどんどん音楽業界に入ってきて欲しいです。そういう若い力をみんな必要としていますから。