--今年やられるイベントではどんなものがあるんですか?
佐藤:in the cityは今年も「J-STANDARD」っていうテーマで、誰でも知っているような曲を全面的に押し出してやってるわけなんですけど、たとえばその一方で、CLUB QUATTROでやるイベントは、70年前後、80年前後、90年前後、2000年前後のサブカルをもう一回勉強しようっていうテーマでやるんです。というのは、そういったスタンダードを支えているのは実はアンダーグラウンドシーンであり、サブカルなんですよね。結果的にメインカルチャーになっていったものを支えてるのは、膨大なサブカルなわけで、そのサブカルにもう一回スポットを当てようってことで、そういった人達の現在みたいなことをもう一回イベントでやろうと考えてます。
--延べ何本のイベントが開催されるんですか?
佐藤:「Special Live 」がSHIBUYA-AXとQUATTROと渋谷公会堂で、他に「Who's Next ※」がタワーレコード渋谷のB1で、「label Night」「Recommend」が計4箇所のライブハウスで開催します。
--渋谷のライブハウスがほとんど参加している状況ですか。パンフレットを拝見すると、スゴイことになってますね。アーティストを選ぶだけでも骨が折れそうな作業だったんでしょうね。
佐藤:そうですね。「label Night」や「Who's Next」だけでも、プロデューサーが選んた数十アーティスト、これ全部聞かなきゃいけないの?っていうほどですよ。僕は全部聞いてますけどね。あと今年は音楽だけじゃなくて、映像もやろうということで、渋谷公会堂で2回映画のイベントをやる予定です。
--映画のイベントですか?
佐藤:ロックフィルムフェスティバルをやるんですよ。それは、大画面で大人数でロック映画を見ようよっていうことなんですよ。まぁこの手の仕事をやっていれば、ある程度常識として、例えばピンクフロイドの『ザ・ウォール』とかビートルズの『ヤァヤァヤァ〜』とか、ロックの名画というものがたくさんあるのを知っていなければいけないじゃないですか。でも現実に映画館で大スクリーンでたくさんの人と一緒に見たことのある人って業界で働いている人で一体どのくらいいるのかなって最初思ったんですよ。それで、うちの社員50人ぐらいに聞いてみても、見たことがある人間は一割もいないんですよね。みんなビデオで見たとか、名前だけ知ってるとか。常識として知っておいた方がいいんじゃないのかなっていうような作品でも、意外となかなか知る機会がなかったりしてるんです。だから、そういうイベントを設けて、フィルムのキズも音の悪さも含めて当時の映画を見て欲しいなと。これは絶対にフィルムで借りたいと思って動いてみたら、意外とこれが苦労してるんですよ〜。実は今、配給権があってフィルムもあって、っていう映画がないんですよね。みんなDVD が出てて、権利がないものばっかりなんで、『ラストワルツ』はどうやら大丈夫そうだとか、ビートルズは直接権利を持っている人達から借りれるとかいってなんとか動いているんですよ。あと今年は、ゴールデン・カップスの映画が完成したということで、映画と一緒にオリジナルメンバーで生のライブもやることになってます。ゴールデン・カップスは、いわゆる60年代のGSブームの中に一緒に出ちゃったけど、いってみれば、日本のR&Bの元祖的存在ですからね。
--それは楽しそうなプロジェクトですね。ゴールデン・カップスが見れるなんて、それだけでも楽しみですよ。チケットは一般に販売などはしているんでしょうか。どういう形で参加を募っているんですか?
佐藤:基本的には、音制連への加盟社へのメールの案内ですよね。チケットといっても、イベント全体へのパス登録がメインですから、登録すればin the cityのイベント全部を見れるわけです。
--例年思うんですけど、非常に素晴らしい企画なのに、もったいないなっていうのがあるんですよ。関係者と一般の人が盛り上がって一緒に見た方が、アーティスト側も盛り上がるじゃないですか。そういったムード作りのためにも是非一般に公開していただきたいと思うんですけどね。
佐藤:その通りですね。去年は主だったスペシャルライブはパンパンで、中に入れなかったぐらいなんですが、たしかに一般にあまり認知されていないのはもったいないですよね。そう思って、今年は学校側にはかなり声をかけてるんですよ。音楽専門学校とかデザイン関係とか、そういったところにも声をかけて、要するに学校単位で申し込んでもらう分には加盟各社と同じように参加を受け付けますよ、しかも学割でやりますよ、ってことでやってるんです。あとは、それぞれのイベントは券売はやっていますしね。ただ、全部通しで自由に見れるのは関係者の登録パス、あるいは学校に向けて案内したパスですよ、ってことです。僕も全部開かれたものにしようと思ったんで、今回のメイン・ヴィジュアルとかも、インターネットと各デザイン学校に公開して集めて、全部で60何通の応募があったんですが、選ばれたのは21歳ぐらいの若い女性でした。実はレコード業界ではかなり著名なアートディレクターとか、イラストレーターさんなんかも応募してきてたんですよ。
--なるほど。では、たとえば、今回、関係社内外でMusicman-NET上からの申込とかは受付けるんですか?
佐藤:是非受け付けてほしいですね。in the cityというのは、音楽ファン向けであるのは当然で、音楽業界で働いてる人とか働きたいと思っている人達を巻き込んでイベントをやりたいっていうことですから。僕も一般の人に呼びかけたいっていうのがあるんですよ。ですから、オセロの中島さんやカリカ家城さんなど、お笑い畑の一般の人にもある程度認知されているような方をプロデューサーに招いたりしているわけなんです。境界線っていうのはないですから。
※ … 「Who's Next」は無料です
--色々とお話を伺っただけでも、かなり大がかりなテーマと内容だと思うんですが、ここまでくるのにさぞ大変だったのではないですか?
佐藤:まぁそうですね。みんなが開かれた形で参加できるものにしたいなと思って、その土台を今回は作れたかなぁと思ってるんですけどね。またここから先は、別の障害がたくさん出てくるんだろうなぁーと。
--障害といいうのはなんですか?
佐藤:規模、ですね。規模をある程度のものにするには、それなりにたくさんの運営スタッフがいなきゃいけない。今年は7人ぐらいなんで。
--え、たったの7人でやってるんですか?この規模のイベントを・・・?
佐藤:そうですよ。現場では5人ぐらいですよ。で、それじゃあ全然無理なんでってことで、外部のプロデューサーや力がある人達に、3カ月から5カ月だけ事務局として、この部分を全部プロデュースしてください、現場制作をフォローしてください、といくつかお願いしてお任せしてるんですけどね。こういった裏で支える力がもっと強くならないと、なかなかできないじゃないですか。だからといって、ほんとにもっと開かれているというんであれば、ボランティアを募る方法とかできるけども、まだある程度業界内のことなんで、しかも業界からお金もいただいているじゃないですか。そうなってくると、微妙な力関係みたいなものをどうフォローするかとかね、今後もっと問題が出てくると思うんです。注目されればされるだけ「是非このアーティストを入れてくれ」とかって横やりとか色々来るかもしれないじゃないですか(笑)。今のところは、そういうの一切無視してやってるんですがね。
--イベントが大きくなったら、また問題がそれなりに出てくるっていうのはあるでしょうね。
佐藤:業界の全体の流れでいうとね、基金となってくる基本のお金がどんどん目減りしてるわけですね。少なくなれば小さくしなくちゃいけないですからね、普通は。今回は自力で代理店とか頼まずに、NTTとかと直接話をして、NTTの音楽配信の実験をそこでやるからっていうことでサポートしていただいたりしてますけどね。たとえば、こういったものをやりながら、持続していくのかどうかっていうのも結構難しいところでもあると思うんです。
--今回成功するかにかかってるってことですか?
佐藤:それもあるけれど、音楽業界全体をどっちに持っていくのかっていうことをもっとみんなで考えられればいいんですけど、結局レコードメーカーとか色んなところがそれぞれの権利をいかに守るかみたいなところでやっているから、決して協力的ではないわけです(笑)。
--正直に言うと、音制連の事務局の人が現場のそういう細かいことをやっていて、佐藤さんはお飾りのプロデューサーということで、かつぎ上げられてるのかと思っていました。
佐藤:違うんですよ。事務局の人は、企画内容については全く手伝ってくれない(笑)。企画を考えることからブッキングも全部自分でやらなくちゃいけないんですよ。でも勉強になるし、たくさんの人と知り合えるから、得るものは大きいんでいいんですけどね。でも2年間もやったんで、さすがにもう本業に戻りたいよなっていうね……(笑)。
--そんなにかかっていたんですか?
佐藤:いや、別に一年中やる必要はないんですよ。でも、去年ここまでデカくしちゃったから、関連してるっていうことで、「J-STANDARD」っていう本を作ったり、3か月間とかラジオの番組をやったりだとか。それも番組構成も全部自分で台本書いて、番組に出てしゃべって、それこそ全部ノーギャラですからね(笑)。結局一年中やってるんですよね。
--よくそんな面倒くさいことをお引き受けになったというか………、大変ですよね?
佐藤:ほんとですよ(笑)。今、本業が全くできないんですよ。今はもう一年中このことばっかりで…。昨年から「日本のスタンダード」っていうシリーズでコンピレーションを出してるんです。レーベルを越えて全曲選ぶところから始まって、交渉から全部僕の方でやってるんですよ。テーマ別に5枚同時に、BMG、ソニー、ユニバーサル、ビクター、東芝EMIで計5社から出してるんです。
--うわぁ、ものすごい大がかりな企画ですね。音制連もすごい仕事をしましたね。佐藤さんをよく担ぎだしたなっていう…(笑)。
佐藤:山中さんと高橋さんに担ぎ出されちゃったんですよ。音制連そのものが僕自身、一番似合わなくてずっと出てこないでいたのに、まいったな(笑)、っていう。
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