Musicman-NET TOPSPECIAL REPORT & INTERVIEW J-wave プロデューサー 持田騎一郎氏インタビュー

空間演出としての音楽活用術〜『儲かる音楽 損する音楽  人気ラーメン屋のBGMは何でジャズ?』J-wave プロデューサー 持田騎一郎氏インタビュー

2008年2月28日
エフ・ビー・コミュニケーションズ(株)にて
 人気のラーメン屋さんに入ると、なぜかBGMにジャズがかかっている・・・普段は見落としがちなお店のBGMに着目し、積極的にBGMを利用する方法を解説した新書がソニーマガジンズ新書の第一弾として発刊された。タイトルは『儲かる音楽 損する音楽 〜人気ラーメン屋のBGMは何でジャズ?〜』。このとても興味深い新書の著者である(株)J-WAVE 編成局 制作部副部長 持田騎一郎さんに 執筆に至る経緯や、チョイス次第では何倍もの効力を発揮するBGMの力についてお話を伺いました。

持田氏プロフィール

本 ●WEBへのリンクはこちらへ
 http://www.futurechoice.jp/

●本のWEBは
 http://www.sonymagazines.jp/book/detail.php?goods=013253

▼J-wave
 → http://www.j-wave.co.jp/
▼ソニー・マガジンズ
 → http://www.sonymagazines.jp/

●この本の執筆のきっかけは何だったんですか?


持田:友人の出版プロデューサー 末木佐知さんとの飲み話で、「最近、ラーメン屋さんではよくジャズがかかっている」と僕なりに分析をして話し始めたら非常に面白いと言われまして、その後、今までの音楽ビジネスの本というのは音楽そのものに関する本ばかりで、音楽をBGMという形で利用して別のビジネスを成功させていくという考え方の本はあまりないので書いてみないかとお話をいただいたんです。


●やはりこの本のサブタイトル「人気ラーメン屋のBGMは何でジャズ?」という部分が気になるんですが。


持田:何でラーメン屋でジャスがかかっているのかというと、本では答えをちりばめているんですが、おそらく最近のラーメン屋さんがインテリアとかに注目した「おしゃれなラーメン屋さん」が増えてきたということと関係があると思うんです。結局「おしゃれなラーメン屋さん」を作るとなるとインテリアデザイナーが当然入ります。そうすると施工の段階で「天井にスピーカーを埋め込みますか?」という話になるんですね。それでスピーカーを付けてその先には有線を繋げるケースが多いと思うんですが、どのチャネルをかけるかとなったときに、消去法的にジャズになってしまっているんだと思うんですね。たまにビートルズや70’sといったチャネルになっているんですが、たいていジャズです。


●そもそも持田さんがお店でかかるBGMに関して意識するようになったきっかけは何だったのですか?


持田:5年前に友人が恵比寿に「NOSTALGIE」というバーを始めるにあたって選曲を依頼されたんですね。結果、その選曲の評判がよかったようで、お客さんの滞在時間が延び、リピーター率が増えたことによって、売上高が上がったのを目の当たりにしたのが大きかったと思います。その後、BGM的にいいお店を求めて、あちこち足を運んだり話を聞いたりするようになりました。それと僕の中で大きかったのがステファン・ポンポニャックとの出会いです。パリのヴァンドーム広場に「オテル・コスト」というすごくおしゃれなホテルがあるんですが、そこのBGMを選曲しているのがステファン・ポンポニャックで、彼はBGMの新しい流れを提案したんですね。


●ステファン・ポンポニャックはJ-waveでも番組をもってましたよね。


持田:そうですね。彼が作った『オテル・コスト』というコンピレーションCDが本当に素晴らしい選曲で、聴いて気にいったので、2年くらいかけて口説いて、それで選曲のコーナーを持ってもらったんです。ちょっと本から離れるんですが、ステファン・ポンポニャックと現在J-waveで選曲のコーナーを持っているイギリスのジャイルス・ピーターソンは選曲に対する考え方が全然違うんですね。ジャイルスはラジオでかけるための音楽とかクラブでお客さんを踊らせるための音楽という考え方で選曲をしているんです。その一方、ステファン・ポンポニャックはレストランやラウンジといったスペースでお客さんが会話をしているときに、そのバックで流れるのにはどういう音楽が良いか、空間演出として選曲しているので、選曲の仕方が全く違うんです。彼はあくまでも料理が美味しくなって、会話が弾むにはどうしたらいいかという考え方を常にしていて、それが新しかったんです。

 僕はBGMって中途半端な音楽だと思っているんですね。例えば、ライブとかをやるときに返しのモニターを置くじゃないですか。そのときに自分自身の声はハウリングしないように抜いてあるので「マイナス1」とか言うんですけど、結局お店でもしゃべりを邪魔しないためのBGMは、自己主張しない「マイナス1」くらいの音楽でいいと思うんです。だからボーカル入りよりはないほうがいいし、ボサノヴァみたいに薄く歌っている方が良いし、自己主張していない音楽がいいと思うんです。


●なるほど。お店や料理を引き立てるという意味では、CM音楽とも近い気がしますね。


持田:CM音楽は大体30秒くらいと短いですが、お店のBGMはどちらかというと映画のサウンドトラックに近いと思うんです。ある程度の長さで、店員の人が毎日聴いても飽きない気遣いも必要なので、そうするとある程度の曲数がないと駄目ですし、その中で流れも必要になってきます。


●日本でもBGMも含めていい空間演出をしている店は増えつつありますか?


持田:橋本徹さんの「カフェ・アプレミディ」など素晴らしいお店もありますが、ほとんどの店が有線を流すか、有り物のCDをかけているような状況ですね。


●ちなみに外国のレストランでは何がかかっているんですか?


持田:それはケースバイケースですね。フランスではステファン・ポンポニャックの登場以降、ラウンジ・ミュージックや「フーディング・ミュージック」という食事をしながら聴く音楽を流す店が増えました。アメリカはそれぞれのお店のオーナーが好きな音楽をかけていますね。例えば、ヒスパニックのオーナーはヒスパニックの音楽をかけて、ヒスパニックの料理を出すといったようにベクトルが一緒ですから違和感があまりないんです。でも、日本は多国籍な料理が食べられるがゆえにベクトルがバラバラな感じがします。ハワイアンのお店でハワイアンがかかっていれば違和感がないんですが、そこでJポップやロックがかかっているとやはり不思議に思うじゃないですか。  やはりBGMというのは「暗黙の集団合意」がないと納得されないです。「ウエディング・マーチ」がかかれば結婚式だと思いますし、「葬送行進曲」がかかればお葬式だと思いますよね。そういったすり込まれた原体験があって、音楽によってイメージされちゃうものってものすごくあります。逆に言うとイメージさせることによって料理やお店に対するオーナーの自己主張を出すチャンスがあるのに、使わない手はないと思うんですよね。



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-2008.3.11 掲載


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