Musicman-NET SPECIAL REPORT 小室哲哉氏

小室哲哉氏写真
HD SOUND LAB. エグゼクティブ・アドバイザー、globe 他
小室 哲哉(こむろ てつや)


音楽配信事業が以前にも増して注目される昨今、その市場は各企業が激しく競合するものに発展しつつあります。その現状に対しエイベックス・グループ・ホールディングス(株)は、音楽配信の高音質化を目的としたプロジェクトをスタート。「High Definition Sound Laboratory」(HD Sound Lab.)を設立し、そこで音楽配信時代の高音質のあり方を研究・実験、将来のあるべき姿を模索するという。そして、そのプロジェクトに小室哲哉氏がエグゼクティブ・アドバイザーとして招聘されました。 音楽のビジネスモデルを新しい時代へ導くポテンシャルを秘めた今回の試み、そしてそれがもたらすであろう音楽とアーティストの本来のあり方、また今年で10周年を迎え8/10にNew Albumをドロップするglobeについて、小室氏に語って頂きました。
[2005.6/20 グランド・ハイアット東京にて]
PROFILE
全ての枠を越えグローバルに活動する、言わずと知れた日本を代表するアーティスト。 globe、TM NETWORK(TMN)、GABALL等での活動だけではなく、多くのアーティストへの楽曲の提供、プロデュース他、社会的な活動も含め、その動きは音楽業界の動向を大きく左右してきた。今回、「音質への飽くなきこだわりを追求する」という音楽に対する姿勢から、エイベックス・グループ・ホールディングス(株)の新プロジェクトのエグゼクティブ・アドバイザーとして迎えられた。また、来る8月にはglobeがデビュー10周年を迎え、10枚目のフルオリジナルアルバムをリリース予定。

小室哲哉 オフィシャルサイト】 【globe オフィシャルサイト】 【HD SOUND LAB.

【INDEX】
 ▼このプロジェクト旗あげの意味とは
 ▼HD Soundとは?
 ▼どっちを選ぶ?配信とパッケージ
 ▼新たな音楽ビジネスモデルとglobe
 ▼音楽、アーティストがたどり着くのは・・・


このプロジェクト旗揚げの意味とは?

--今回、エイベックス音楽配信事業のエグゼクティブ・アドバイザーを引き受けられた意図とは具体的にどういったことなのでしょうか?

小室哲哉(以下 TK):アナログレコードからCDに移行して約20年経過しましたが、その間にDATも含めてMDやmp3といった色々なものが出てきたわけです。そして、いよいよ音楽的に次のスタイルに移行する時期が到来してるのではないかと思っているのですが、そういう状況の中でもディストリビューターをはじめとして、CDフォーマットのみで考え過ぎていて、そこにはもう限界が来ているんじゃないかと思うんですね。 もっと全方位的に対応してあげると言いますか、アーティストがマスタリングの際、最終的にプレイバックするときの気持ちみたいなものを、ユーザーに反映したいと考えています。

--つまりCDというパッケージに固執せず次の段階に進もうよ、ということですね。

TK:「音」に関して言うと、時代に応じて全ての人がアップデート、バージョンアップしている訳ではないですよね。それでも若い人たちは別にCDを買わなくても、レンタルしなくても、好きなアーティストの音を現在の携帯配信システムで聴いて満足しているという状況について、例えばシンガーソングライターの人と対談をしたら、「携帯のあの音で伝えたいことが伝わるのだろうか?」という話になると思うんです。

--現状の携帯の音では聴いて欲しくないと思うかもしれませんね。

TK:おそらく、アーティストはそういう感じをすごくもっているでしょうね。実はもうちょっと良かったらいいなぁ、と思っている人はすごく多いんじゃないかな。要はそういうところの推奨というか、旗振りというか、そんな役目をしようかなと思ったんです。

小室哲哉氏写真 --小室さん自身、長年CDの音質に失望していて、ユーザーに届く音質に関して不満を持っていたということが今回の試みの原動力になった部分というのもあるんでしょうか?

TK:というよりも、どちらかというと諦めていたというか、随分前から開き直って「しょうがないよね」というところから始まっていると思います。自分ではもう12年前ぐらいにシンクラビア等を使用して100KHzのサンプリングレートを実験してきたので、既に、音質というのは追求すればするほど、どこまでも良い音があるんだということがわかっていた。ただ、その時期にちょうど「CDラジカセが一億台売れました」っていうニュースを新聞かテレビで見たんですね。それで、「一億人もCDラジカセを持っているんだったら、今さら他の事を言ってもしょうがないよね」と無力感をもっていたわけです。

--では今まさに、過去から抱えていた音質の問題をクリアにする絶好のタイミングが到来したと。

TK:まさにそうですね。

--今後ダウンロードが中心になっていくのであれば、そのクオリティを今の早い段階から高めて、そしてその先導役としてみんなを引っ張っていこうということですか?

TK:将来的にマーケットがそれでもう一回復活して大きくなれば、パッケージにも違うものがでてくると思うんですけどね。



HD SOUNDとは

--今回の配信の具体的な技術に関して、ご説明を頂きたいのですが。

TK:最近LOSSLESSって言葉が少し業界の中で流行になっているんですが、結局基本はCDフォーマットを越えているか越えていないかということなんです。以前は、CDの16bit/44.1KHzのサンプリングレートという限られた中で、音質向上を目指していたんです。DATマスターだと48KHzですけど、マスタリングの時点でやっぱり多少情報量が減りますよね。マスタリングを一生懸命頑張ってくれたんだろうけど、いざCDになると「うーん、どうかな」と思うことが多いんです。今はみんな24bit/96KHzプロツールスマスター、HDでやっていて、それをマスターにする方が多いかもしれませんが、それでもCDだと半分以下に落とされて商品になってしまうでしょう? そうなって嬉しいミュージシャンはいないと思うんですね。音質を下げられてしまったということですからね。既にミュージシャンはみんな何年も前から録音段階では(CDを)越えてることをやっているにも関わらずです。だから、配信なら一応上限の規制はないわけですからCDを越えたところをやってあげられるんじゃないかと思ったわけです。なのであとは環境の問題だけですね。

--最終的に再生するハードというのは限定されてくるんですか?

TK:基本的には、エンコード(圧縮)の問題だけなんで、別になにかそれ専用のハードが必要な訳ではまったくないですね。

--ダウンロードした後は、ある程度高いクオリティで聴けると。そして最終的な目標の192 KHzを標準にしていければということですね。

TK:そういうことです。圧縮技術にどの技術を使おうが、結局、圧縮するということは情報を間引くわけですが、44.1Khzから間引くのに較べて192KHzから間引くということは、算数レベルで考えても相対的にロスが少ないっていうことですね。  大体、圧縮データの類のものは、最初に入ってきた信号やデジタル・データの、その後のリリースとか次のアタックのポイントとかっていうのは、全部コンピューターが想定したものなので、ある種コンピューターがサポートしてくれた音を聴いてるようなものですが、いま僕のところでやっている192KHzだったら、コンピュータに対して「お前が勝手に想像してやっているのは違うんだよ」って言えるわけです(笑)。

--ハードの面での技術、研究方法的なところというのは?

TK:ピラミックスやオーディオキューブといったハードメーカーの方々に協力して頂いてます。エイベックスはソフトメーカーですから、それぞれのキャリアの方達のサポートを受けつつ、組み合わせ方を色々やってます。システムにおいて、何と何を組み合わせてどうしたらいいかというところは、ある種ブラックボックス的で面白いですよね。ただ、これとこれを使えばこうなりますよ、ということではないですから。

--では他のメーカーがやろうとしてもそう簡単にできることではないと?

TK:うーん、そうですね。 そうですね。でも一ヶ月もあれば情報を集めてできるんじゃないですか。

--一ヶ月でできるんですか!!

TK:でも裏を返せば、そのぐらいみんなやってもいい頃なんですよ。


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