−−プロのミュージシャンとして活動を始めるきっかけは何だったのですか?
武部:20歳くらいのときにたまたま行っていたリハーサルスタジオが、かまやつひろしさんやユーミンがリハーサルをやっていたスタジオで、そこには当時珍しかったんですが、ハモンドB-3やソリーナといった楽器が常設してあって、キーボード弾きにはたまらない場所でした。そこに出入りしているうちに知り合ったのが、かまやつさんのバンドのメンバーで、そのときのかまやつさんのバンドには2人キーボードがいて、1人は今ラテン界の巨匠である森村献さん、もう1人が山本達彦さんだったんです。ただ、山本達彦さんがデビューすることになったのでキーボードが一人いなくなると。それで音大出でちょっと弾ける奴がいるということでバンドに誘われたのが20歳の時です。
−−プロデビューのきっかけは、かまやつひろしさんだったんですね。
武部:そうです。かまやつさんのバンドに参加したのが、僕のプロとしてのキャリアの一番最初です。ですから、僕の音楽人生の中で絶対に足を向けて寝られない、親代わりとも言える人がかまやつさんなんです(笑)。今でもかまやつさんに言われたら何でもやろうといつも思っています。
かまやつさんと知り合ったことでユーミンとも知り合いましたし、田辺エージェンシーのタレントのバックバンドをやるようになり、その中で色々な人と仲間になっていったんですね。アルフィーも20歳くらいからの付き合いで、僕らが清水健太郎さんのバックバンドをやり、アルフィーが研ナオコさんのバックバンドをやり、歌番組や『8時だよ!全員集合』『カックラキン大放送!!』といったバラエティー音楽番組によく出ていました。
それまで『夜のヒットスタジオ』はダン池田さんとニューブリードだったのが、だんだん歌う人が自分のバックバンドを連れてテレビ番組に出るようになっていきました。それで僕も本当に色々な人たちのバックバンドをやるようになって、かまやつさんのバンドをきっかけに、久保田早紀さんの『異邦人』の時は1年中バックバンドをやっていましたし、寺尾聰さんの『ルビーの指輪』のときも1年中バックでピアノを弾いてました。
−−一年中ですか・・・。
武部:1年間月曜日と木曜日のスケジュールは押さえられているんです。月曜日は『紅白 歌のベストテン』、木曜日は『ザ・ベストテン』でね(笑)。そのくらい寺尾さんの『ルビーの指輪』は売れましたからね。
−−その頃にはどこか事務所に所属されていたんですか?
武部:僕は23歳の時に自分の会社を作っているので、ハーフトーンミュージックは'80年設立ですね。
−−そうなんですか! 随分早い時期にご自分の会社を作られたんですね。当時としてはとても珍しいケースだったんじゃないですか?
武部:そうですね。その時はかまやつさんのバックバンドだった人たちや寺尾さんのバックバンドだった人たちで、自分たちのためにオフィスを作ろうと集まったのが最初ですね。その中で社長を決めて、デスクを一人雇い、みんなのマネージメントを始めたのが一番最初です。
−−ハーフトーンミュージック設立の一番の目的は何だったのですか?
武部:当時のミュージシャンって、虐げられていたとは言いませんが、カードも作れなかったですし(笑)、例えば、一人で仕事をしていても事務所からはギャラが何ヶ月も支払われなかったりだとか結構多かったんです。そこは会社という単位でまとまり、例えば、このバンドのメンバーのギャランティー一式を幾らで、こういう期日に欲しいと言うことによって、ミュージシャンの生活安定や地位向上をさせたいというのが最初の志でした。みんな20代の若造でしたが、集まることによって数が力になった部分もあると思いますし、僕たちのやり方にシンパシーを感じてくれたミュージシャンが色々集まってきたのがハーフトーンミュージックの成り立ちです。
−−武部さんの音楽家としての業績もさることながら、ビジネス面での功績もすごいですね。
武部:いや、それはたいしたことないですよ(笑)。金儲けしようとか、何か売ろうというよりも、そうやって信頼できる仲間が集まって音楽を作っていくということがベースにあったから上手くいったんだと思います。
−−最初はユニオンみたいな感覚だったんですか?
武部:芸能界にはユニオンがありましたが、ポップスの世界ではありませんでしたからね。そこで色々な人たちとネットワークができると、「この仕事はあの人で」というように仕事の融通がきくようになりましたね。
−−ただ、社長となりますとミュージシャン以外の仕事も増えて大変だったんじゃないですか?
武部:当時は本当に両方やっていましたね。家に帰って帳簿をつけて、ハイエースを運転して楽器を運び込み、それを弾いてました(笑)。
−−余談ですが、その後カードは作れたんですか?(笑)
武部:はい。会社社長になって、めでたく作ることができました(笑)。
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