第29回 恒川光昭 氏

9.いい作品、いいアーティスト作りが最大のテーマ

恒川光昭10−−今社長として一番大きく変えたいと思われていることはありますか?

恒川:実は今それに向かって毎日いろいろとやってるんですよ。僕が辞めたのが1995年、戻ってきたのが1999年なんですが、この間アーティストが作れてないんですよね。ほとんどいなかったってことかな。もちろんやってたんでしょうけど、なかなか実績が作れなかったんでしょうね。それ以前までは、僕もみんなと一緒にやってましたから。C-C-Bもそうだし、最後の方では広瀬香美ちゃんとか槇原敬之くんとか、デビューからやってますからね。そういうビッグアーティストが作れてない。5年先10年先を見たらそういうアーティストを作っていかないと絶対良くないということで、みんなで一緒にやってるんです。一緒になってやってますから社長業っていう意識はないですね。うちの会社はCEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)、CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)、COO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)というスタイルにしてますから、経営責任者はCEOの会長なんです。会長は会長でちゃんと担務がありますから。日本の会社のようじゃなくて、全体があると同時に担務があってっていう。僕はCOOですから、COOとしての担務は一番のプライオリティになってるんです。

今まで制作は日音の中でやってたんですが、2002年7月1日から分社したんです。(株)日音アーティストという子会社があったので、作家とかエンジニアとかプロデューサーとか、そういったマネージメントをやってる会社なんですね。10名ちょいのスタッフを出向させて日音アーティストがA&R部とマネージメント部ということで、A&R部がアーティストの開発、育成、制作ということをやろうと思います。自分的にはあまり変わらないと思うんだけど、会社の経営的には大きな改革なんですけどね。日音アーティストの社長は前々から徳田(裕彦氏)がやってますから、私が兼務で会長になっているんです。

−−では最後に日音の社長として今後の大きな目標を簡潔にお願いします。

恒川:やはり「良いアーティスト」「良い作品」を作っていくというのが、一番のテーマだと思いますね。

−−もう一度、あの黄金時代を、ってことですか。

恒川:夢をもう一度っていうことではないんですが、やっぱりそれが仕事にとっては不可欠だってことですよね。この仕事にとってはね。

−−ほかの音楽出版社にライバル意識はお持ちですか?例えばフジパシフィックとか…

恒川:それはね、実はあまりないんですねぇ。うらやましく思ったことはいっぱいあるんだけど(笑)。朝妻さん(朝妻一郎氏)の所は、昔からグループ意識が強かったでしょ。ニッポン放送でありフジテレビでありフジサンケイグループとしてのシナジー効果がすごくあったし、トップ経営者がそれをドーンと打ち出しましたからね。だけどウチの方は伝統的に表立って社内外に打ち出すことはなかったんですよね。昔、尾崎紀世彦なんかをやってる頃は、グループとして日音や村上、尾崎を応援しようとか、そういうことではなかったんです。それは非常にパーソンtoパーソンの関係で、この人とこの人とこの人と…っていう風に作っていったっていう。ずっと僕の代までそうでしたね。ドラマの「赤い風船」にしても、C-C-Bにしても、パーソナルな部分での関係でやれてきた仕事だと思いますね。今は十分グループとして徹底しているところがありますけども、当時はTBSで「日音?日音って何だ?」って言われたこともありますからね。それじゃ困るから「名刺にTBSのマークを入れさせてくれ」って言ったこともありますもん。一時入れてましたよ。そういったことではライバル意識じゃないですね。お互いに放送系列の共通の悩みもあるでしょうし、一緒に手を組んでやっていくっていうことも。どっちかっていうとそういう方が多いですよね。

−−業界はわりと横に流れますからね。意外に仲いいですよね。

恒川:そうですよね。良いアーティストで良い音楽を作れば、買ってくれる人は日本中にいるんですよ。こっちを買ったからこっちは買わない、というようなものではありませんから。

−−そうですね。じゃあ今後ともよい作品作りを期待しております。今日はお忙しい中ありがとうございました。m.gif
(インタビュアー:Musicman発行人 屋代卓也/山浦正彦)
---「自分はすばらしい縁とタイミングに恵まれていた」と語る恒川氏ですが、その縁をどう活かすかは、やはり本人の努力と才能次第。「ありがたいことになんでも自分でやらなければならなかった」ということは、やはりそのなかでの苦労や経験がすべて今日の成功へとつながっているのでしょう。次回のMusicman'sリレーは、日音とも深いつながりのある(株)研音代表取締役・児玉英毅氏の登場です。お楽しみに。