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--ロサンゼルス界隈のスタジオで活躍されている日本人はNakaiさん以外にいらっしゃるんですか? Nakai:アシスタントの人は2、3人いますが、ほとんどいないと思います。 --Nakaiさんのように日本人でアメリカの音楽業界に飛び込んで来る人が増えて欲しいですか? Nakai:ぜひ、増えて欲しいです。 --でも意外に増えませんよね。 Nakai:アメリカのレコーディング・スクールとかで勉強している人は結構いるんですけどね。壁は英語と技術の二つだけだと思うんです。あと人当たりの良さもかなり重要だと思います。 --アメリカになじむのはなかなか難しいのかもしれませんね。 Nakai:そんなに簡単ではないかもしれません。野球の世界でも同じでしょうけど、日本でそんなに成績が良くなかった人が大リーグに行っても、なかなかうまくいかないじゃないですか? だからエンジニアの人も日本でうまくいかなかったからアメリカで・・・なんて考えるんだったら来ない方がよいと思います。
英語と技術、まあそれしかないんですが(笑)、この二つがカバーできれば何とかなります。あとは長くやることが大事ですね。長くやっていれば出会いもあるし、苦労もするし、良いこともあれば悪いこともあります。続けていくことは大切ですし、難しいことでもあります。僕もアメリカに来て以来、エンジニア以外の仕事はしなくてすんでいるので、それは非常に良かったなと思いますし、自分の自信にもつながっています。アメリカに行って最初の5年くらいはスタジオに所属していたので、滅茶苦茶忙しかったんですが、最初に日本へ帰るときは仕事で帰ると決心していました。それまではひたすら仕事に打ち込みましたし、その後、仕事で日本に帰ることもできました。結局、勘違いでも何でもいいので「やれる!」という思い込みが一番大事だったようですね(笑)。
--一昔前に言われていたことなんですが、日本のミキシングスタイルが足していく、いわゆるプラスのミックスで、アメリカのミックスは邪魔なものを省いていくマイナスのミックスだと聞いたことがあるんですが、実際はどうなのでしょうか? Nakai:うーん、それは人によって全然違うと思います。ここからはあくまでも一般論として聞いていただきたいのですが、今の話はマイナスとプラスの違いではなく、基礎を固めて上にのっけていくミックスと、フォーカスを絞って行くミックスの違いだと思います。例えば、ボブ・クリアマウンテンなんかは、まず最初にざっとバランスを取るんですね。そこが滅茶苦茶早いんですが、ばーっと聴いてEQもかけずにバランスをとって、そこからEQをかけたり、色々なことを合わせていきます。ひとつずつ仕上げて行くのではなく、フォーカスのぼやけたものをどんどん合わせていくミックス、これがアメリカでは結構多いミックスで、日本の人たちがあまりやらないミックスですね。 日本のミックスはとても繊細なんです。それは一つのスタイルとして素晴らしいと思います。 ある意味で浮世絵的なミックスと云っても良いかもしれません。浮世絵ってどんな細かいところまでくっきり書かれているじゃないですか。それに対して、遠近法を使う西洋の絵画では、フォーカスの合っているもの、合っていないもの、ヴィヴィッドな色のもの、曖昧な色のものを置くことによって、絵ができてくる。つまりアメリカは奥行きで作っていくのに対して、日本のものは音量でバランスを取っているようです。その結果、日本のミックスには距離感がないように聞こえます。入っている音は全部聞こえるんですが、何を聴いたらいいのかわからなくなる。それで何を聴いたらいいか分からないミックスにはグルーヴが出ないんですよ。例えば、ポリリズムで色々なタイミングのパーカッションが入っていても、それを全部同じように聞こえるように出してしまうと、楽器の音色が違ったとしても、それだと本当のグルーヴは出ないんです。その辺の差は感じますね。アメリカだとそのグルーヴのバランスが見つかるまで延々やるわけです。 --アナログとデジタルの違いについてはどのように考えられていますか? Nakai:アナログを使えばこうとか、デジタルを使えばこうということではないと思います。大事なことはアナログの効果が良いとされているのなら、そのアナログの効果を耳で知っていることだと思います。そして、それを今のデジタル技術を使って再現することが大切だと思います。もしくはそれがエンジニアとしての技術レベル・理解だと思います。 例えば、いわゆるデジタル臭い音しか聞いていない人が、NEVEを使ってもアナログの音にはならないんです。逆にアナログの音を知っている人がデジタルを駆使するとかなりアナログのニュアンスは出るんですね。音楽は聴く芸術だと僕は思っているので、まずは聴くところから始まると思うんです。味の分からないシェフにおいしいものが作れないのと同じで、いい音を聴いていない、いい音を知らないエンジニアにいい音は生み出せないというのは、間違いなく事実だと思います。そのために僕は家でも色々な音を聞くようにしています。
--仕事以外でもかなり音楽を聴かれるんですね。
Nakai:そうですね。日本にいるときにあるエンジニアから「プロだからうちでは音楽は聴かない」と云われたことがあって、そのときは「プロってそういうものなのかな?」と思ったんですが(笑)、そういう環境にいるとやはり勉強不足になります。だから、新しいものや良いものが流れていたら、すぐに聴こうとする姿勢が大事だと思います。クラシックのコンサートを観に行くというのは音楽的に云々ということに加えて、生音の倍音が空気を伝わって来る感じを耳や肌で覚えるというところも大事なんです。それを再現するための技術だと思うんですよね。でも知らなければ目標がないわけじゃないですか? --どれがおいしい味か分からない人に再現はできませんものね。 Nakai:逆に言えば、どれがおいしいか分かっている人だったら、試行錯誤していけば、それ近づいていくことが可能なわけです。 |
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