株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント
取締役/コーポレイト・エグゼクティブ 盛田昌夫 氏
ブロードバンドの普及がもたらすもの

●そういった状況について、だんだん変わりつつあると思いますが、どの程度手応えを感じていらっしゃいますか。
そうですね、急速にここ1年ぐらいで変わってきてるし、これからはもっと急速に変わっていくでしょうね。インターネットの普及率の伸び方もさることながら、ブロードバンドの環境の伸びはアメリカなんかより日本の方がはるかに高いですよ。韓国ではブロードバンドの利用者が何百万人と言われてますけど、今やそれに迫る勢いで日本は増えてるでしょう。ブロードバンド環境になると何が違うかって、「高速回線」ということよりも「常時接続」になることが大きいんですよ。いつもつなぎっぱなしの環境…

一番便利なのはナップスターだよね。要するにファイルシェア。我々にとっては目の上のたんこぶみたいな、親の敵みたいな存在だけど、でも常時接続っていうのはダーっとファイルを探しに行けるってことでしょ。いちいちダイアルアップしてたらダイアルアップでつながってない人のファイルは探しにいけない。そういう意味ではね、ブロードバンドは「常時接続」の環境にあるということがものすごくインパクトが大きいと思うね。今までみたいにパッケージを買ってもらった時に初めてお金が入って印税分配するという考え方は、そういう環境の中では、すごく説明しにくくなってくるからね。その人からどうやって印税取ろうかっていう話でしょ。売ってないのに、聴く権利に対して、どういう印税をチャージして分配すればいいのか、今までと考え方を変えないとね。レコード会社にとっても大変な時代だけど、アーティストや事務所も、そういう時代の中で権利の分配をどう考えるかっていうのをやっぱりみんなで考えないと。ただ単にナップスターがいけない、何がいけない、ダメだよダメだよって言ったところで、盗む方が買うよりも簡単だったら、絶対みんな盗みますよ。
●(笑)
そうでしょう?今までは、盗んでも捕まるし捕まったら大変だから、だったら買う方が簡単だって言って買ってたわけじゃない。ところがネットの世界になると、盗む方が買うより簡単だから。そうではなくて、むしろそういう環境で権利を守るということは、我々がどういうビジネスモデルを世の中に出して、そのビジネスモデルがどれぐらい受け入れやすいかっていうことにかかってると思うんです。
●その方が前向きですね。
だから、レコード会社や事務所やアーティスト…要するに身内がああでもないこうでもないって言い合ってる場合じゃないですよ。やっぱりアーティストにしてみれば、自分の曲が広くみんなに買ってもらって、お金が入ってきた方がいいわけでしょ。レコード会社だって同じだよね。要するにみんな同じ興味を持ってるんだけど、我々にとっていいビジネスモデルが、必ずしも今の環境に置いてユーザーに受け入れられるビジネスモデルではないということなんです。だから、いかに我々のビジネスモデルをユーザーに受け入れられるモデルに近づけられるかっていうところが大事。どんなに著作権法の技術を駆使しまくって、ガチガチにして、お金を取りますって言ってもダメだよ。いくらそうやったってそのビジネスモデルをユーザーが受け入れなかったら誰もそんなことしませんよ。そうでしょ?
●CCCDの問題も含めて、著作権を扱う側とユーザーの双方が納得するような方法を考える必要があるということですね。その辺のルール作りがまず今後の大きな課題だと思いますが、何か具体的なルール作りの目標はお持ちなんでしょうか。
いやあ、それがあったらもうやってるよね(笑)。難しいよ、とっても。このルール作りは、レコードメーカーだけじゃできないし、レコードメーカーとユーザーの間だけでもできないんですよ。これは、コンシューマ機器を作るメーカーさん、それからコンピュータを作ってる業界も関わってくる。ソフト側から見るとハードって一言だけど、コンシューマ機器とコンピュータ機器って業界が全く違うんだよね。今まではCDやレコードを作るだけなら、わりとコンシューマ機器のメーカーと音楽業界が話をしてればできあがったけど、今やコンピュータ機器がコンシューマ機器の役目をしますからね。CDがかかったりDVDが見られたり。そうすると、コンピュータ業界の人達も一緒にテーブルについて話をすることをやっていかないと、抜け穴ができちゃうし。その抜け穴を閉じるために、いろんな技術を放り込んだり、一緒に成長しようと思ってるコンシューマメーカーとの矛盾が出ちゃうわけでしょ。だからやっぱりね、ハードの世界もソフトの世界も、著作物を守るという中で、どういう考え方をユーザーに受け入れてもらうか話合うことをね、まずみんなでやらないと。それぞれの人がテーブルに着かないかぎり、どこにも落としどころがないと僕は思ってるんです。
●じゃあその話についてはまだこれからという感じなんですね。 
PC業界はPC業界で「ファイルを作ってファイルを飛ばすことは、パソコン業界では当たり前なんだから関係ないよ」って考えることもあるわけでしょう…たしかにその通りなんだけどね…。そのうちアーティストが「パッケージはもういい。ライブでしかやらない」って言うかもしれない。だって音楽なんて昔は全部ライブだったんですから。モーツアルトの頃なんて録音機がなかったでしょう。そうするとまた100年や200年前に戻っちゃう。エジソンが蓄音機を作ったからこういう風になっちゃっただけで、その前に戻れば音楽は全部ライブだったんだからね。「それでいいよ」って…そういうわけにはいかないでしょ。
●その辺をまとめる役割が盛田さんに期待されてるんでしょうね。
どうかな、期待なんかしてないと思うけどね(笑)

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