5. 地に足をつけて音楽をやろう!

麻田浩スペシャル6 --麻田さんとしては今後どういった方向に持っていきたいとお考えですか?

麻田:これはピチカートをやっている時から思っていたことですが、日本のアーティストをとにかく外国で売りたいという気持ちがずっとあって、それはこれからも続けていきたいと思っています。昔イギリスでニューウェーブが出てきた時にSTIFFとかが何故あんなに上手くいったかというと、イギリス国内で売るのはたかがしれているから、ドイツから幾ら、フランスから幾ら、アルゼンチンから幾らと世界各国と契約をしてお金を集めていたからなんですよ。

--小さい国では商売にならないですしね。

麻田:日本のインディーズは安い制作費でやっているんだから、海外で売れれば元が取れる可能性は大きいですよ。ピチカートなんか日本では2万枚くらいしか売れなくて、そのかわり「テスト盤の帝王」みたいなことを言われて(笑)、ソニー時代なんかテスト盤が業界内で瞬く間に捌けちゃっうんですよ(笑)。その後コロムビアに移籍しても売り上げはたいして変わらなくて、その割に制作費は高いから「これは海外で売れるしかないな」と思ったんですね。僕は本気で「ピチカートが日本で売れるには、海外で売らなかったら一生駄目だ」と思っていました。実際に向こうで売れたら日本での売り上げも15万枚くらい上がったわけですから、そういうことってあるんですよね。みんな僕のことを「趣味でレコード作っている」とか言いますけど(笑)、自分なりの計算があってやっているんです(笑)。もし、あの制作費であの売り上げのままだったらコロムビアもすぐ切られていましたよ。

--そういう考え方でやるとビジネスも広がるということを麻田さんは他の人にも知って欲しいんですよね。

麻田:そうですね。

--でも、誰もやらないからやっているのに「好きでやっている」と思われちゃうからたまらないですね(笑)。

麻田:(笑)。まあ、「日本で生活できなくて何が海外だ!」というのが普通ですからね。でも「日本ではとてもじゃないけど売れないだろうな」というアーティストも確かにいるんです。

--SXSWやアメリカでのご経験を通じて見えてきたことはありますか?

麻田:僕なんか向こうでツアーをやったりしていると、日本の状況に対して「ちょっと違うよな」と思うことがあるんです。例えば、メジャーと契約しただけで新幹線に乗ったり、マネージャーが何人も付いたりとかね。でも日本では結構アイドルだと思われていた歌手が、アメリカでは自分でアンプを運んだりしているわけですよ(笑)。しかもサウンドチェックもほとんどないわけです。でも、それがアメリカでは普通なんですよ。それと同時にレコードを出したら30日間で25ヵ所くらいのツアーを自分で運転して回るといったことは、僕なんかにしてみればレコードが売れていないんだから当たり前だと思うんです。最近日本でもレコードが売れなくなったので、少しそういったことが見直されていますが、レコード会社と契約するとすぐにお金が入って、マネージャーも付いてみたいなことではない世界を見てもらいたいなとずっと思っています。みんなその状況を見ると驚きますからね。

--もっと地に足をつけて音楽をやりなさいと。

麻田:そうです。自分が大好きで崇拝していた人がまさか自分でアンプを運ぶとは思っていないから(笑)、そういう部分では音楽への取り組み方がわかってもらえていると思います。本当にサウンドチェックなんて殆どしないですからね。

--それでもしっかり音を出すんですからね。

麻田:そうですね。アメリカでツアーに行ったら、「本当にこんなところでやるの?」というような場所がいっぱいありますからね。みんなそこでやらざるを得ないわけですし、そこで一人でもお客さんを掴んでレコードを売ってということをR.E.Mとかみんなやってきているわけです。

--日本でいえば売れない演歌歌手がやっていることと同じですよね?

麻田:そうですよ(笑)。

--日本のパンクバンドとかにはそういうやり方をする人たちが増えているみたいですけどね。単独でアメリカに行くバンドも増えていますし。

麻田:ギターウルフはアメリカのバンドと同じスタンスで何年もツアーをして、マタドールと契約できたりとかね。そういうことがわかってもらえたらすごく良いなと思います。

--日本の音楽業界は甘やかしすぎですか?

麻田:そこまで言って良いのかわかりませんが(笑)。売れたらリムジンでも何でも乗ればいいんですからね。そういったことをもう一回ちゃんと見直さなきゃいけないという気運は出てきていますね。

--色々なツケが今日本の音楽業界にのし掛かっているのかもしれませんね。

麻田:そういう意味では、いつもSXSWに行くと「原点」みたいなものが見られるから良いなと思うんです。

--この業界にいて思うのは、みんな「国内で飯が食えてるんだからいいじゃないか」と考えていて、麻田さんのように考えている方が少ないですよね?

麻田:でも福岡のバンドと話していても、彼らは「東京に行くのもロスに行くのも飛行機代とかたいして変わらないじゃないですか?」と言うんですよね。「それだったらロス行ってライブやった方が面白いんですよ」とね。確実に時代が変わってきていると僕は思います。