SPECIAL REPORT & INTERVIEW

法制化に向け動き出したチケット高額転売問題
公式チケットトレードリセール「チケトレ」がスタート

「チケトレ」コンサートプロモーターズ協会 高額転売対策担当委員 石川篤氏、ぴあ株式会社 執行役員 東出隆幸氏
コンサートプロモーターズ協会 高額転売対策担当委員
石川 篤(写真左)
ぴあ株式会社 執行役員
東出 隆幸(写真右)

 今や音楽業界だけではなく社会問題となっているチケット高額転売問題。本人確認やチケット電子化、顔認証などの対策が進むものの、チケット転売専門サイトでの取引が後を絶たない。そんな中、ユーザー救済を目的とした音楽業界初となる公式チケットトレードリセール「チケトレ」が、6月1日に正式オープンした。

「チケトレ」オープンに至った経緯や、法制化に向け大きな転換点を迎えつつあるチケット高額転売問題について、コンサートプロモーターズ協会 高額転売対策担当委員 石川篤氏、そしてぴあ株式会社 執行役員 東出隆幸氏にお話を伺った。
2017年6月12日掲載

音楽業界側が公式に転売を認めた「チケトレ」

—— 「チケトレ」立ち上げの経緯をお聞かせください。

石川:CDの売上が減少してきた中、ライブでの収益を伸ばしていかなければならないという背景もあり、音楽制作者連盟とコンサートプロモーターズ協会で、一昨年からライブビジネスをどう発展させていくべきか勉強会を定期的に行ってきました。そんな最中、チケットキャンプさんがテレビCMを大量に打ち出しました。それまでもヤフオク!さんなど、チケットを売買できるサイトはありましたが、出品する方も購入する方も、どこか後ろめたさがあったんですね。それが有名タレントをCMキャラクターに起用したこともあって、オフィシャル感満載で展開されはじめたので、非常に危機感を持ちました。

そこで、116組の国内アーティストと24の国内音楽イベントの賛同を得て、「チケット高額転売取引問題の防止」を求める共同声明を昨年8月に新聞の全面広告を使って打ち出しました。これは各所から多くの反響をいただきましたが、7〜8%の方からチケット転売サイトが「ライブに行けなくなった場合の救済の場にもなっていた」という意見も出ていて、それに対する答えを早急に出す必要がありましたので、あくまでも救済の場ということで、ぴあさんにご尽力いただいて「チケトレ」の立ち上げに至りました。

「チケトレ」
—— ぴあさんは以前からチケットリセールサービスを行っていましたよね。

東出:そうですね。弊社の取り扱っているチケットを、弊社の会員さん同士が券面価格でやり取りするというサービスで、クレジットカードで決済されたチケットかつ、まだ発券していない状態、と色々と限定されているんですね。このサービスの発端も、1度チケットを購入するとキャンセルができなかったり、発券してしまうと払い戻しができないという商慣習でずっとやってきて、ある意味この商慣習を定着させたのはチケットぴあでもあるんですが、お客さんからよく「行けなくなったけどどうしたらいいか?」という問い合わせがあり、「オークションで売ってもいいですか」と言われても「それはやめてください」と言うしかできなかったんですね。

こういった八方塞がりな状況から、お客様の声に応える形で、行けなくなったチケットのやり取りの場として、2014年7月からチケットのリセールサービスをスタートしました。おかげさまで3年ほどやってきて、かなりの取り扱い数になっていますので、そのノウハウも得て、今回の「チケトレ」に生かしていければ、とご協力することになりました。

—— では「チケトレ」と基本的なサービスは同じということでしょうか?

東出:取り扱うチケットの対象が違います。「チケトレ」はチケットぴあ以外で購入したチケットでもやり取りできますし、チケットぴあの会員である必要もありません。また紙で発券したチケットが手元にあることが前提のサービスなので、一旦は並列でサービスをスタートさせていますが、「チケトレ」が電子チケットにも対応していくようになれば、いずれは「チケトレ」に移行していく予定です。

—— 「チケトレ」を立ち上げるにあたって念頭に置いたことはなんでしょうか?

東出:一番はお客さんの保護ですね。不当に高額なチケットを買わされているような人たちに対して、もっと公正なやり取りの場を用意することで適正な価格でチケットを購入できるようにする。もう1つは、我々は音楽業界やライブエンターテイメントとともに大きくしていただいたような会社なので、この業界に対して恩返しをしたい、また発展に寄与したいという想いが強くありました。

この「チケトレ」はまだビジネスモデルとして成立するかどうか見えていません。ぴあのリセールサービスの運用実績を元に、手数料を算出してはいますが、収支の保証がないので、趣旨の部分と経済性の部分があるとするならば、今回は趣旨の部分でぴあがやるべきなんだという判断をして、経済性の部分は二の次で始めています。

—— ただ一部で「手数料が高い」という意見もあります。

石川:その「手数料が高い」という議論も誤解があって、ぱっと見、手数料10%は高いとおっしゃるのはわかりますが、取引の上限金額なしで8.64%のチケットキャンプさんと、フェイスバリューの10%の「チケトレ」とでは全然違いますよね。ホテルにしても航空券にしても、キャンセルフィーは当然ありますし、券面価格の10%は何もおかしな話ではないと思います。

今回「チケトレ」がスタートした大きなポイントというのは、転売そのものを業界側が初めてオフィシャルで認めたということですよね。今までは供給者の論理を押しつけて一切認めていませんでしたから。これはものすごく大きな転換点なんです。

皆さんのご指摘は甘んじてお受けいたしますが、それだけではなくて、全体の取り組みの中の1つで、フェイスバリューでリスクを取ってぴあさんにやってもらったということをご理解いただくまで粘り強くやっていくしかないなと思います。