−−日本の音大でそういったことを教えてほしいと依頼してくる方もいらっしゃるんじゃないんですか?
谷村:中国の人たちの方が本質が見えていますし、そもそも日本でそういう依頼されたことはないですからね。今、日本は大変な状況ですよ。
−−悲惨ですか?
谷村:はい。外から見ていれば日本がいかに大変な状況になっているかということがはっきりわかります。
−−それは教育ということに関してですか?
谷村:教育も政治も全部ですね。実態がみなさんにはほとんど見えてないかもしれないと思いますよ。
−−それはやはり中国と日本を行き来している中で、よりはっきりと見えてしまったということですか。
谷村:そうです。外から見れば、日本はこういう見え方だとわかりますし、「日本」についての勉強は個人でし続けてきて、やっとわかってきました。
−−日本がそのような状況になってしまった一番の要因は何だとお考えですか?
谷村:責任はやっぱり大人です。だから大人の教育改革をしないと駄目です。日本の大人が一番子どもで、他の国へ行くと全く通用しない。アイデンティティもない。それが一番危ないと思うことですね。
−−そういった思いが5年ぶりのニューアルバム『オリオン13』にも繋がっているんですか?
谷村:ニューアルバムではもっと広い大きな次元で歌っています。感じる人は感じる。感じない人はたぶん何も感じないかもしれませんね(笑)。
−−その「高い次元」とは一言で言うと「ココロ」の話になるんでしょうか?
谷村:子供が「ココロってなに?」と質問しても大人は誰も答えてやれない。これは大人の問題だと思います。大人は「誰にも教えてもらえなかった」と言いますが、では「どうして学ばなかったんですか?」ということです。だから、大人にとって耳の痛い話をしてくれる本当の大人がいないというか、愛情を持って叱られたことがなかったんじゃないかなと思いますね。大人が危ないと気付いている人はもう時間がないから発言し始めています。さだまさしなんかも書き始めていますよね。どう思われてもどんなに叩かれても言うべきことは言うとみんな腹を決めたんじゃないかな。
−−加山さんもインタビューの中で、「心根が重要でこれからは素直に生きていかなくてはいけないし、周りの人に対する感謝の気持ちを忘れてはいけない」と仰っていました。
谷村:そのことが全てです。加山さんが最近そういう話をされるようになって、やっぱりこの人は素敵だなとあらためて思いました。
−−新作を聴かせて頂いたんですが、中に「にげない」「あきらめない」「とらわれない」「ごまかさない」「ひらきなおらない」というメッセージがありますよね。僕は今まで「いざとなったら開き直ればいいじゃないか」みたいに人によく言ってきた気がするんです。それがいいことだみたいなイメージで自分は使ってきたんです。ですから「ひらきなおらない」というと、俺は間違ってたのかなって思ったんですね。
谷村:では、開き直ってどうします(笑)?
−−開き直るのは「自分を正直に出すんだ」みたいなイメージで使ってたんですよ。
谷村:
それは逆のことが多いんです。自分が違っていたと思ったら、ごめんなさいと素直に言えない大人が多い。だから開き直って良くなることは何もないです(笑)。
−−あと、私が開き直るというのは「覚悟を決めて肝据えて頑張れ」という意味で言っていたような気がするんです。
谷村:
それは決心のことですね。開き直るんじゃなくて「決心」です。心をどう決めるかということです。色々と話してしまったのでちょっとややこしくなってしまいましたが、「かっこいいほうがいいよね」ということなんです。若い子たちの方が感性が豊かで閉じてないから、素直な部分が多いです。だから学生たちと話していてもすごく楽しい。でも、日本に帰ってきて割と同世代の人の話を聞いていると、この業界はどうのこうのってうんざりすることばかり聞かされます。あなたはその業界の人じゃないのか? もし嫌ならば辞めればいい。生活の為というのであればやればいい。そうやって生きればいい・・・ものすごく簡単な話でYES or NOなんです。だから全てをYESと腹を括ることができるんだったら、決して愚痴らない。愚痴っている姿を子供たちが見ていたら、「お父さん、かっこ悪いな」と思います。逆に大人が愚痴らないような生き方をしてると、子供たちは「かっこいいな」と感じるはずです。
−−「全てをYESと腹を括って決して愚痴らない」というのはまさに谷村さんの生き方そのものですよね。
谷村:
僕はずっとそうなんです。僕は『昴』の中で「心の赴くままに」ではなく、「心の命ずるままに」と書いているんですね。「赴くままに」と言うと取りようによっては「好き勝手に」とか「我が儘に」と置き換える人がいますがそうではなくて、心がこうしようと言っていることに素直にいこう、ということなんです。今まで自分は誠意を持って思うように生きてきましたし、これからもそうしていきたいと思っています。周りがどんなレッテルを貼ろうが、なんでも"We can say yes"ですよ(笑)。
−−もう一度、ニューアルバムを聴き返してみたいと思います。本日はお忙しい中ありがとうございました。益々のご活躍をお祈りしております。
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