--アップル関連のニュースは、日本の音楽配信において良い影響を与えていると思いますか?
高堂:
可能性の立証という点ではそう思います。ただ、例えばアメリカでのサービスをそのまま日本に持ってきて、同じシステム、同じ価格でやったとしても同様にうまく行くとは限らない。日本では以前からシングルマーケット、レンタルマーケットが充実していて、単曲でMDに入れて聴くという楽しみ方をしてきた訳で。その点アメリカではそういったマーケットが開拓されていないので、1曲ずつ買えるっていう仕組みが新鮮だったんでしょうね。だからこそアルバムはパッケージで買って、単曲はダウンロードするという文化が定着しやすい。ただ日本人は一方で、買ったCDでもわざわざMDに落として聴いたりもするでしょ。つまり、ある意味データで聴いてる。なので、逆に言えば日本のユーザーの方が1曲ずつダウンロードする文化に馴染んでるとも言えるんです。マーケット、文化の違いをくみ取ってサービスの内容を適応させていくことが、日本での成功のポイントと言えるでしょうね。
--日本でも他社の参入が急激に増えてますよね。
高堂:
そうですね。ただアメリカでも日本でも、まだそこまで至ってないような気がしますけどね。いくつも乱立するほどには。将来的に浸透してくると、『Mora』のような総合ショップも含めていろんな専門的なサイトも出てくると思いますが…リアルなショップをやるより、ネットの方がいろんな可能性を秘めてますからね。しかし、残念ながら全体的にまだそのレベルに至ってないし、そこまでのマーケットが開拓されてないのが現状です。いくつかサイトが出てくることで配信に目が行くのはいいけど、アメリカみたいに価格競争が起こってお互いの足を引っ張ってしまうということは避けたいですね。
--最近ソニーからHD(ハードディスク)ウォークマンが発売されましたが、アップル同様、ソニーにも戦略があるのでしょうか。
高堂:
あるでしょうね。アメリカやヨーロッパで『Connect』というサービスを始めてますし。ただiPodと違って、ATRAC3もOpen MGというDRM(デジタル権利管理)もライセンスはオープンにしてますからね。Net MDやエニーミュージックも各社から発売されてるでしょう。コンテンツも機器も大勢が参加した方がいいという戦略でしょう。
--HDウォークマンが出たことで、やっとアップルに対抗できると?
高堂:
ただウチと、iPodで儲ければいいというアップルのビジネスとでは根本的に違いますからね。レーベル自らがやっているという点でもそうですし。アメリカのレーベルは失敗して、結果的にアップルに丸投げしてしまいましたが。
--現在『Mora』に登録されているカタログ数はどれくらいですか?
高堂:
約4万曲です。ちなみに去年の11月の時点では7,000曲くらいでした。
--かなりの急カーブで増えてるんですね。
高堂:
海外ではカタログ数と価格で競ったりしていますが、僕は日本ではそういう必要もないかな、とも思います。もちろん数が多いに越したことはないんですけど、本当に70万曲、80万曲とか楽曲があっても、実際に動くのは限られてくるでしょうから。
--レーベル各社で楽曲の開放はなかなか難しいようですが。
高堂:
開放するという方向性は『iTunes Music Store』『Napster』『Connect』等の例を見ても分かると思います。特に外資系レーベルは、本国では数十万曲出せる状態なんですよ。ただし日本では許諾は出ていても作業の問題が大きくて…日本向けにしたりとか、品番や価格の問題とかで、組織的にも簡単にはできないというのが現状です。
--邦楽の場合ではどうでしょう。大物アーティストは出てるけど一部だけだったり、同じレーベル内でも揃って出てるという訳でもない。
高堂:
日本の場合は、スタート時期は早かったものの、割とのんびり構えてますからね。アメリカでも整理するのには多少時間がかかったと思いますが。単純に言えば、各レーベル、各アーティストによって具体的な契約内容も違ってくるでしょうし…やっぱり一番苦労する点ですね(笑)。
--この大物アーティストが出てれば他のアーティストも…と思いますけどね(笑)。
高堂:
そこはレーベルやアーティスト側の意向もあるでしょうし、難しいですね。権利の所在を巡る駆け引きだとか、レーベルの方針だとか、いろんな考えがありますからね。
--価格はどのようにして決定されてるんですか?
高堂:
基本的に、日本の場合はレコード会社が自らユーザーに売ろうという考えなんですよ。つまり、『Mora』という総合ショップはあるものの、実際はレーベルがユーザーに直接売ってるというカタチになっていて。だから価格もレーベルが決めるというスタイルが基本なんです。
--レコード業界の長年の慣習というのもありますからね。メジャーはメジャーのレベルで値段が決まるだろうし、インディーズは多少バラつくのかもしれませんね。
高堂:
そうですね。ただ“値頃感”じゃないですけど、現状でもそこそこだろうと思っています。安ければ売れる、という話じゃないと。10円でもいらない曲は買わないでしょ? それに、日本は格段に高くてアメリカは安い、なんてこともない。向こうは99セント、日本でも150円くらいからあるし、平均でも200円くらいですからね。
--『bitmusic』はスタート当時350円でしたよね。
高堂:
あれはシングル盤の価格から逆算したもので、どうしても既存のマーケットのアレンジでスタートせざるを得なかったんです。
--その頃に比べてユーザーに変化はありましたか?
高堂:
多少はあるかもしれませんが、配信のメリットというものにはまだ慣れていないという印象ですね。享受できていないというか。CD購入者に比べると、数的にもまだまだ少ないですし。『Mora』に限って言うと、ユーザーの7割が男性で、年齢層は20代後半〜30代が多いんですよ。CDを買ってるのはおそらく女性、年齢も10代が多いと思うのですが、全然違う層にきてるんですよね。
--パソコンやインターネットユーザーがメインということでしょうか。
高堂:
そうですね。ある程度年齢が高いということは旧譜が売れる可能性があるので、カタログも増えてこれから伸びていく可能性もありますが。ただ、まだまだ“音楽を買いに来くる”というお客さんは限られていて。どちらかと言うとネット好き、パソコン好きな方が有名な曲、街で売ってるのと同じ曲を買うというのが主流ですが、これからはネットでしか買えないような曲が売れる時代が来ると思います。
--現状ではどういう聴き方が主流なんですか?
高堂:
アンケートによると、やはりパソコンで聞く方が多いですけど、意外と端末を買ってNet MDなんかで聞いている方も多いですよ。
--時代が進んで、小さい端末なんかが普及するとまた変わってくるでしょうね。携帯電話にしても、ここ数年でどんどん変化してますからね。
高堂:
日本では、ADSLを中心にブロードバンドが急速に伸びましたよね。その影響で音楽配信も一緒に伸びるかと思ってましたけど…まだついて行けてないですね(笑)。要因としては、コンテンツが少ないとも言われていますが、決済方法ひとつを取ってもカードがメインになってしまう分、年齢層を制限してしまっていることなどが挙げられると思います。そのうち電子決済なんかが浸透して子供達にも普及してくれば、状況は随分変わるんじゃないでしょうか。これまでもたくさんの障害があって、ひとつはクリアされたけどほかはまだという状況では、どうしても低いレベルに足並みを揃えがちですが、いろんなものが同じように改善されていくと、相乗効果でブレイクしてくると思います。
--現在も着々と足場を固めている訳ですね?
高堂:
この4年間で失敗もたくさんありましたが、その分、状況は確実に良くなりました。
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