| あと絵が見えるのはね、「いとしのエリー」の桑田佳祐ね。僕の作曲の本にも書いてあるんだけど、「いとしのエリー」を聞いてるとどうしても夕焼けの空が頭に映るのよ。エリーは桑田君の妹でね、片っぽ足が不自由なの。その妹を桑田君がほんとにかわいがって、お兄さんが夕焼けの土手の草っ原の上で足の悪い妹を横に座らせて聞かせてる…… |
| ●それは勝手な思いこみなんですね(笑)。 |
| そう、そういう思いこみの絵が頭に映ってくるんですよ。その絵を描きたいんだよ俺は。あの曲を聞くたんびに、どうしてもその絵が見えてくる。そういう曲何曲かありますよ。不思議と必ずその絵が映ってくるっていう曲。 |
| ●それは先生の中では名曲ということになるんですよね。
そういえば桑田さんとお仕事なさってるんですよね(「心を込めて花束を」/1996年『Young Love』収録)。 |
| うん、1曲だけね、僕がストリングスのアレンジが得意だってことで、頼まれたんですよ。桑田さんのところにわざわざ会いに行ってね、桑田さんが一生懸命メロディーを歌ってくれるんですよ。詞はまだできてないの。それでメロディーだけを聴いて俺はアレンジして…もう夢中になって書いたんだけど、桑田さんはものすごく喜んでくれてね…これからもよろしく、って言われてその気になっちゃったけどさ、僕はほんと感動しましたよ。桑田佳祐さんがわざわざその1曲のために僕に会ってくれて… |
| ●それはまた先生は謙虚すぎますよ(笑)。逆に桑田さんはとても先生を尊敬してるんですよ。 |
| いやいやほんと、ものすごい尊敬してたからね。そのレコード(『Young Love』)ではね、1曲だけなのよ、弦がびっちり使われてるのはね。 |
| ●まさに宮川音楽なわけですね。 |
| そう、だからね、あの人にはすごく感謝してるのよ。 |
| ●彼も希代の作曲家ですよね。 |
| だって「TSUNAMI」だってさ、去年だっけ、流行ったの?ずっとあの人は何十年も歌作ってきてね、あんな難しい上がり下がりの激しい、細やかな曲、ああいう曲をまた書けるのかっていうがすごいんだよね。 |
| ●今かかってる曲(「白い恋人達」)もすごいですよね。 |
| ああ、あれね!どうしてあんな風なことができるんだろう桑田君って。 |
| ●この期に及んで何であんな曲が書けるんだろうって(笑)。 |
| ほんとに。いやぁ、僕最近わかったんだけどね、僕は今までパターン通りにやりすぎたのよ。アメリカのポップス、アメリカの歌謡曲ってみんなパターンなのよ。AABA型なの。最初の基礎的なところがね。 |
| ●確かに昔の曲はみんなそういうところがはっきりしてますよね。 |
| Aメロが8小節あって、8小節で終わるのもあるけどだいたいもう一回繰り返す。そうすると今度はサビがあってがらっと変わって、最後の8つはまたAメロで。そうするとカッコがつくんですよ。 |
| ●昔はそうでしたけど、今はA→B→C→D→E、だめ押しでラストエンディングがF、っていう感じで複雑ですよね。 |
| そうだね。今はもうAABA型っていうのは絶対、ほとんどと言っていいほどないですよね。それですむようなメロディーはないのよ、もう。出尽くしちゃってね。だから思いがけなくどんでん返しありのメロディーになるわけでしょう。それで続いてるんだと思いますよ。僕はそういう勉強を全くしてないからね。自分が今まで作ったやつを見ると、みんなAABA型なの。ああこれじゃあダメだなと思ったよ。 |
| ●でもそれだけ中身のメロディーがいいとそれが成り立つんでしょうけど、今はもう出尽くしちゃってるわけだから。 |
| それは出尽くしますよ。「ドレミファソラシド」の7つの音階に、中に半音入れたって12音でしょう。12音階の音楽なんてもう決まってるじゃない。何十年もやってるんだからね。 |
| ●昔はAメロとBメロを譜面で入れ替えてみるとかありましたけど、今は実際に編集で簡単にできちゃいますからね。 |