新山詩織、活休前ラストライブで「これからも大好きな音楽は私の中でずっと鳴り続けていきます」

2018年12月18日 15:54
新山詩織 12月12日 渋谷WWW
写真:達川範一

新山詩織が、活動休止前最後のライブを12月12日渋谷WWWにて開催した。以下、ライブレポート。

12月12日、アーティストデビュー6周年となる記念日に、シンガー・ソングライター新山詩織が2月以来となるワンマンライブを開催した。場所は渋谷WWW。ここは彼女が高校2年生だった2012年6月にアーティストへの道を掴んだ「Treasure Hunt 〜ビーイングオーディション2012〜」で優勝した場所。特別な日に、特別な場所で、特別な存在であるファンに囲まれながら、活動休止前最後のライブが開かれた。

新山と言えば、ちょうど彼女がデビューした頃から大きな盛り上がりを見せてきた「ギター女子」ブームを牽引する1人としても名を馳せてきた。デビュー時のサウンドプロデュースを務めた笹路正徳から、「音楽が天職の人」と評された“天性のリズム感と歌声、素直なギター演奏”を武器に、コンスタントな作品リリースに加え、ワンマンやフェスなどでのライブ活動を積極的に展開。

ありのままの言葉でストレートな心情を伝える彼女の歌が、10代、20代を中心に多くの共感を生んできた。そんな彼女は、今年1月に初のベスト盤「しおりごと –BEST-」をリリースし、2月には東名阪でメジャーデビュー5周年を祝うバンド形態でのワンマンを開催。観客やバンドメンバーを激しくアジテーションするなど大きく成長した姿を見せ、今後の展開に更なる期待がもたれていた。

しかし、10月20日に突如音楽活動の休止を宣言。未来について悩み抜いた結果、「アーティスト活動とは異なる新たな夢に向かってチャレンジしたい」という本人の揺るぎない想いによって下された決断ということだった。今回のライブはその活動休止宣言と同時に発表があり、当然のごとくチケットは即SOLD OUT。当日は寒空の下、居ても立っても居られないといった様子の多くのファンが随分早い時間から会場周辺に集っていた。会場内に入ると、ステージにはFenderとTaylorのアコギ、ギブソンのセミアコ335の3本のギターのみが並べられている。そう今日は新山のみによる弾き語りライブなのだ。

定刻の19:00をまわりBGMがゆっくりフェイドアウトすると、下手から真っ白なレースのロングワンピースを纏った新山が姿を現した。お馴染みのミディアムボブをバッサリとショートカットにして、パールのピアスを付けた彼女は息を呑むほど麗しく、ぐっと大人びて見えた。

盛大な拍手の中、愛用のFenderを手に取り、客席に真っすぐ視線を移すと1曲目「Looking to the sky」を歌い出した。この曲は1stアルバム「しおり」のオープニングを飾り、FM NACK5でやっていたレギュラーラジオ番組のタイトルにもなっていた思い入れのある一曲だ。太く無骨なアコギの音色に乗せて、生々しい歌声がフロアに響いていく。続いては学生生活を終えた後、喪失感に苛まれる状況から抜け出すきっかけとなった「絶対」。これまでこの曲は自問自答しながら、まるで自分を鼓舞するかのように感情露わに歌う様子が印象的だったが、今日はまるで何かを悟ったかのようにとても穏やかに歌う姿に驚かされた。

「皆さんこんばんは。とてもお久しぶりになってしまいましたが、今日は集まって頂きありがとうございます。10月に活動休止を発表させて頂きましたが、今日は私にとっても皆さんにとってもきっと特別な日になるかと思います。でも、とにかく今まで通り1曲1曲大切に皆さんに届けて、最後まで楽しい時間に出来たらと思っているのでよろしくお願いします。」そう語り、いつもと変わらない素朴な笑顔を見せた後、「良かったら手拍子しちゃってください!」と煽って、弾き語りでは久しぶりとなる「「大丈夫」だって」をTaylorの軽快なストロークに乗せてドロップ。客席との距離をより一層近づけた後は、「たんぽぽ」「シャボン玉みたいに」「分かってるよ」と3曲続けて披露した。

「次の曲は、内にあるどうしようもない感情を誰かに伝えたい……そんな想いを初めて表に出せた曲でした。本当の気持ちを伝えたいと思っても難しくて、でも勇気を出した時に、それまで見たことのなかった世界が開けていき、そのおかげで今ここに立って歌えていると思うし、衝動的だったとしてもこの曲が私の中から生まれてきてくれて良かったと心から思っています。当時はリビングで一人ポツンと誰も居ない隙を狙って書いてたんですけど(笑)、今日は歌声だけで皆さんに届けます!じっくり耳を傾けて頂けたら嬉しいです!!」
 

新山詩織 12月12日渋谷WWW
写真:達川範一

そうして6年前の今日、アーティストデビューを飾った曲「だからさ」をエモーショナルにアカペラで届けた。引き続きハイチェアに座ったまま、スローナンバー「きらきら」と「Hello」を、静かにエレキをつま弾きながら披露。ファルセットを織り交ぜた優しくノスタルジックな歌声に身を委ねていると、6年間の活動が走馬灯のように次から次へと思い浮かび上がってきた。また、「Hello」のエンディングでは会場一体となるシンガロングが巻き起こり、温かく濃密な時間が刻まれていった。

中盤はカバーを2曲。まずはデビュー前路上で弾き語りをしたり、初ワンマンツアーでも歌ったキャロル・キングの「I Feel The Earth Move」。続いて6年前のオーディションの最終審査で「だからさ」と共に歌った椎名林檎の「丸の内サディスティック」と、自身のルーツミュージックを堂々と歌いきった。続いて客席のクラップに後押しされながら2ndシングル「Don't Cry」をエネルギッシュに放ち、そしてドラマへの初出演、その劇中歌として主演の福山雅治がサウンドプロデュースを手掛けたバラードの名曲「恋の中」へ。さらにポエトリーなメロディーに淡い恋心を綴ったミディアムアップチューン「四丁目の交差点」と、全編アコースティックというライブ構成の中、サウンドに緩急をつけながら、自然と観客の心を躍動させていくパフォーマンスに大いなる成長が感じられた。

さて、ライブはここまで緊張や気負いを感じさせない、ある種いつも通りの和やかな雰囲気の中進められてきたが、次の「名前のない手紙」では、胸の内に秘めた様々な感情が湧き上がってきたのか、途中で歌えなくなってしまう場面もみられた。この曲はファンに向け綴られた新山なりのラブレターのような一曲なだけに、さすがに込み上げるものを抑えきれなかったのだろう。それでもしばらく後ろを向いて涙を堪えた後、再び前を向き最後まで歌いきった新山に、客席からは惜しみない拍手と沢山の「ありがとう」の声が向けられた。

「急に寒くなりだして、みんな風邪ひいてないかなって心配だったんですけど、今日無事に会えて本当に良かったです。がむしゃらに6年間やってきつつも、みんなの支えがなければ今こうしてステージに立って歌えていなかったと思うので、本当に感謝しかなくて……。来年から新しい景色、色んな挑戦をしたいと前向きに思うようになったのもみんなのおかげです。デビューした頃は下ばかり向いていて、MCだってこんなに喋っていなかったかもしれない(笑)。歳を重ねて成長してこれたのも、みんなの温かさと笑顔があったからだと改めて強く感じています。何より、皆さんも明日から苦難もあれば喜びもあり色んな日々が巡っていくと思うのですが、悔いのないように過ごしていって欲しいなと思います。」

そして届けられた本編最後の曲は、約2年前の誕生日にリリースした7枚目のシングルより、「もう、行かなくちゃ。」。この曲は20歳になる直前、映画の主題歌用に書き下ろした作品。「様々な葛藤がある中、殻を破って新たに進んでいきたい」という自分自身の思いも投影させながら作った曲だ。ひと回りもふた回りも大人になった22歳の彼女の歌声や表情からは、自分自身が選んだ未来に対して、一切の迷いのない固い決意が感じられた。

今この瞬間の充実感と、ライブ後の喪失感への不安が入り交じる独特の高揚の中、自然と湧き上がったアンコールの波。しばらくしてステージに戻ってきた新山は、冒頭アカペラで歌い出す「ありがとう」を、どこか憂いを帯びながらも真っすぐ芯の強さを宿した歌声で届け、改めて感謝の想いを表した。

「今日は真っさらな気持ちでみんなの前で歌えて、本当に良かったです
。最後は勿論もう分かってると思いますが、この曲で締めたいと思います。みんな大合唱しちゃっていいので、一緒に歌ってください!」晴れやかにそう告げると、メジャーデビュー曲「ゆれるユレル」を笑顔で歌い、およそ2時間にわたるライブは感動に包まれながら幕を閉じた。

そして演奏後はアーティスト然とした佇まいで颯爽とステージを後にした新山だったが、鳴り止まない拍手に応え再び登壇。達成感に満ちたそんな清々しさを漂わせていたが、「ずっと応援しているよ」などの声援が飛んだり、終始泣き顔だったファンが必死に顔を上げ拍手を贈る姿を目にしていると、とうとう耐えきれず背中を向け涙を拭った。「絶対泣かない予定だったのに、すみません(笑)。どんな形であれ、これからも大好きな音楽は私の中でずっと鳴り続けていきます。みんなもそれぞれ自分の道を悔いのないよう歩んでいってください。“一緒に、がんばろう!!”」

最後は彼女らしい飾らないMCで締めくくり、ハートウォームなエンディングを迎えた。自分の居るべき場所を探し続け、もがき続けてきた新山詩織。そんな彼女の音楽や存在が、今では多くのファンの心の中に住み着いていることを、改めて確信出来たかけがえのないステージになったのではないだろうか。そしてこれからも彼女の音楽への情熱は何ら変わらず続いていくことを指し示す素晴らしいライブだった。

文:松原由香里 from music freak magazine編集部