リレーロゴ 松本晃彦氏 BACK NUMBER

松本晃彦氏 音響システムの進化──5.1chシステムの未知なる可能性

−−自宅でホームシアターっていうのも、DVDがここまで普及したからこそって感じですね。

松本:今後は絶対アーティストもCDと映像セットで売られると思います。今はコンサートのビデオみたいなものが多いですけど、たぶんそのうちDVDが中心になると思います。なぜかというと、今電気製品を買いに行くとDVDってCDも聞けるから、CDだけのステレオを家庭用オーディオとして買う人口ってすごく少なくなる。これが3年とか4年とか経つと自宅に普通のオーディオがある人と、DVDでCDとか聞いたりする人の人口が逆転すると思うんですよ。アナログのレコード盤からCDに移ったときのように、ある日あっという間に。そうするとCD作ってもDVDの市場の方が広くなるんじゃないかと。だから、今のレコード業界がCDに囚われちゃったりすると、生き残れないんじゃないかと思います。今5.1chのシステムでどういうサウンドの構築をするかっていうことについては、まだ誰もわからないわけですよ。

−−まだ確立されていないと?

松本:そう。それがアメリカ人の誰かがやり出すと、ってやり出しているんですけど、そういう方向に進んでいくんだと思うんですけどね。だから、「日本で5.1chに関するテクニックの最前線は俺だろう」という風になりたいですよね。

−−ここの下のスタジオはそうなんですか?

松本:作業のときはそのシステムを持ってくるという感じですね。僕の場合自宅にあるので、そこで研究ができるんですけどね。前にスピーカーが3つあって、横に2つあるじゃないですか。じゃあ、センターの位置にどういう風に楽器を定位させるかという問題があったりと、映画音楽をやっていたおかげで、だんだんと見えてくるものがありますね。そうするとスクリーンを下ろさなくても、音楽だけでもそのシステムで聞くと楽しいですよ。

−−面白いものを見つけたって感じですかね?

松本:そうですね。TAKE6のDVDとかは、センターのスピーカーにもコーラスが定位されていますよ。

−−ハウス・ミュージックとの関わりもある松本さんですが、クラブに5.1chを導入すると面白いという話にはならないんですか?

松本:むしろカーオーディオじゃないですかね。

−− 一番簡単に体験できる場所として車の中だと。

松本:今は単に差せばいいような3万円くらいのとか出てますよね。ああいうのも持っていて、リビングに置いてあるんですけど意外と楽しめるんですよね。まあ、カーオーディオも狭い空間でできるんですけど、自宅のリビングにポンと置いちゃうようなことができるんじゃないですかね。

−−でも日本の住宅事情が発展を妨げているとも思うんですが・・・。

松本:いや、みんな持ってますよ。その認識は古いと思います。ちっちゃいスピーカーで、安くもなっているから。でも、スタジオは今後5.1chのシステムがないと辛いと思います。絶対みんな5.1chに向かいますからね。勝ち組・負け組じゃないですけど、お金のある組は絶対5.1作るので。僕、プリプロスタジオみたいなものを池尻に持っているんですけど、ProToolsがあって、一応その中を防音してもらって(笑)。で、「自宅でできるじゃん」みたいな感じになっているんですよね。

−−スタジオの存在意義にかかわってきますね。

松本:それとか、プロフェッショナルとアマチュアの人との垣根はどこにあるのか?みたいなこととか。デジタル技術の進歩ですっごく変わってきたじゃないですか。この(プロ・アマの)違いを今もう一回はっきりしないと、ヤバイよっていう感じがしますけどね。

−−でも、自宅で5.1chをやられたら、かなわないわけじゃないですか(笑)。

松本:でも、5.1chのミックスとかができるようになってた方がいいと思いますけどね。宇多田ヒカルみたいなあのクラスの人たちは、絶対そういうことをこれからもやっていくだろうし。そうじゃなければインディーズの人みたいに、それこそ自宅録音みたいになってしまうので。パソコンの1台や2台アマチュアの人でも買えば、僕らと同じことをできるんですよ、たぶん。

−−「サウンド&レコーディング」を買えば、何でも書いてありますしね(笑)。ここの下(スタジオ)を使うまでもないですか?

松本:そうですね。ロック・バンドみたいな人とか、フル・オーケストラとかを呼ぶとき以外は、もう自宅でProToolsのデータになっているので、あとミックスだけしてもらえばそれでOKという感じなんですよ。だいたい今、レコーディングスタジオでマルチって使ってます?ヨンパチ(MTR:SONY DCM-3348)を使う仕事とか?

−−3ヶ月に1回くらいはあるんじゃないんですかって感じですね(笑)。

松本:やっぱりProToolsですよね。楽ですものね。

−−そうですね。よっぽど変わった人が「回してみようか」という感じで。値段も悲しいですよ。YAHOOオークションに20万円でヨンパチが出てたっていう(笑)。ただしヘッドはヤバイよと。

松本:あれって、SONYとかメンテする契約とかあるんじゃないですか?

−−いや、秒読みという感じじゃないですか。生産は1年前に打ち切りになっていますし。

松本:たまにマルチ使うと、テープレコーダー巻き戻るのが待ちきれないですよね(笑)。

−−「テープが回っていないと録った気がしない」って世代の人以外はもうマルチはいらないんですかね?

松本:いや、音質的にはマルチを使った方が全然音はいいと思うんですけどね。ProToolsの簡便性とか、便利なところがあるでしょう?あと予算とかを考えちゃうと、そっちへ流れちゃうと思いますけどね。

−−そこまでの差はない?

松本:いや、音的には(ProToolsは)ものすごく下がると思います。出来上がった作品を聞き比べると。ハウス・ミュージックみたいな音楽はそんなに差があるとは思えないし、かえってProToolsみたいなものの方がいいのかもしれないですけどね。

−−松本さんは音楽的には恵まれた環境で育ったと思うんですが、やっぱり絶対音感をお持ちなんですか。

松本:そうですね。子どものときに身につきましたね。

−−絶対音感って、一度ついたら二度と忘れないものなんですか?

松本:6歳までの間に絶対音感がつくんですよ。何かの曲がテレビで流れていると、その場でパッと同じ曲を弾けちゃったりとか。例えば「エアコンの音が“ミ”に聞こえるな」とか。わかるんです

−−わかっちゃうんですか!?

松本:というか、カタカナで聞こえてくるんですよ。

−−ある本で「絶対音感があるときつい面もある」ということを読んだことがあります。全部が音として認識されちゃうんですよね。

松本:そうですねぇ。例えば、こうやって日本語でしゃべっているときに、って言っているときに「日本語でしゃべっているときに」って頭の中に浮かんでいるじゃないですか?あれと同じようなものなんですよ。でも僕なんか絶対音感といってもいい加減なもんだと思うんですけど、ものすごく厳しい耳を持っている人とかは、きついこともあるのかもしれませんけどね。あと「A」って時代ごとに変わってきているんで。「ラ」の音程は僕が子供の頃はもっと低かったんです。今は上がってきているんです。クラシックなんか「4-4-3」とかになっているんですよね。で、ポップスとかレコーディングの世界では「4-4-1」ですけど、クラシックはもっと高いし、子供の頃はたぶんね「4-3-9」とかそういう風だったと思いますよ。だから子供の頃に思いっきり「ラ」の音を覚えさせられて音程を今聞いたらすごく上がっちゃってるわけだから、そこまで厳しいものではないと思うんですよね。

−−サウンド・プロデューサーはピッチに厳しい人なんでしょうね?

松本:そこがわからないとサウンド・プロデューサーっていう仕事自体できないんじゃないでしょうか。ただ、歌っていうのは階段みたいに直線でできあがっているものじゃなくて、曲線のようなものだと思うので。楽器の演奏も全部そういうものなんですよね。だから、基準値に対してかっこよくカーブが描けていれば、そこまでこだわる必要はないんじゃないかな?フレーズを歌う歌心みたいなものの方が大事だったりするので、「音程をきっちりしなきゃ」とか「リズムをきっちり合わせなきゃ」っていうことは、サウンド・プロデューサーとしては初歩的なことだと思います。

BACK
NEXT

INDEX
音楽一家に育った少年時代
内定もらって就職せず〜大学4年の決断
年間100曲を手掛ける売れっ子アレンジャー時代
自分のカタチになるような音楽を作りたい〜叔父・松本英彦の影響
飛躍の「踊る大捜査線」
▼ 音響システムの進化──5.1chシステムの未知なる可能性
日本人ミュージシャンの使命〜世界進出の3本柱


Copyright(C) 1998- F.B.Communications Inc. & Magnet Co.,Ltd. All rights reserved.
Contact info@musicman-net.com with question regarding this site.