作曲家
宮川 泰 氏
名プロデューサー、ミュージシャン・渡辺晋

●ご自身のお話に戻りますと、ピーナッツを育てたあとは、クレイジーキャッツですよね。映画の仕事が増えたってことですね。
うん、そうそう、映画の仕事が増えたね。ピーナッツが映画に出てたころも書いたことあるけど。クレイジーキャッツでは萩原哲晶さんていうすごい人がいて…
●僕もすごいファンなんですよ。萩原哲昌さんはクレージーキャッツの作曲家としてとても有名ですが、そのほかであんまりお名前を見ませんよね。
あの人はちゃんと勉強してきた人でね、大先輩ですよ。スーダラ節を最初に作ったんだけど、それがものすごくあたっちゃって、それで何十曲も作らされて、みんな似たり寄ったりなんだけども、1曲として同じ曲がない。
●斬新なのが多いですよね。
うん、斬新で、見事な作りですよね。
●でもほかの人の作品でお名前見かけませんよね。
渡辺プロでね、次から次へとどんどん書かされてね…僕もアレンジを担当するようになったから曲の会合に出てたんだけど、詞は青島(幸男)さんでしょ。青島さんが書いてきて渡辺晋さんの家でミーティングするの。もちろん植木(等)さんも来て、今度歌うのはどんなのかな、って興味持ってるでしょ。そうすると青島さんが詞を読んで聞かせる。あの人が読むとおかしいのよ。「ちょいと1杯のつもりで飲んで〜」って飲んでる格好するわけ。ムチャクチャおかしいのよ。それを渡辺晋社長がね、「うん、そこわかるけどね、ちょっとしつこいからもう少し変えてね」とか言ってね。それで萩原さんがメロディー作ってくるとA、B、Cと3つぐらい作ってくるの。それを歌いながら「そこもうちょっと下世話にできないかな」とか社長たちにいろいろ言われながら作ってたのよ。
●ナベ晋さんがプロデューサーだったんですね。
うん、あの人はすごい先頭に立ってやってたよ。それは僕の曲でもみんなそうですよ。渡辺晋さんがOK出したらそれでいいの。すごかったよ。

自分のことで話すると、「恋のバカンス」を書いたときもね、できました、じゃあ弾いて見ろって言われて、伴奏をロッカバラードのスローの伴奏を書いたんですよ。そしたら社長が「宮ちゃんな、それ、あのポール・アンカの作ったあの曲じゃないか」「そうですよ」「そんなの真似しちゃだめだ。自分流のを作れ」って言われちゃって。「俺がいっつも弾いてるように、フォービートのベースに変えて書いて見ろ」って、言われたとおりにやってみたら「あ、こっちのほうが感じでますね」「そうだろ?」
●すごいですねぇ!ナベ晋さんんて、ミュージシャンっていうより、僕らの世代だと「社長!」っていうイメージで、音楽に口出すような感じじゃないと思ってたんですけど、思い違いだったんですね。
そう、すごいですよ。だからちゃんと僕は言うこと聞きましたよ。そういうの何曲もありましたよ。
●じゃあみんなナベ晋さんの指揮の元に集まってやってたんですね。
うん、まあでもそれもいいときと悪いときとあるんだよ。いっつもいいとは限らないけどね(笑)。そういうときは「社長でも僕はこう思うんだけど」って言うと「ん?じゃあお前やってみるか?責任とれるか?」「いや、じゃあ社長の言うとおりにやります…」ってこともあったし。そういう雰囲気もあったからね。
●今日のテーマは「今だから言えること」ですから(笑)
社長の言うとおりにやって失敗したこともあったと思うよ。僕は覚えてないけどね。…今だから言えるかどうかわからないけど、当時の社員で僕らがすごくいいディレクターやマネージャーだなって思っていた人がいっぱいいたのに、一人ずつ抜けて行っちゃったの。それで自分の会社作ったりしてる。それはほとんど成功してるよ。中にはレコード会社の社長になったヤツもいるでしょう。
●人材の宝庫ですよね。いい学校だったんでしょうね。
社長は早くに亡くなったでしょう。だからね、非常にくやしかったでしょうね。社長はえらかったよ、自分が病気でもうだめだってわかっていてもね、いつもニコニコして、病気だってところを見せなかったね。あの人はほんとうに武士の鑑だね。だけどどれがヒットしてどれがヒットしないかっていうのはまた別の問題だからね。最初のうちはよかったけど、そのうちだんだん自由に作るっていうのができなくなっていったところがあったかもしれないね。それでスタッフもどんどんやめていって、社長は辞めるな、って言わずに、「ああそうか、じゃあ頑張ってこい」って外に出してくれるでしょ。それでみんなあんなに成功しちゃってさ…それでも渡辺プロの同窓会って言うとみんな集まってきて「あのころはよかったよなあ」「よかったってお前出たくせに(笑)」なんてね。いいヤツばっかりでね。
●ナベプロ出身者はすごい人がたくさんいますよね。
うん、いいヤツ、頭のよく切れるヤツが多いですよ。

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