●ワイワイ ミュージック設立のきっかけは何だったのですか?
岩田:2005年にユニバーサルミュージックの会長を退任を機に、音楽からリタイヤするつもりだったんです。でも一音楽ファンに戻ってテレビ番組を見ていると、音楽ジャンルの幅が実に狭くなってきたなあと感じました。僕の若い頃は、どこから何が出てくるか分からない楽しみがありましたが、そういうワクワクした感じがないですね。仕方のない事ですが一部の売れ筋のジャンルでパイの取り合いをしている。60年代、70年代に青春時代を過ごした私にはこの現状が非常に不満でした。
そういうことをサザンオールスターズをやっていた頃からの付き合いの元アミューズの山本久さんと話していたら、その考えに賛同いただきまして、一緒にやろうとなったのが発端です。僕の若い頃は、自由にやらせてくれた幸せな時代を過ごす事が出来ました。「そういう時代ってよかったね。またあんな風にできないかな?」という話からこのワイワイ ミュージックは始まったんです。
●確かに昔のレコード会社は扱う音楽にもっと幅がありましたよね。
岩田:音楽はもっと色々なものがあって良いはずなのが、成果主義と効率主義、利益第一主義が叫ばれる時代に、みんなが売れ筋という分野に群がってしまうのは避けて通れません。会社が厳しくなるとディレクターも短いタームの中で実績を出さなくてはいけない。そうなると長いスタンスで、考える人がいなくなります。とにかく実績を上げることだけが優先され、あとは結果の早く出る王道=いま当たっている分野を攻めるということになります。
でも歴史を振り返ると、世の中を変えていくような音楽は当初は多くの人が期待をしていなかったものの中にあることが多くて、そういうものがパッと売れ出すとシーンを変え、場合によっては社会・文化をも変えていきます。そういったアーティストを手がけたいですね。
●それまでになかったものですから、インパクトは非常に大きいですよね。
岩田:そうですね。音楽シーンは絶えずそういうことで回ってきたと僕は思うんです。例えば、ピンクレディーが流行ると似たような人たちがたくさん出てきて競争する。それはそれでいいんですが、それが永遠に続くわけではないです。そうするとピンクレディーとは反対側にあるようなものが出てきて、またシーンが変わる・・・その繰り返しなんですね。
ただ、今の制作の人たちは数年契約で実績が上がらなかったら次は契約してもらえないですから、あるアーティストを長い目で追いかけたいという気持ちがあっても、なかなか実践できないですし、僕がいま制作をやっていたとしてもできないと思います。求められるのは即実績で、とんでもないアーティストを持ってきて「これをやりたい」とは言えない状況と思いますね。まして、世の中の主流から外れているアーティストは、説得するのに時間がかかりますし、メディアの皆さんが「面白い」と言ってくれるのにも時間がかかります。
●では、ワイワイ ミュージックの方向性として、大きなレコード会社では出しにくいであろうアーティストに対して、長いスパンで見ていくことになるんですか。
岩田:そうですね。そこがうちのような小さい会社の強みだと思います。ただ、それに甘えるとマスターベーションで終わるという事も事実です。ですからユニークで自分の信じた音楽を一生懸命やっている人なら応援するということでは決してないんです。僕もメジャーで何十年もやってきた人間ですから、最終的にはもちろんヒットを見込める夢のあるアーティストをやりたいですね。
●そうなると新しいアーティストとの出会いも重要になっていきますね。
岩田:インディーズはもともと世の中でなかなか受け入れてもらえないし、メジャーに持っていっても取り上げてもらえない人たちが、「じゃあ俺がやろう」という心意気がある人が多かったと思うんですが、今はメジャー予備軍みたいな人たちの方が目立ちますよね。「面白いことやっているね! なんでこんなことをやりだしたの?」というようなところから本当は入っていきたいんですが、そう感じるアーティストがあまり多くないんです。ただ、インディーズには何万というアーティストがいるわけですから、必ず我々が求めるアーティストに出会えると信じています。
また、この記事を読んだ人の中でワイワイミュージックの考え方に共鳴してくれた方々から「こういうアーティストがいますよ」と声をかけてもらえるのを期待しています。でも時には「こんなにいいのに、何で良さが分からないの?」ということもあると思うんです。そこには色々な要素があるんですが、一番大事なのは大きく羽ばたける夢があることだと思うんです。そのアーティストのステージを観たときに、ワクワクしてくるような感覚と言いますかね。ですからユニークな音楽だけでは僕はやれないんですよ。
●年間何アーティスト、何タイトルの発売を予定しているんですか?
加藤:初年度は5アーティストを予定しています。約2ヶ月に1枚の計算ですね。
●現在は配信中心で始めるレーベルも多いですが、ワイワイ ミュージックはパッケージ中心で考えられているんですか?
岩田:そうですね。これは私の個人的な考えですがレコード店は大切です、やはりお店があってそこに人が集い、自分の知らない色々な情報を得て、どんどん音楽ファンになっていく・・・そういう経験がとても大事だと思っているので、配信もしていくでしょうけれど、あくまでもパッケージを軸にしていきたいと思っています。
●第一弾アーティストについてお話を伺いたいんですが。
加藤:第一弾アーティストとして、京都のザッハトルテというアコーディオン、チェロ、アコースティックギターのインストゥルメンタル・トリオを予定しています。
岩田:彼らは京都・西陣の銭湯を改装したカフェで定期的にコンサートをやっているバンドで、立命館出身なので、くるりの後輩になります。僕は京都出身なんですが、昔から京都はひねくれ者が多くて、いまの時代の流行ものはやらないんですよ(笑)。ロックが当たっているときもブルースをやったり、独特の文化がありますから面白い音楽が結構出てくるんです。
●第一弾アーティストがインストゥルメンタルとは面白いですね。
岩田:僕はビクターに入社後、一番最初にポール・モーリアを担当したんです。そういう経緯からインストゥルメンタルに対して思い入れもありますし、日本人はインストの好きな民族だと信じています。こういう音楽は片隅に追いやられた時代になっているからこそ、「なぜインストが売れないか?」を分析し、ない知恵を絞って道を開いていきたいんです。それにそろそろアメリカからヨーロッパかなと思っています。
柳の下の3匹目、4匹目で当てたとしても誰も評価してくれません(笑)。でも、ぺんぺん草の野原に花を咲かせる努力をしていると見てくれる人は必ずいるのがこの業界です。そんな人が陰ながら応援してくれて、自分の利益とは関係なくても「ワイワイミュージックでやっているアーティストいいね!」と言ってくれる。これがとても大事なんです。それは柳の下では絶対にないです。
●でも、それに立ち向かおうという気持ちが凄いですよね
加藤:岩田は芸能山城組のような変わったアーティストを手掛けて、最初はみんな「こんなものは売れない」と言っていたものを売った快感みたいなものがあるんじゃないでしょうか(笑)。僕も似たような経験をしてきているので、そこはとても共感できる部分なんです。
●宣伝も重要な要素になっていきそうですね。
岩田:そうですね。宣伝のやり方も色々と考えないといけません。よくネットという声も聞きますが、ここに出したら万全というものはないですし、アーティストごとにライブ、FM、テレビ,活字と見直していく事になるでしょう。
つまり、各アーティストごとに宣伝の仕方は考えていかないといけないんですね。「このアーティストだったら少なくともどういう宣伝が必要か?」から始まり、最終的にはお金の話に至る。で、お金は出せないとなったらそこで再度考え直すのが本来の考え方だと思います。でも、現状は日々量産されていく音楽を追いかけるのに精一杯になってしまっているんですね。
●最後に読者の方にメッセージをお願いします。
岩田:ワイワイ ミュージックは一番小さい形のレコード会社です。ですから制作、宣伝・販促において自分でプランを立てて動ける、野球で言えばプレイング・マネージャーみたいな人が必要になってきます。うちではゼロから作っていくので、大変な面もあるかもしれませんが、そのぶん仕事の楽しさややりがいがあると思います。新しいレコード会社の挑戦と言ったら大げさですが、我々の考えに共鳴してくれる方には是非参加していただきたいですし、その中でワイワイ ミュージックから代表アーティストを出していきたいと思っています。
●Musicmanもワイワイ ミュージックの今後に注目しております。本日はお忙しい中ありがとうございました。
-2007.12.3掲載
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