第139回 須藤 晃 氏 音楽プロデューサー

8. 限界を設けず「音楽の可能性」を追求して欲しい


−− 尾崎豊の成功から須藤さんにも色々仕事が来るようになったんじゃないですか?

須藤:今もそうですけど、尾崎さんみたいなのが売れてしまうと「尾崎豊みたいにしてくれ」とかね。それはなるわけがないですよね。尾崎さんと同じくらいの才能や資質を持っている人がいたとして、そのパターンの中にあてはめたって尾崎さんみたいになるわけじゃないじゃないですか。

−− 「〜みたいにしてください」って、音楽業界に良くある話ですよね。

須藤:そう。尾崎さん自身はどんどん売れるにしたがって、カリスマみたいに扱われていったんですが、彼は内省的なタイプだったのでそれがとても辛かったみたいです。彼はライブで「歌うな! 俺の曲だ!」って言ったんですよね。それはもう普通じゃないですし、そういう追いつめられ方をしたんですね。結局、覚せい剤で捕まって、最後はニコニコしながら歌うことで解放されていたと思いますけど、ほとんど事故のように亡くなってしまったので…。

でも、生きていて欲しかったです。今だったらもっと良い関係になれているだろうな、色んな話ができたんだろうなと思うと本当に残念です。自分のプロデューサーとしての人生は尾崎さんなしでは語れないです。新潮社の太宰治の担当編集者は、太宰の死後、作家につくことができなくなったという話を聞いて、自分はそれじゃダメだなって思ったんですよね。音楽というものが人に与える影響、彼がつくったものが人に与えた影響って凄いじゃないですか。やっぱりそれを信じて作品を守っていかなきゃダメだなって。今の高校生とか大学生とかがYou Tubeとかで尾崎さんを見て、「かっこいいよね」「本当にあんな人がいたんだ」って言っているんですよ。

−− 須藤さんは手掛けるアーティストをどう選んでいるんですか?

須藤:最近やっている石崎ひゅーいは、母親がデビッド・ボウイのファンで、その母親に対して歌いたいから歌うって聞いて、僕はやろうと思ったんですね。音楽というものをいかなるモチベーションでやり続けようとしているのか、その人間性、人間力にみたいなところに僕は興味があって、自分が興味のある人としか仕事はやらないです。ただ「有名になりたい」「お金持ちになりたい」という人たちとは仕事してこなかったですね。

−− アーティストとはその「音楽に対するモチベーション」みたいな話を最初に話し込むんですか?

須藤:そうですね。僕は制作に入るまでがすごく長くて、その間はとことん話をします。なんで音楽をやるんだ、なんで音楽じゃなきゃダメなんだっていうことを延々。辟易してギブアップする人もいますね。僕は来る人は拒まないですけど、去る人も絶対追わないんですよ。別に僕じゃない人とやればいいじゃないですか。コーチとして監督として、それに答えられない人はやっぱりできないんです。それで40年もやってきたんだから、それでいいんじゃないかなって思うんですよね。こっちにも選ぶ権利はありますし、瞬時の判断で「乗らない」と思ったら、そのアーティストはやらないほうがいいんですよ。仲良いアーティストから意見も求められたり、アドバイスもしますけど、「じゃあ一緒にやりましょう」とならないケースも多いです。でも、それでいいと思うんですよね。

−− 中途半端にはやれない?

須藤:今、玉置さんとメインでやっていますけど、彼と僕は凄い関係ですよ。本当に真剣勝負です。例えば、夫婦は夫婦喧嘩をするたびに別れていたらキリがないでしょう? それと同じなんですよ。この前、小林武史くんとちょっと話したんですよ。小林くんは素晴らしいプロデューサーですけど、やっぱり僕と違うなって思います。彼のように華麗にプロデュースできたら最高ですが、僕はもっと不器用なんですよ。

−− 須藤さんは生涯現役というお気持ちなんですか?

須藤:どうでしょうね。でも、倉本聰先生は75歳を過ぎても大酒飲んでいますし、酒井政利さんは81歳でバリバリですからね。めちゃくちゃお元気で。ですから、僕も75歳までは仕事しているんだろうなって気はしています。体もどこも悪いところがないですしね。

−− 最後に、音楽業界を担う若い人たちにメッセージをお願いします。

須藤:音楽に限らず、エンターテイメントがなくなることはないです。そのエンターテイメントの中でも音楽は歴史の浅いものですし、音楽に限界があると思わないで、その可能性を追求してもらいたいですね。最近「音楽業界・レコード業界は終わってしまった」みたいな雰囲気がありますが、僕はまだまだ可能性があると思いますし、若い人達が切り開いていってくれるんじゃないかなと期待しています。

−− 本日はお忙しい中、ありがとうございました。須藤さんの益々のご活躍をお祈りしております。m.gif

須藤 晃 氏 音楽プロデューサー