Musicman-NET SPECIAL REPORT 小室哲哉氏文字

新たな音楽ビジネスモデルとglobe

小室哲哉氏写真 --今回のプロジェクトが進む方向においてレコードメーカー及び音楽ビジネスの今後はどうなっていくと思われますか?

TK:我々の立場ということでいうと、「レコード(録音)」という言葉の意味を考えた時に、 やはり制作というところですかね。プレスとかCDを作るところという意味ではなくなるかもしれません。工場でガチャンガチャンと作るというところではなく、コンテンツホルダーというような感じでしょうか。もっと言うと原盤をもっとキチンと制作する会社と言いますかね。

--原盤制作兼保持会社的な感じでしょうか?

TK:日本語でいったらそういう感じでしょうかね。だから、もっとアーティストの為に最も良い形で流用、使用していったりするようなビジネスになると思います。最終的には、ビシネスモデルがそういう形になり、アウトプットはあらゆる環境の人に合わせたフルチョイスシステムになるということですよね。そういうことをやったところが、いいレコードメーカーになるんじゃないでしょうか? レコード&コンテンツホルダー・オーディオ・カンパニーみたいな(笑)。

--今そこまで先を考えて割り切ってやっているレコードメーカーっていうのは、 エイベックスさんだけだとお感じですか?

TK:いえ、そういうこともないと思います。両方を上手くやってるところはたくさんあるんじゃないですかね。ちなみにビクターさんとか、配信用だけのスタジオも建設中だったり、そういう風に専用のものをつくっているとこもありますしね。(エイベックスの)HD sound lab.とか。あとは、BMG、ポリグラム、ワーナーもそうですし、みなさん動きだしていますね。ただ、パッケージもやりつつですけど。

--どっちに転んでもなんとかなるように。

TK:そうですね。ただ、エイベックスは意外と昔からそういうところでフロンティア・スピリットを発揮するというか、割と無謀な事もやってくれますし(笑)、「やっちゃえ!」という部分が、いいところだと思っています。

--やはり、どこのレコードメーカーもパッケージに限界を感じているんですよね。

TK:もう何年も前から、そのことに関するデータが数え切れないくらい新聞にでているわけですから、分からない人はいないでしょうし、業界にいて分からなかったらおかしいですよね。アメリカは、iPodやiTunesのおかげで、CDの売上が伸びているというデータもあって、日本でもそういう現象が有り得るかもしれないです。しかし、これから先2006年以降という意味では、もうおそらくそれもないでしょう。アメリカにしても、やはりBlock Buster(※注)というようなところがとてつもない数あるわだから、そういう産業のことを考えたら、やはり簡単にパッケージがダメとは言えない部分があるんでしょうね。

--小室さんは以前のインタビューで、宮廷音楽家と貴族のパトロンの関係のように、アーティストにスポンサーがつけば、よりよい音楽が生まれるのではないか?という事をおっしゃっていましたが、その辺りについてのご意見は?

TK:以前に比べると、株や投資に関する社会の関心は高まっていますよね。実際、やっとですけど、音楽に対するファンドということを考える人が増えている気がします。

--先の発言は、いわゆるファンドの事を想定しておっしゃっていたということですか?

TK:想定はしていませんでしたけど、結局今そう考える人が増えてきているということは、言葉は違うけれど近いものはあったんじゃないかと思います。株だけが投資じゃないでしょう。音楽に限らず特許もそうですが、知的財産をめぐってほぼ毎日、訴訟もおこっていますしね。そういう中で、音楽の知的財産としての価値の認知が広がって、音楽を投資の対象にする人が増えるでしょうね。原盤を一個人ではなく、百人で持ってみたりとか、十曲、百曲を何人かで投資したり、っていうことはあり得ると思いますし、これからは、そういう動きが今まで以上に益々加速していくでしょうね。

--アーティストへの直接投資という考え方には非常に肯定的ということですか?

TK:そうですね。昔、デビットボウイのファンドみたいのがありましたしね。

--実際にそういうのがあったんですか?

TK:ええ、随分前からイギリスにはありますね。いわゆる、アーティストに対して、過去何年とそれから未来何年というようなもので、楽曲やライブ活動への投資というのは随分前にイギリスではあったんです。まぁ、さっきの発言は、それを受けてのものだったんですけどね。

--インターネットで簡単に参加できるなどのテクノロジーの発達等も併せて、いよいよそういったことも、実現されそうですね。

TK:そうですね。でも、それプラス映像も混ざってというのが一番多いと思います。音だけじゃなくて、全部込みでね。映像と音と全て合わせたところに投資するという方が現実的でしょうね。

--その時はマネージメントサイドがお金を出資してもらい運用するということになるんでしょうか?

TK:そうでしょうね。そうなっていくとマネージメントはおいしいでしょうね(笑)。結局今エイベックスがマネージメントも全て含めた形でやっていこうとしているのは、そういう方向でしょう。今後そのビジネスモデルをコピーするところが増えてくるような気がします。

--逆にもう、そこを全部含めないとおいしくないと?

TK:いえ、おいしくないというか、つまり全て含めずにバラバラのままだと、いずれ掌握しきれなくなるということですよね。アーティストマネージメント自体も楽曲配信の拡大によって、コンテンツホールドもしていかなければならないでしょうね。「え、まだそのやり方でやってるの? バラバラはキツいでしょ」みたいに言われるところが出てくると思います。

--プロダクションやディストリビューションが違ったり?

TK:そうです。出版社もバラバラだったりすると、けっこうキツいんじゃないかなと思います。ちょっと生臭い話になりますけど、今のインディーズだとアーティスト側に入る金額っていうのは、今までの僕達の常識からすると考えられないですよ。それで、200万枚とかボーンっといっちゃうわけでしょう?(苦笑)

--モンゴル800みたいに(笑)

TK:そうなったら、二枚目とかは「別に・・・」という感じで、「次はまた他の楽しいことでもやろうか?」で十分ですよね。だから、この先それをきちんとメジャーのインダストリアルでやろうとしているのが、多分エイベックスだと思うんですけどね。

--小室さんは昔からエイベックスとは様々な形で関わられていらっしゃいますよね。今夏globeがめでたく10周年を迎えられるわけですが、globeも今後はやはりそういう流れになるのでしょうか?

TK:そうですね。まさに今言ってるようなことを、globeではやってもらわないと大変だろうと思います。globeが一つのマテリアル・商品として、まとまったところで管理してもらいたいですね。

--では今回の試みもglobe自らが素材というか。

TK:そうですね。まぁみなさん「食材」という言い方をされる事が多いです。少しでも鮮度の高い、つまり産地直送ということですよね。今日のデジタルディストリビューターの方達っていうのは、要は良い生鮮食品が欲しい訳じゃないですか。例えるなら僕は、自分で畑をやってるわけですからね。有機栽培みたいなことですよ。

-- 生産者直売みたいな(笑)

TK:そうそう(笑) しかもそれは、データが直産ということですからね。

※注 Block Buster アメリカの大手ビデオレンタルチェーン

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