Musicman-NET SPECIAL REPORT 株式会社レーベルイト 代表取締役社長 高堂学氏


高堂学氏  音楽ビジネスの未来のカギを握ると言われながらも、なかなかビジネスラインに乗せるのが困難な“音楽配信”。そんな中アメリカで『iTunes Music Store』が爆発的にブレイク、日本でも期待が膨らむ中、今年4月、(株)レーベルゲートが音楽配信サービスの新ブランド『Mora(モーラ)』を立ち上げて新展開をみせている。国内のレコードレーベルが4年前に共同出資・設立し、音楽配信のポータルサイトとして業界を牽引してきた同社の、高堂学氏(代表取締役)に、これまでの歩みから音楽産業全体における配信事業の可能性、さらにはネットワーク家電時代へと向かう今後の展開までを熱く語っていただきました!

【INDEX】
国内最大音楽配信サイト『Mora』誕生に至る経緯
音楽配信の歩み 〜日米レコードレーベルの相違点〜
国内マーケット発展への期待と懸念
発展の遅れは配信楽曲不足が原因!?
購買層がズレる要因とは? 〜音楽配信とCDにおけるユーザーの意識格差〜
プロモーションツールとしての音楽配信
ネットワーク家電への応用
「やっぱり音楽は“良い音”で聴かなくちゃ」!


高堂 学(こうどう・まなぶ) 株式会社レーベルゲート 代表取締役社長
1948年 長野県生まれ
1971年 早稲田大学卒業
1971年 株式会社ホリプロダクション入社
1974年 株式会社シービーエス・ソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメ ント)入社
1992年 株式会社ソニー・ミュージックコミュニケーションズ取締役
2000年 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントデジタルネットワーク グループ本部長
2002年 株式会社エスエムイー・ティーヴィー常勤監査役
2003年 9月より現職

国内最大音楽配信サイト『Mora』誕生に至る経緯

--株式会社レーベルゲートでは、4年前に『Label Gate』という音楽配信のポータルサイトをスタートされていますが、そもそも高堂さんご自身、どういったきっかけで配信事業に携わられたのですか?

高堂:通信カラオケが流行りだした頃に、配信インフラを押さえられてレコード会社が音楽流通の主導権を失うのではないかという危機感を覚えたんです。実際、通カラ業界に着メロというビッグビジネスを持って行かれて、そのリベンジが着うたのモチベーションでもあった訳ですしね。その頃から音楽配信を具体的に意識しだして、レコード協会の総合音楽データベースのプロジェクトリーダーなんかをやってきまして。1999年12月にソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ)がスタートした配信サイト『bitmusic』でも現場の指揮を執らせてもらいました。当時アメリカでMP3がどんどん流行っていく中で、違法にダウンロードされる前に正規の配信サイトを立ち上げようと、SMEJ独自の判断で始めたんですが、実際にサービスを開始して、その中でいろんな仕組みやシステムを作っていくうちに、やはり一社でやるには非常にもったいないし、大き過ぎるな、ということになって。元々レコード業界では倉庫や配送の機能なんかを共有してきた歴史があるし、どうせならみんなで使おうよ、と。そういう訳で、多くのレコード会社の賛同で、『Label Gate』が立ち上げられました。

--『Label Gate』から今回『Mora』に改名された理由は?

高堂:実は改名ではないんですよ。『Label Gate』がバックヤードになってるんです。現在、音楽配信においてはATRAC3(*1)、WMA(*2)、AAC(*3)といった3つの音声圧縮方式がメインで使われているんですが、たまたま日本においてはATRAC3対応のNet MD等が出回っていることもあり、『Mora』ではATRAC3でやっていくことになりまして。ただ、各レーベルのコンテンツをお預かりするときに、どれかひとつの形式だけでは不十分ですよね。WMAを採用している音楽配信企業もあるし、そういう端末もぼちぼち出だしている。AACも、今後は家電に入っていくもの、携帯に入っていくもの、とかいろんなカタチでコーディングとして出てくると思いますので、我々も将来を見据えて、幅広くやって行こうと考えています。『Mora』はその第一歩ですね。

--当初『Label Gate』は各社の裏方で、実際には『bitmusic』などの各レーベルのサイトから決済時に飛んでくる、っていう仕組みでしたよね。

高堂:各社のサイトのほうがまだ知名度も集客力もありましたからね。まずはサイトを大きくして知名度を上げるというのが当面の目標だったので。その後4年間、試行錯誤を重ねた結果、まずは『Mora』というワンストップショップに統一された訳です。

--『Mora』という名前の由来は?
「Mora」ホームページ
高堂:「すべての音楽を網羅(モーラ)する」という願いを込めた造語です。そもそも“レーベルゲート”というのは会社名だし、長いし、濁音が入っている分カタイ印象かな、という意見があって。その点“モーラ”という言葉の響きは非常に柔らかいし、短いですからね。

--実際に日本のレーベルを一番“モーラ”されてますよね。

高堂:お陰さまで(笑)。でも、今後いろんな企業が参入してくるだろうし、アップルが日本に進出する、という話もありますし。


--最初に上陸するというニュースが出てから随分経ちましたが、実際には遅れているようですね。

高堂:当初は6月という話でしたが、秋になったり…今は来年という噂ですよね。


音楽配信の歩み〜日米レコードレーベルの相違点〜

--これまでもいろいろな配信サイトが誕生してきましたが、なかなか浸透しないというか…こうやってまとまったカタチにするのは難しいんでしょうね。

高堂:そうですね。2000年くらいから音楽配信が一気にブレイクするんじゃないかという期待があって、レーベル側も、ともかくどこかに参加しておこう、という思いがあったんでしょうね。レーベルゲートに関しても、参加企業も出資企業も多かったけど、実際は担当者も必要になってくるし、皆さん未経験ということで、組織的な問題上なかなか行動に移せなかったんですよ。それと、「現実にはそんなに売れてないよね?」みたいな声もあって、皆さん結構のんびりされてたのもあり、その結果的として、出資しているけどなかなか動けなかったんですね。会社ができて4年になりますが、当初はもう少し早いペースで音楽配信の時代が来るだろうと思っていたんですけど、割と皆さん、互いに横を見てゆっくり構えていたというか。

--『Mora』のサービスを始めた頃から風向きが変わってきたのでは?

高堂:アップルの成功や日本上陸のニュースもあって、盛り上がってきたというのはありますね。

--アメリカの配信業界はどうなんでしょう。最近はやはり『iTunes Music Store』がダントツのようですが。

高堂:時間的な経緯としては、まず『bitmusic』のサービス開始と前後して、アメリカでは『Napster』が話題になり出して。向こうのレーベルは『Napster』に対して裁判を起こしましたよね。ただ、もちろん「ダメだダメだ」と繰り返すばかりでは勝ち目なんてない訳で。つまり、自分たちもユーザーに対してデジタル供給をしている必要がありますよね。被害があるなしの証明もできないし。訴えている一方で、自分たちがデジタルビジネスを行なっていないという反論が、『Napster』側からも当然あったんです。そこで当時『pressplay』と『MusicNet』という、今の『Mora』みたいなものをレーベルが集まって作ったんですけど…付け焼き刃で作ったみたいな部分もあって、実際そんなにうまく行かなかったんですね。プレスプレイは二転三転して今や新生『Napster』に買われちゃったりしてますし。レーベル側としては『Napster』の裁判には勝ちましたけど、今もユーザーを訴えたりなんかして、音楽配信を巡る裁判は続いてる訳ですよね。ただやはり訴えるばかりではなく、正規な音楽配信を続けなくては、というところにアップルの『iTunes Music Store』が参入してきた訳です。各レーベルとは当初一年契約でしたが、アップルのカリスマ性も手伝って、レーベル側としても割と満足の行く結果となったようですね。

--あの値段(1曲99セント)に全米のレーベルは納得してるんですかね?

高堂:割と定着しちゃった部分があるので、値上げしたくてもできないというのが現状なんでしょう。そういう意味で言えば、アップルはうまいところに入ったなと思いますね。

【notes】
*1…ミニディスク(MD)に採用されている、ソニ−が独自に開発したATRAC(Adaptive TRansform Acoustic Coding)という音声圧縮技術をベースに、音質をほとんど損ねることなく、さらにATRACの1/2のデータサイズに圧縮できる新しい技術。データサイズをCDの約1/10に圧縮することができる。
*2…「Windows Media Audio」の略であり、マイクロソフト社の提唱するメディアテクノロジー「Windows Media Technology」の中のサウンドを扱うデータフォーマット。
*3…ISO(国際標準化機構)のワーキンググループであるMPEGが1997年に制定した音声情報圧縮の国際規格「MPEG-2/Advanced Audio Coding(ISO/IEC標準13818-7)」。BSデジタル放送の音楽圧縮技術として採用されている。
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