TAKUROが語る“ファンファースト”から生まれたGLAY公式アプリへの想い、アーティスト定額アプリが音楽産業にもたらす可能性【後半】

2018年6月22日 12:00

メジャーデビュー24周年を迎えたGLAYが、2018年2月1日にサブスクリプション型音楽サービスを開始した。

1994年のデビューから現在までの400曲以上にものぼる楽曲や、100を超えるミュージックビデオ・ライブ映像ほか、様々なコンテンツを聴き放題&見放題で楽しむことができる“GLAYの全てが詰まった”公式アプリとなる。

GLAYのリーダー・TAKURO氏は「GLAYという一番好きなモノ、愛するモノを突き詰めていった」結果、このアプリが生まれたと語る。

GLAYへの並々ならぬ想い、ファンへの絶対的な信頼、アーティストがコンテンツを持つ意味、地方創生といったあらゆる想いが詰め込まれ誕生したこのアプリが、今後の音楽産業にどんな可能性をもたらすのか、話を伺った。

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TAKUROが語る“ファンファースト”から生まれたGLAY公式アプリへの想い、アーティスト定額アプリが音楽産業にもたらす可能性【前半】


 

GLAY・TAKURO


アプリを使った地方創生の可能性


ーー今後はどのようなコンテンツが展開されるのでしょうか?

TAKURO:電子チケットやキャリア決済、多言語対応なども予定しているなかで、いま一番面白いと感じているのは、街ぐるみでいろいろな店舗と組んでスタンプラリーのようなものを展開することです。

GLAYのカフェやカラオケルーム、プラネタリウムなどで、ひとつひとつ何かを集めて、最終的にはプレゼントや何かしらのアクションが起こせるものが実装できればと思っています。

今まで音楽は聴くか、見るか、ライブを体験するかでしたから、このアプリにはプラスアルファの可能性を感じています。僕らは8月に函館でライブをやるんですけど、もしそれらがうまくいけばGLAYが観光案内をすることが出来ますしね。

ーー地方創生にも繋がりますね。

TAKURO:例えば、なんてことはない港なんだけど、昔TERUが初恋の人とデートした場所とか(笑)。そういった特別なスポットが用意できればライブの前後も楽しくなる。そうすると、1泊2日で行こうかなと思っていた函館旅行も、今回は色んなイベントがあるから2泊3日、3泊4日にしようとなって地元に貢献することが出来ます。

そもそも函館は宿泊施設がそんなに多くないので、お客さんが一気に来ても受け入れ体制が不十分という課題があるんです。単純に宿泊施設を増やすのも手だけどコストが掛かってしまうので、長く滞在してもらうにはどうすれば良いのかを考える方が効率も良いですよね。

それに函館という街を訪れる理由がGLAYのライブだと言うなら、当然食も何もかも堪能してもらいたい、かつGLAYの歴史も感じてもらいたいです。

ーーアプリを使うことでよりインタラクティブな体験を提供できますよね。ほかにも、ライブ中にARやVRを使用した演出の可能性も広がりますね。

TAKURO:今は360度カメラで撮影して、最前列を選んだらそこからステージの映像が観れるし、たまには一番後ろから観たいなと思ったらステージ全体も見ることが出来る。現状チケットの席順は自分では選べないわけだから、そういう欲求に応えられますよね。それこそ将来はファン全員がライブ会場でVRのヘッドセットをしているかも知れない(笑)。

ただ、自分たちはスタジオに入ったり、ステージに立ったりするのが好きなので、音楽の根本的な作り方とかライブの仕方は変わらないけど、例えば何らかの理由で会場に来られない方にとって、将来的にかなりリアルなライブ体験を提供できると思います。


 

GLAYという一番好きなモノ、愛するモノを突き詰めていった


ーー今後はこういったサービスの提供が主流になっていくでしょうね。

TAKURO:手軽にGLAYを楽しみたいという人にはすごく良いアプリだし、GLAYのファンのみならず、これからもっと遊びの要素を加えていって、GLAYの音楽抜きでも楽しんでもらえるのであればいくらでも提供します。

ただ、新聞や本というメディアが無くならないのと同じように、情熱を持ってパッケージやCD、ブックレット、ジャケットを作っていますし、ファンクラブでも年代によっては紙のチケットに思い入れがある方もいます。そういった一つ一つに対してファンの想いをリスペクトしたいので、それも並行してやっていくつもりです。

このアプリがたくさんの人に使ってもらえるようになったら、コストもどんどん下がっていきますし、ライセンスさえクリアできればどのバンドだって出来る可能性はあります。少なくともそのバンドのファンは喜んでくれますよ。

ーーアーティスト主導で定額制のアプリを作ることは、アーティストの役割としても1つの転換期が来ているように感じます。

TAKURO:2000年以降からの18年は、本当に取り巻く環境が日に日に変わっていきました。インターネットの登場によって人々の生活が激変する中で、あくまでも音楽業界は大きな社会の中の1つなので影響を受けないはずがないんだけど、開発されたものに対して今までの自分たちの立場が脅かされそうになると「ダメだ」となりがちです。

ライセンスはもはや不可侵なものではないし、共同で持ったっていい。その考え方1つでミュージシャンもやる気が出て、スタッフの人たちともうまいこと肩を組んでいける。良いチャンスなのに「できない・やれない・渡せない」の一点張りでミュージシャンのやる気をそぐことが正しいやり方とは思えないですよ。

ーーアーティストの作ったもの、それに対して対等な報酬を受け取ることはお互いにとってWin-Winな関係でなければいけませんよね。

TAKURO:一企業の中で何か開発をしたとしても、その企業名で世の中に出て行くというのが今の日本だとしたら、もっと開発した人に光を当てるべきだし、同じことが音楽業界でも起きているのかも知れないですね。

結局その会社のやり方に技術者が愛想尽かして海外に…となると国益としてもとても残念なことですし、作ってるものに対して0 or 100ではないその時々のキャリアや貢献度に合わせてパーセンテージを見直すというのも、ミュージシャンと話をするなら必要なことだと思います。

ーーアーティストは常に進化しようとしているのに、会社の体制が追いつかない現状があるのかも知れないですね。

TAKURO:今は起業するのも昔よりハードルは高くないし、むしろ大企業に入って頑張る人生も素晴らしいと思うけど、自分でも色々とチャレンジしやすい世の中だと思います。例えば、もう「俺はシャワーヘッドに関しては誰にも負けない」って名乗った日から専門家ですからね(笑)。

ーー(笑)。

TAKURO:僕の場合それがGLAYだったわけですが、GLAYという一番好きなモノ、愛するモノを突き詰めていった時、みんなが見えないと言ってる道が見えた気がして…。ぼんやりしたその道を確固たるものにするために知恵や言葉とか色々必要になりましたけど、それはすぐにできたわけじゃなくて、少なくとも24年はかかってるわけですから。

自分の好きなことを突き詰めて、技術を磨く。人気者は技術に裏打ちされたその人にしかできない仕事をしていますし、目の前にあるやるべきこともしっかりやっています。そういったことをちゃんとクリアしていかないと、アプリというプラットフォームがあったところで、中身がどうしようもないものであれば何の説得力も持ちませんから。

 

 

まだ見ぬGLAYのファン予備軍とGLAYをマッチングさせたい


ーーこのアプリから、GLAYが描くビジョンはどんなものになるでしょう?

TAKURO:GLAYを結成してもう長いこと経ちますが、自分たちが好きなことをやろうとした時に色んな出来事があって、たぶんメンバーの誰に聞いても充実した音楽人生だと言ってくれると思うんですけど、それは嫌々やったことではなく、好きなことを突き詰めていった結果だと思っています。それによって新しいテクノロジーとの出会いもありましたし、古き良き残すべきものに対しては、最大の敬意を払って一緒に併走するつもりです。

やっぱり函館の高校生が「ただGLAYが好き」というだけで30年近くやっていますが、仕事ってそういうものなんだと思います。自分の中では、好きなことを突き詰めたらお金がついてきたという感覚があるので、もし本当に好きなことがあって将来不安だとしたら、そんな不安なんて明日をも知れない今の世の中なんで、好きなことにトコトン夢中になってほしいです。

それに今は世界中がネットで繋がってて、理解してくれる人が必ずいます。どんなバンドにもどんなアーティストにも、その音楽にハマる人が世界のどこかにいるから、それを結びつけるのは昔ほど難しくないですよ。

僕は結局、まだ見ぬGLAYのファン予備軍とGLAYをマッチングさせたいだけなんです。あとは「どうマッチングさせるか」ということを考えたときに、大変だと言われる音楽業界の中で光が見えました。

ーー好きなものを突き詰めた結果、誰よりもGLAYファンの気持ちが分かる専門家も出てくるかも知れないですね。

TAKURO:今は僕らが選んだプレイリストを配信していますが、僕たちよりもGLAYに詳しい人がいたら、もしかしたらその人がファンの中で神になれるかもしれない。「TAKUROが作るプレイリストよりもこの人が作るプレイリストが信頼できる」みたいな(笑)。

ーー(笑)。

TAKURO:そうなったら大成功ですね。チャンスは誰にでもある、そういった可能性があるアプリだと思います。