第115回 吉田 真佐男 氏

7. ケツメイシを皮切りにマネージメント開始


−−マネージメントするようになったきっかけは何だったんですか?

吉田:「Break Out」のときに全国から集めたアーティストたちがブレイクしちゃったことが一つのきっかけになっていますね。「Break Out」や「FUTURE TRACKS」をやっているときに色々なアーティストを一旦我社がハンドリングするんですが、その後はレコード会社さんや事務所さんに預けていたんですよ。つまり、我社はアーティストとレコード会社さん、事務所さんとの仲介役をしていただけなんですね。

ただ、ケツメイシだけは若干違っていて、彼らには2社くらい事務所を紹介したんですが、彼らの考え方が事務所に合わなかったんです。それで「ダメでした」とか言って帰ってきてしまって(笑)、しばらくは名前だけ「トイズファクトリー宣伝部預かり」にしていたんですが、「これはどこを紹介してもダメかな」と思って、「しょうがないからウチにいるか?」と話したら「いいですよ」って、そこからマネージメントが始まったんです。でも、ケツメイシは未だに我社の契約社員、という立場です。

−−そういういきさつだったんですか。

吉田:同時に「著作権と隣接権のビジネスはそろそろどうなんだろうな」という気分もあったんです。「これからは肖像権ビジネスに着手していかないと」と、それでアーティストマネージメントビジネスを本格的に始めたんです。音楽出版社から「トータル・ミュージック・カンパニー」への移行ですね。幸運にもケツメイシ、HY、サスケ、湘南乃風と次々に売れてしまったのです。

−−今後もアーティストを増やしていく予定なんですか?

吉田:どこまでアーティストを増やすかというのは微妙な問題で、あまり数は増やさずに効率的にヒットアーティストを創っていきたいのです。マネージメントを始めたことは今になると功を奏しています。我社はずっとアーティスト発掘のピックアップインフラを作っていたので、そういう経験値が先にあったからこそマネージメントもスムーズにいったんだろうと思いますね。

−−そして、然るべきときに然るべきアーティストと出会えたと。

吉田:そうですね。でも、常に世の中の動向がどう変わっていくのかを考え、そこに適したモノを提供することが大事で「風と会話する」「風を読む」ですね。更に大事なのは、この業界って自分が何を考えるかも重要なんですが、出会う人によりますよね。僕はたまたまいい人たちに出会えただけだと思うんですよ。この業界のビジネスのほとんどは個人と個人から始まり、それが運良く企業ベースで成り立っていくと結果大きな成果となるのですが、非常に難しい業界ですよね。

−−今、音楽業界の様々な問題点が指摘されていますが、テレビ朝日ミュージックはどこへ向かおうとしているんでしょうか?

吉田:パッケージが売れない、配信が落ちないと言っても、まずは核となるいい作品=「人に好まれる作品」がないと始まらないので、いい作品を徹底的に作らなくてはいけないというのがまず一つ。二つ目は、いい作品ができたら周辺権利をいかに最大化してビジネスにするかですね。その中でも肖像権が重要なポイントになっていると思っています。

−−「いい作品を作る」というのは皆さんおっしゃいますが、なかなか大変ですよね。

吉田:この業界って昔から「これいいんだよ!」と言って発売したら全然売れないみたいなことがすごく多くて、それって「感性ビジネス」だと思うんですよ。「これいいんだよ!」と思っているのは、あなただけでしょう? と(笑)。今はもう全てマーケティングの上に立ったモノ創り、計算の上に立った商品創りが必要です。

今、我社の社員には「他の産業界を勉強しなさい」と言っているんです。例えば、流通業で言うとAEONって業界ダントツ一位で、中身を見てみると「トップバリュー」というプライベートブランドの売上がものすごく伸びているんです。つまり、単に物を売っていた人がお客さんの意見を聞きながら、お客さんが欲している物を作ったら売れちゃった、儲かった、ですね。これはセブンイレブンの「セブンプレミアム」、ローソンの「ローソンセレクト」もそうで、勝っているところは全部プライベートブランドが要因なんです。つまりマーケティングをするということと、市場を創るということが一緒にできてしまっているんですね。

そういった流通業の徹底的にお客さんのニーズを考えて作った商品が売れている状況を見ると、僕らも徹底的にマーケティングをして商品の開発をするべきなんです。自分たちが何を作りたいかじゃなくて、お客さんは何を求めているか、何を作ってくれと言っているか、ということを徹底的に考えないとダメだと思っています。

−−先ほどの「Break Out」の話とも通じるものがありますね。

吉田:あと、コスト管理も重要になっています。例えば、自動車って約4万点の部品で構成されているので、部品一個一個のコストと製品クオリティの管理が徹底されているわけです。また、アベノミクスが顕著にPRされる前、自動車業界は車の生産拠点を北米から東南アジアに移して、そこから北米へ輸出しようとしていた、アベノミクスで景気が良くなったので、北米で作って早く提供できるようにした方がいいと方向転換したんですが、この切り替えにたった数ヶ月しかかからない。あんな巨大企業なのに。でも、僕たちの業界は何人何十人の単位でやっているのに、3ヶ月かかっても目的のモノが作れないときがある。ですから、その自動車業界のような小回りとコスト管理の徹底は見習わなくては、と思います。これが二つ目です。

三つ目はサービス業としての顧客満足度を徹底的に考えたホスピタリティは、ものすごく重要だと思っています。流通業の徹底的にマーケティングをした商品開発能力、製造業のコスト管理、そしてサービス業のホスタピリティを追求していく。これをやらない限り、この業界はもうダメだと思います。ですから、我社ではその教育をこの2年間ずっとしています。ちなみに今月はオリエンタルランドへ社員を連れて行きます。ホスピタリティ教育を受けます。オリエンタルランドは顧客満足度調査で、毎年一位です。一度だけ劇団四季に一位をとられましたが、それ以外はずっと一位。ですから「オリエンタルランドで教育してもらうことは価値がある」と。