第85回 つんく♂ 氏

5.ゲームソフト「リズム天国」完成までの道のり

--つんく♂さんの中に教師的な「若いヤツを育てたい」という資質があるんだろうなと感じるのですが、やはりそういうことには興味を持ってらっしゃるんですか?

つんく♂:ありますね。プロデュースなんかもやってることはほぼそういう意味で、もちろん音楽も教えますけど人生も語りますし、初期のメンバーにはかなり厳しく接してきましたから。歌詞の中に人生の教訓みたいなものを詰めていってるから、歌ってるうちにそれが読まれていってるんじゃないかなと思ってますしね。

 実は「日本の音楽というものがなぜこんなに世界に評価されないんだろう?」ということが僕のなかの悔しさの1つなんですね。もちろん言葉が大きな要素なんですが、日本人の作る技術というものは世界の中でずば抜けて素晴らしいですよね。あとは細かいディテールとか、工業製品もそうだし、ホテルマンもCA(キャビンアテンダント)も気配りの素晴らしさは世界でもずば抜けてるわけですよね。音楽作らせたって日本の音楽って素晴らしいはずなのに何が違うんだろう? って考えたときに、僕の中では日本人はリズムに対する理解力が足りなすぎるんだと思います。僕はそれをなんとなくつかみ取ったんですよ。だから、曲の持ってるリズムさえ把握してしまえばどんな曲でも作れると。その音楽は真似ることじゃなくてちゃんと作れる。日本人がやってきたのは「○○風」みたいなものが多かったんですけど、ミュージシャンの人もたぶん理解してない。中にはずば抜けて上手い人たちもいるんですけど、それを使いこなせてないなと思って。

 ですからリズムを理解するためには10歳未満の子供にリズムをすり込ませないといけないと思って、任天堂に子どもたちに遊びからリズムを教えていけるような教育ソフトを作ってもらうために企画を持って行ったんですよ。

--つんく♂さん側から持って行ったんですか?

つんく♂:ええ。そしたら社長が企画書を見て、部下の人たちも連れてきてくれたんですよ。それで2年ぐらいかけて準備して、3年目についにできあがったのが『リズム天国』です。それで僕の思っていたようにまず小学生がはまっていったんですよね。もちろん大人もやりましたけど、小学生が夢中になってやってくれていたのでこれはいけるなと思って。

--『リズム天国』は何百万本も売れたんですよね。

つんく♂:ゲームボーイアドバンスの『リズム天国』が当時20万本ぐらいだったんですよ。そこから1年半ぐらいかけてDSの『リズム天国ゴールド』が出たんですが、それは170万本ぐらい売れたのかな? 世界では累計250万本ぐらい売れました。

--あれが教育ソフトだったとは知りませんでした(笑)。

つんく♂:精神的にはそういうつもりで作ったんです。自分の子供も2歳で踊ったり歌ったりし始めた頃なのでリズムのスクールみたいなところを探しているんですけど、ないんだったら僕がやってみようと思っています。

--子供向けのリズムスクールを作ろうと。

つんく♂:そうです。スクールといっても教室というか塾みたいなものですけどね。

--日本人もずいぶんリズム感よくなってはきたとは思うんですけどね。

つんく♂:そうですね。でも、そもそも日本人って本来はリズム感悪くないんですよね。阿波踊りにしてもだんじりのリズムにしても凄い明確なリズムがあるんですけど、たぶんクラシックを学んでからおかしくなったんですよね。日本人ってクラシックを譜面だけ見てうわべで取ってしまうんですよ。クラシックって当時の流行音楽だったわけですから、もっと尖ってたはずなんですけど、譜面だけで伝えていくから全然ノれてないんですよね。もっと楽しかったはずだし、体で体感する音楽だと思うんですよ。

 ぼくはいつもピアノとかギターをパーカッションだって言うんです。弾くものじゃない、はじくものなんだと。1弦から6弦までジャーンじゃなくてジャン!というか点なんですよ。タラララーンじゃなくてドン!って通過する点なんですよ。それを今のビジュアルバンドのやつに弾けって言ったら弾けないんですよ。それじゃいかんと。音符はタテに一列でズレはないんだと。時間にしたら0.1秒とか0.0何秒の世界だと思うんですけど、その差を感じろって言うんですけど、なかなか理屈がわからないんですよ。だからリズムは非常に大事ですよね。リズムを制覇すれば、ほとんど問題ないですよね。

--それがわかってるミュージシャンはやっぱり少ないと感じますか?

つんく♂:上手い人たちはみんな感覚的にやってるんですよ。ただ理解してる人が少ない。だから黒人なんてそうですよ。黒人のギタリストと仕事しましたが、音符は読めないけどスケールはわかってるからすごく上手いんです。彼らは体がそういうリズムだから弾けるんですよ。でも理屈でわかってないからそれを他人に教えられないんですよね。「なんで弾けないの?」っていう顔してる。「こうしかできないだろう?」って。

--つんく♂さんの引き出しが多すぎて驚きました。ここまでリズム談義になるとは(笑)。

つんく♂:リズムは日本人は本当に理解したほうがいいですよ。