日々、懸命に歌い続けて〜雪村いづみ インタビュー

サイトリニューアルにともない、過去の記事にて表示くずれが発生する場合があります。
ご覧のみなさまにはご迷惑をお掛けしますが、順次対応を行っておりますのであらかじめご了承ください。

2014/09/11 (木) - 21:00

日々、懸命に歌い続けて
雪村いづみ インタビュー


雪村いづみ雪村 いづみ

 
デビュー60周年、そして喜寿を迎えられ、ますます活発に活動される雪村いづみさん。’53年に16歳でデビューされ、以来ヒット曲を連発。故 美空ひばりさん、故 江利チエミさんとともに「三人娘」としても人気を博し、’59年からはテレビ出演や公演で長期のアメリカツアーと、半世紀以上、日本のポピュラーミュージック、ショービジネスをリードする存在です。デビュー60周年の締めくくりとして行われる記念コンサートを11月に控える雪村さんにお話を伺いました。PROFILE
雪村 いづみ(ゆきむら・いずみ)

 
1937年東京生れ。1953年に「想い出のワルツ」でビクターよりデビュー。「青いカナリヤ」「オウ・マイ・パパ」など多くのヒット曲をリリースし、1998年には紫綬褒章を受章。2004年にはレコード大賞「功労賞」を受賞している。また、美空ひばり、江利チエミと共に「三人娘」として映画界に進出。ポピュラーソングは勿論、ジャズ、カントリー、シャンソンから歌謡曲まで様々なジャンルを歌い、その歌声は歳を重ねる毎に深みを増している。今年デビュー60周年を迎える。メイドさんになり損なった日に歌手になった── 今年2月には佐野元春さんとのコラボレーションアルバム「トーキョー・シック」と佐野さん監修のベスト盤「スーパー・シック〜雪村いづみオールタイム・ベストアルバム」をリリースされましたね。

雪村:そうですね。そのアルバムと11月のコンサートを60周年の最後にしようと思って、佐野さんにファンレターを書いちゃったの! そうしたらこんなに良くしてくれて(笑)。もう、あれだけのことをしてくれる人はいないですよ。

── 雪村さんが佐野さんにラブレター、いやファンレターを書かれたんですか?

雪村:ラブレターは書かないわよ、ファンレター(笑)。恋は一番くたびれちゃう。仕事もあれくらいやればいいのにね(笑)。

雪村いづみ「トーキョー・シック」
▲佐野元春とのコラボレーションアルバム「トーキョー・シック」

── (笑)。佐野さんは小さい頃ラジオで雪村さんの歌を聴いて好きになったとか。

雪村:私のデビューがテレビの開始と同じだと思っていたら、それより1年前から私は歌っていたのよ。すっかり忘れていたわ。

── グロリア・デ・ヘブンの「ビコーズ・オブ・ユー」という曲がデビューのきっかけになったそうですね。

雪村:そうなの。私が友だちのお家に行って、「ビコーズ・オブ・ユー」を聴かせてもらったの。家には機械もなにもなかったから、その友だちの家で「ビコーズ・オブ・ユー」を覚えさせてもらいました。

── 耳コピですね。

雪村:耳コピ。一所懸命R(アール)とL(エル)の違いとか、アイウエオも英語は全然違うから、真剣に聴きながらね。アールには印をつけたりしながら覚えて。その「ビコーズ・オブ・ユー」を1曲知っちゃったために、歌手になっちゃったんだけど。

実はそのちょっと後に、遠い親戚の仲代達矢さんと一緒に俳優座を受けているんですよ。でも、私は筆記試験で何も書けなくて(笑)、「来年来なさい」って言われたんだけど、その翌年に歌手になっちゃったの。仲代さんはそのまま俳優座に入って、立派な俳優さんになったわね(笑)。



── 自分でもその頃から歌手になろうという意志は固かったんですか?

雪村:意志はなかったんですけど。なんで歌手になっちゃったんだろうね(笑)。

── (笑)。歌手になるきっかけは何だったんですか?

雪村:麻布の知り合いの家でメイドさんを募集していたから、雇ってもらおうと行ったら、「あなたは小柄で、か細いから使えません」と断られ、ガックリきちゃって、新橋のフロリダというダンスホールまでとぼとぼ歩いて行ったの。

そのダンスホールの2階で母の知り合いのマネージャーの人に、アイスクリームをご馳走になったんだけど、突然「あ、『ビコーズ・オブ・ユー』なら唄える! 英語の歌が唄えるかもしれない」とひらめいて歌わせてもらおうとお願いしたら、「いいよ」って。それでバンド・リーダーと相談したら「ワンコーラス目は男性のキー、ツーコーラス目が女性のキーだよ」と言われて(笑)。

── ぶっつけ本番で歌われたんですね。

雪村:そう。それで大きいマイクを前に一生懸命歌ったら、ダンスしていた人たちがみんな踊りを止めて、ステージに寄ってきてくれて、拍手してくれちゃったの! で、「明日からおいで」って言われたのよ。だから、私はメイドさんになり損なった日に歌手になっているの。

── すごい運命ですね。

雪村:ラッキーと言えばラッキーだけど(笑)。

── 歌手になるために生まれてきたんですね。

雪村:いや、そのデスティニーばっかりは分からないわよね。明日のことも、何も分からないもの。だから今を一所懸命やるしかないと思っているの。なーんて、無頓着な言い訳だけど(笑)。


 

日々、懸命に歌い続けて
雪村いづみ インタビュー

 
歌詞が通じなければ歌手じゃない── デビューされてから日本歌謡大賞を始め、あらゆる賞を総なめにされていますよね。

雪村:賞は本当にたくさんいただいていますけども、それは全て前田憲男さんのおかげですね。前田先生に会わなかったら、今の私はいないです。私がアメリカで歌えたのも前田先生の譜面があったからですし、アメリカのミュージシャンは前田さんの譜面を見て、「誰がこのアレンジを書いたんだ?」って必ず訊くんですよ。とにかく前田先生はすごい人なのよ。

── 日本ではどうしても作詞・作曲に目が行ってしまいますけど、アレンジが重要だったと。

雪村:そう。向うの人達はアレンジをとても大事にするのね。シナトラなんかもステージでアレンジャーの名前を言う時もありますね。

── 前田先生と最初にご一緒されたのはいつですか?

雪村:私は日本で初めて司会者のいないコンサートを労音でやらせてもらったのね。公演のオープニングが大阪だったと思うんだけど、そのコンサートツアーのアレンジを前田先生にお願いしたの。そのときに、前田先生が「約束」という曲を、私にプレゼントしてくださって、それで歌ったんです。だから「約束」は重要な曲です。長い曲なのでもう覚えるのが大変でしたけど(笑)。ずっと歌い続けて、アメリカで英語の歌詞まで作ってもらいましたしね。

── 雪村さんは日本で最初にアメリカでドルを稼いだ歌手と言われていますよね。

雪村:アメリカではコンサートをたくさんやりましたからね。ホリデー・イン・ジャパンはすごかったわね。アメリカで最初にコンサートをやったのは、ニューヨークの劇場でした。

── 当時、日本人としては唯一無二、雪村さんだけですよね、そんなことができたのは。

雪村:映画では早川雪洲さんとナンシー梅木さんが先輩ですけどね。アメリカに行けたのはシャーリー・マクレーンのおかげです。シャーリー・マクレーンがスティーブ・パーカーと一緒に日本に来て、私の家の近くに住んでいたから、色々交流が出来て…。

── 雪村さんは今でも声量といい声の張りといい凄いですよね。

雪村:アメリカでいわゆるオーディションを受けなくちゃいけなくて、そのために先生を捜してレッスンを受けたわ。自分で探さなきゃいけなかったから大変だったけど、ラスベガスのホテルのラウンジで歌っていた時、ナンシー・ウイルソンのピアニストが、「1日25ドルで3日間レッスンしてみませんか?」と声をかけてくれて、喜んでレッスンを受けたの。そうしたら最初は真ん中のCが出るか出ないかだったのが、その3日間で上のCまで出るようになっちゃったの。1オクターブ上まで。そこで声の響かせ方が全然変わっちゃいました。

── 1音2音上がるのは分かるんですが、そんなに上がりましたか(笑)。

雪村:教えてもらうこと、プラクティスすることって大切なことですね。だから、そのとき教えてもらったことが今も生きているの。ちゃんと“響き”で歌っていますから。

── 雪村さんの歌は歌詞がスッと入ってくるんですよね。

雪村:やっぱり「言葉を正しく言う」「はっきり言う」のが大事だと思っているんです。言葉が、歌詞が通じなければ歌手じゃないと思っていますから。私はしっかりはっきり言い過ぎちゃって、あまりロマンチックではないかもしれないけど(笑)。

── そんなことないですよ(笑)。雪村さんは日本のシンガーの中で、ジャズだけでなくポピュラーソングも含めて、これだけ幅広く歌ってらっしゃいますよね。すごくレパートリーの幅が広い。何でも歌えてしまう。

雪村:私はジャズシンガーじゃなくて、ポピュラーシンガーなんですよ。だってジャズは難しいもん(笑)。でも「ベテランジャズシンガーだ」って書かれたりしちゃう。私はジャズシンガーじゃないの。ポピュラーシンガーなのね。

── 昔は雪村さんの活躍もあって、僕らは色々な音楽を聴けていましたよね。アメリカのポピュラー音楽もジャズもロックもハワイアンも何でも。昔の日本は音楽的に豊かだったと思います。

雪村:そうですね。こんな小さな島国なのにね。

── 70年代に入るとキャラメル・ママとレコーディングされていますよね(アルバム「スーパージェネレーション」)。また、荒井由実さんの「ひこうき雲」はもともと雪村さんのために書かれた曲だと伺っています。

雪村:そう。彼女がまだデビューする前だったんじゃないかしら?

── 若き日のユーミンが着物姿で来たとか。

雪村:そうそう(笑)。この歌、私はとっても好きなの。ステージでもよく歌います。

── ユーミンってすごいなと思うのは、「ひこうき雲」って雪村さんを意識したメロディーになっていますものね。いづみさんが歌ってぴったりの歌になっている。

雪村:レコーディングしたけど、当時はリリースしなかったのよね。

── もったいないですよね。その後、90年にアルファレコードからリリースしたアルバム「カモン・バック」に収録されて。

雪村:今年出したベストアルバムにも入っているわ。とっても好きな曲よ。

スーパー・シック〜雪村いづみ オールタイム・ベストアルバム
▲佐野元春監修 ベスト盤「スーパー・シック〜雪村いづみオールタイム・ベストアルバム」



日々、懸命に歌い続けて
雪村いづみ インタビュー

 
「Everything happens for the best」〜デビュー60周年記念コンサートへ向けて── 11月の60周年記念コンサートはどのようなコンサートになりますか?

雪村:まだ細かいところまで決まってないんですけど、ゲストの前田先生や4人のミュージシャンのメンバーが本当に素晴らしいんですよ。

── ステージという意味では、昨年まで美空ひばりエンターテインメントにもゲスト出演されていましたね。やっぱり、美空ひばりさんや江利チエミさんの分も歌っていこうみたいな想いがあるんでしょうか?

雪村:ええ。ひばりさんと江利チエミさんの「トゥ・ヤング」は必ず歌いますからね。最初にチエミちゃんが1コーラス、次にひばりさん、で私が二人の歌にハーモニーをつけて。これは受けるわよ、やっぱり。一番受けます(笑)。

── ナタリー・コールとナット・キング・コールの「アンフォゲッタブル」みたいな感じですね。

雪村:そうね。本当、あの二人に会えなかったらここにいないですよ、私(笑)。

雪村いづみ
── ひばりさんとチエミさんは、雪村さんの目から見てどんな方でしたか?

雪村:あの二人は本当に「見かけによらない」代表なの。チエミちゃんは超神経質で、恐がり。で、ひばりさんは大笑い上戸なの。東宝でもあの人だけ控え室を持っているのに、三人で結髪部の畳の上に座りに来て、そこでひっくり返って笑うのがひばりさん。笑い上戸だから「おじょう」なの。で、チエミちゃんは「なんとかなのにー」っていう口癖から、「のに」。あの人と2人だけでコンサートやったときのあの神経質さは忘れられない。

── いづみさんは見かけ通りですかね?

雪村:自分のことは人が考えて下さる方が正しいと思う。自分の考えなんか全然ダメ(笑)。でも、こうやってお話している自分とステージへ1歩出たときの自分との違いっていうのが、本当に不思議なの。

── ステージに出ると人が変わる?

雪村:本当に本番でステージに出なきゃあの意識は分からないし、想像できない。舞台へパッと1歩出たときの感覚っていうのは、ちょっと説明ができないです。

── 本当にお元気ですが、日頃気をつけられていることはありますか?

雪村:食べ物のことはすごく考えています。これは食べないとかこれは食べるとか。あとは寝る時間に散歩ね。目黒川通り沿いを上流へ歩いて、帰りはバス2台乗って帰ってくるの(笑)。

── とても喜寿を迎えられているとは思えないほど、雪村さんには現役感がありますよね。今も頻繁にステージに立たれていらっしゃいますし。

雪村:だいたい毎週1回は歌っています。今日も明日もステージありますし。

── すごい・・・先日、雪村さんの最近のステージを拝見しましたが、今が一番いい歌を歌われているんじゃないか? と思いました。11月のコンサートで多くの人に今の雪村さんの歌を聴いていただきたいですね。

雪村:ありがとう(笑)。まだ曲は決まってないですけど、古いジャズばっかりじゃなくて、色々なポピュラーソングをたくさん歌いますから、是非コンサートにいらして下さいね。

── 最後になりますが、今の若いミュージシャンたちにアドバイスをいただけますか?

雪村:私は本当に素晴らしいミュージシャンたちにお会いできて、すばらしい曲を、すばらしいアレンジをプレゼントして頂いたから、すごく幸運だったと思う。そういう意味でストレートなアドバイスはできないんだけれども、真面目に真剣に色々なことを考えて頑張って欲しいわ。

── 全力を尽くせってことですね。

雪村:そう。とにかく仕事を全力でやることと「Everything happens for the best」(全て起こる事は最良の為にある)と思うことね。
雪村いづみ デビュー60周年記念コンサート
雪村いづみ デビュー60周年記念コンサート フライヤー《スペシャルゲスト》 前田憲男
【日時】2014年11月18日(火)
 開場 18:00/開演 18:30
【会場】渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール
【料金】7,000円
 シルバープライス(60歳以上)6,500円
 ゴールドプライス(70歳以上)6,000円
 ※料金はすべて税込 全席指定
【一般発売】2014年8月1日(金)
 チケットぴあ ローソンチケット
 イープラス CNプレイガイド
 キャピタルヴィレッジ
【お問合せ】キャピタルヴィレッジ
 Tel.03-3478-9999