SPECIAL REPORT & INTERVIEW

チケットガードのパイオニアEMTG
「チケットの販売方法も含めて包括的な転売対策に取り組む」

EMTG株式会社 代表取締役社長 冨田義博氏 インタビュー

EMTG株式会社 代表取締役社長 冨田義博氏
EMTG株式会社 代表取締役社長
冨田 義博

 オークション対策チケットシステムとして、どこよりも早くサービスを開始したEMTG。ファンサイト、ファンクラブ運営の延長として8年前に「コブクロ」の10周年ライブや全国ツアーで導入されたのを皮切りに、今日までシステムの改良を繰り返しつつ、多くの実績を積んできた。今年も音楽アーティスト事務所11社との資本・業務提携や、THE YELLOW MONKEY復活ツアーでの転売対策など多くの話題を振りまいている。チケットガードのパイオニアは、先の共同声明をどう受け止めたか? そして、オークションだけでなく転売サイトが氾濫する現状をどのように見ているのだろうか? EMTG株式会社 代表取締役社長 冨田義博氏に話を伺った。

2016年9月28日掲載

「オフィシャルじゃないもの」をきちんと否定した意義は大きい

—— 音楽関連4団体、アーティストさん、事務所の方々がチケットの不正転売に対して共同宣言を発表されましたが、この声明についてどのようなご感想をお持ちですか?

冨田:大変良いことだと思います。チケット転売サイトがTVCMを打つところまできてしまいますと、「これはオフィシャルなものだ」という印象がついてしまいます。それをちゃんと「オフィシャルじゃないんだよ」と宣言したのは良かったと思います。

—— チケットの定価トレードを最初に始めたのがEMTGさんですよね。

冨田:そうですね。チケットの転売問題は昔からあったことで、我々は最初某オークションサイトさんを問題視して始めたんですね。それがこの数年でさらに使いやすいサイトが出現し、しかもスマホで転売できるようになった。取引や金額の確定まで時間のかかるオークションじゃなくて、それが即時取引になり、CMを打たれ、利用者や取引量が爆発的に増えたというのが一番の問題だと思います。

—— 背景にライブ産業の成長があると思うんですが、転売によるチケットの高騰はちょっと異常ですよね。

冨田:かつ取引量も異常です。有名なアーティストさんが規模感のあるアリーナツアーをやると、もう3,000件とか5,000件といった数が常時出品されている。これは異常な事態です。

—— その事態はいつ頃からだと認識されていますか?

冨田:それはもう某転売サイトがCMをやってからですよ。それは間違いないですね。

—— でも、ユーザーさんからしたら「最終的にチケットが手に入ればどこで買ってもいい」という考えもあると思います。

冨田:必ずしも高いチケットだけがやり取りされているわけではなくて、定価割れのものもありますし、ファンクラブ向けの先行販売分については、ファンクラブに入っていないといつ売るかというのが分からなかったりもしますからね。そういう一面もあるでしょう。

—— EMTGさんは今回声明を出した団体の方たちとは、ミーティングをされているんですか?

冨田:はい。頻繁にさせてもらっています。

—— どういったお話をされているんですか?

冨田:具体的に「EMTGではどういうやり方で転売を防いでいるのか?」といった話ですね。特に3月くらいからお問い合わせが増えてきましたね。「定価で譲れる場所を用意して欲しい」というご相談などが、急に増えてきました。

—— EMTGのシステム自体は音楽業界の方は結構ご存じだと思うんですが。

冨田:いや、まだそんなに認知されていないですよ(笑)。

—— そうなんですか?

冨田:はい。EMTGはファンクラブやファンサイトの運営会社としての認知はあると思うんですが、転売対策ということでは「ようやく」という感じですね。ただ、某人気アーティストさんが顔認証を始めたというニュースの影響は大きかったと思います。転売で一番頭を悩ませていたであろうアーティストさんが顔認証に取り組んだということから、弊社にもテレビから取材が入ってきましたから。

—— やはり影響力の大きいアーティストがEMTGのシステムを使うことで、ユーザーへの認知も拡がっていくんでしょうね。

冨田:はい。ただ、もっとEMTGを知って頂けるよう、努力していかなくてはと思っています。

EMTG 電子チケット
▲EMTG 使用イメージ

—— 3月以降、ライブなどでEMTGのシステムが使われる機会は増えていますか?

冨田:電子チケットを使った転売対策がかなり増えました。

—— 基本的にはスマートフォンに電子チケットを表示させてスタンプを押す、と。

冨田:一度チケットを表示したら、普段はLINEやメールで人に譲ることができるんですが、譲れなくなるという制限をかける。さらに最近やっているのが、自分が買ったときに登録した電話番号じゃないとチケットが表示されないようになっています。

—— そもそも本人確認の方法として、まずユーザー登録がありますね。

冨田:はい。ユーザー登録は電話番号で行います。これはLINEと一緒ですね。LINEもSMS認証をしていますから、僕のアカウントは他人のスマートフォンでは見られないですよね。

—— そこで本人確認がとれるわけですね。それ以外に不正転売抑止に繋がる仕組みは何かありますか?

冨田:これは8年前からやっているんですが、応募時に一緒に行く人を指定していただいています。そうしないと、一緒に行ける権利が転売されることも…。個人的には、隣に10万円払ってもらった人がいたら居心地が悪いと思うんですけど(笑)、実際はそういうことが行われています。7〜8,000円のチケットを10万円で売った人と一緒に入場すると。

—— どんな人が来るかわからないですし、あまり会いたくないですよね。

冨田:そうですよね。でも実際にあるんです。EMTGではチケットを買うときに一緒に行く人も指定してもらい、重複も防ぐようにしています。例えば、友人同士2人がコブクロのファンクラブに入っていると、一緒に行くのに2人とも応募して、結局どちらかのチケットが余ってしまう。あと一次先行のときに何枚でも買えたりすると、当然余ってしまうんですよね。「東京は当たらないかもしれないから、名古屋も買っておこう」とか。結局そういうチケットが余っているから売ろうとなりますが、公式に売るところもない。で、転売サイトに出すわけです。ですから、システム的なことだけではなくて、抽選の仕方とか販売方法みたいなものについても、ずっと取り組んできました。

—— 転売の起きない販売方法ということですね。

冨田:コブクロでは一緒に行く人も指定してもらうことで、小さいキャパでなければ、みなさん第一希望のチケットを取れるようになりました。ですから、アリーナツアーとかでやる限りはそれが正しい姿かなと思っています。それをやらないと、何が第一希望なのかわからなくなって、チケットが余っている人と、持ってない人が生まれるんですよね。

—— そうなってくるとファンクラブに入るメリットが出てきますよね。

冨田:EMTGは二次流通がやりたいというより、元々はファンクラブやファンサイトの運営がメインで、コブクロもファンサイトの運営をやっている中で、チケットが高値で取引されるようになって、しかも1,000件くらい某オークションサイトに出るようになって、「これを放置しておいていいのか?」と取り組んで今に至るんですね。経済原理や市場原理を持ち出し、チケット転売に対して肯定的に仰る方もいますが、チケットということで言うと、基本営利目的で人に転売することは一切禁止しますとチケットに書いてあります。ですからダメなんですよ、やはり。

—— 転売自体よろしくない、と。

冨田:ファンクラブの会員向けの席を、他のファンクラブの会員に定価で譲るとかだったら良いと思いますが、高値で売るってことは結局利益目的だと思うので、そこで儲けようとする人は排除した方が良いと思います。どうしても行けなくなったら定価で譲れば良いわけですからね。