−−前回ご登場いただいた加藤和彦さんとはどのようなご関係なんですか?
佐野:加藤さんとは10年程前に所属アーティストが出演していたコンサートでお会いしたのが最初なんですが、僕はもともと、中学生の頃から加藤さんのファンだったんです。はじめてお話しして、とても感じの良い方でますますファンになりました。
それと、うちの所属アーティストの佐渡裕に、ゲームソフト音楽の録音の指揮をしてくれという依頼がゲーム制作会社から来たんです。そういう仕事はほとんど受けていないのですが、作曲が加藤さんだということで僕が強引に受けて(笑)。それからまもなく、加藤さんの昔のフォークグループのメンバーによって、北山修さんの還暦をお祝いするコンサートが大阪のフェスティバルホールで企画されていました。そのことで加藤さんから相談にのってほしいと電話をいただいたんです。それは『帰ってきたヨッパライ』の続編を、オーケストラを使って、交響詩にするっていう内容だったんです。それが大成功で…。そのときから色々なお話をいただいたり、食事をご一緒したり、最近では僕の方から「こんなこと、あんなことやりませんか?」と提案したりしています。
−−その提案とはクラシックとポップミュージックを融合させるということですか?
佐野:いえ。基本的に僕はクロスオーバーって間に合わせみたいな感じがしてあまり好きではないんです。クラシック音楽の仕事をしていますが、昔から色々なジャンルの音楽を聴きます。サザンオールスターズは多分出ているCDを全部持っていると思いますし、小野リサさんのCDも全部持っています。井上陽水さんも大好きです。あまりポップスのライヴには行かないのですが、何年か前、陽水さんのコンサートを横浜アリーナに聴きに行ったらPAの音があまりに大きすぎて、本当に気分が悪くなっちゃって・・・(笑)。
−−確かに音がバカでかいときってありますよね(笑)。
佐野:ありますよね。それで、たとえば陽水さんのコンサートとかを、どの席でももっと生音に近い究極のPA技術で聴かせるとか、クラシックと融合するんじゃなくて、もっと音楽的にできる方法があるんじゃないかと思ったのですね。それで加藤さんには色々と提案しているんですよ。たぶん僕らより上の団塊の世代の人でそういう音で聴きたい人はたくさんいるんじゃないかな?と。
−−クラシックコンサートは基本的に生音ですものね。多少PAとかはあるんでしょうけど。
佐野:そうですね。基本的にというかほとんど生音ですね。PAを入れるのは屋外公演などの特殊なケースしかないですから。今大阪で「1万人の第九」っていうコンサートをやっているんですが、会場が大阪城ホールなので、それは当然PAを入れています。でも、PA技術としては究極と思えるすごく微妙なことをやってもらっています。
−−やはり、音に対してものすごくシビアなんですね。
佐野:そこまででもありません。アーティストでもないし、僕は素人ですから。ただPAの技術者はもっと思考を積み重ねていらっしゃるでしょうから、そういうお話を伺ったり、質問したりしてみたいなとは思っています。
楽器でもPAでも時代が進むにつれ技術革新しますよね。それによって作曲家・演奏家の創作、再現という行為の源になるイメージ、また、聴衆の期待するもの、色んなことが変わってくると思います。クラシックの世界もそうだったのではないでしょうか。ベートーベンとかモーツァルトの時代にやっていた演奏会と今とは、全然違うんじゃないでしょうか。例えば、ベートーベンやモーツァルトは、今のスタンウェイのピアノの音なんて、絶対イメージを持って作曲していないはずです。当時のピアノ・フォルテは機能的にも音色も今のものとはかなり違いがあります。ホールだって、キャパシティーも音響も、今とは全然違いますしね。しかも、放送とか録音機器が出てきてまだ数十年ぐらいですから、ベートーベンやモーツァルトの演奏や指揮を生で聴いた同時代の人ってちょっとしかいないと思うんですよ。モーツァルト自身が弾いていたピアノ演奏と、モーツァルトの楽譜だけをもとにヨーロッパのどこかの国でピアノの名手が弾いていた演奏は、ずいぶん違っていたのではないかと想像します。
−−当時どんな演奏がされていたかは我々には分かりませんよね。
佐野:楽譜にはアンダンテとかアレグロとか書いてありますけど、たぶんテンポの概念も今とは違ったと思うんです。今でも違う指揮者が同じ曲を演奏したら何分か違ったりしますけど、昔はもっと違ったんじゃないかなと思います。たぶん似て非なる物だった可能性もある、というような想像をするのが僕は好きなんです(笑)。
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