第102回 栗花落 光 氏

5. FM802からヒットを出す!〜「ヘビーローテーション」へのこだわり

株式会社FM802 代表取締役専務 栗花落光氏 −−「ヘビーローテーション」が実を結んだ最初の曲は何だったんですか?

栗花落:J-WALK『何も言えなくて…夏』ですね。この曲が最初にFM802からヒットしたということを正式に認めてもらった曲です。全国的にヒットしたのがリリースしてから1年後くらいなんですよ。最初は大阪だけではやり始めて、大阪のシェアが全国シェアの中の75パーセントくらいあったんですね。もともと大阪のシェアというのは17〜18パーセントなんです。それが75パーセントということは最初は大阪でしか売れてなかったわけです。それが徐々に全国へ広がっていって、最終的にその75パーセントが30〜20パーセントにシェアが落ちたときに全国でヒットしたんですよ。そこまでに1年かかりました。また、KANの『愛は勝つ』や槇原敬之の『北風』、Mr.Childrenのデビュー曲『君がいた夏』もそうですね。

 やはりラジオから、FM802からヒットしたということが確認できないと意味がないですからね。例えば、テレビの大型タイアップにのると、それで売れたと言われますから、当時は大型のCMタイアップやドラマタイアップの付いている曲は一切「ヘビーローテーション」対象外にしようということにしました。

−−そうなると必然的に新人に目をつけないといけないですね。

栗花落:基本的には新人です。そういう素材でブレイクしたときに初めて「大阪のラジオからヒットした」と言ってもらえるんです。ただ最初の頃はどういうやり方でやっていけばいいのか暗中模索でした。元々「ヘビーローテーション」というのはアメリカのラジオ局が取っていた手法で、曲を絞り込んでヒットさせようというのではなくて、売れそうな、売れてきている、かなりリアクションが出ているような曲をヘビーなローテーションでかけようというものだったんです。それを取り入れて、ウチの場合はミュージックステーションとしての影響力、存在感を示すためにこれをやってヒットさせようと思ったんです。

−−他にも矢井田瞳やLOVE PSYCHEDELICO、ウルフルズ、DREAMS COME TRUE、MY LITTLE LOVER、ゆず、スピッツなんかもそうなんですね。

栗花落:スピッツなんかは、シングル2作目のB面をヘビーローテーションにしたんですよ。『ニノウデの世界』という曲ですが、そのときはあまりヒットしなかったです。それから2年半後くらいにもう1回、2回目のヘビーローテーションをしたんですよね。

−−2年半後にもう一度ですか。すごいですね。

栗花落:2回やっているのは何人かいるんですよ(笑)。KANもそうですし。

−−やっぱりそのアーティストを信じているんですね。

栗花落:はい。どこかでこだわっていて。もちろん売れなかった人はいますよ。でも、スピッツはその後の『裸のままで』の2回目のヘビーローテーションのときからブレイクしだして、それはデビューから4年くらい経っているんです。その曲だけじゃなくてアーティストをブレイクさせることに意味があると思っているので、ライブがしっかりしているとか、アルバムをちゃんと作れるとか、そういうアーティストを選んで長期のタームで応援させて頂くようにしてきたんです。

−−尊敬すべき姿勢だと思います。具体的にヘビーローテーションの選定はどのようにされているんですか?

栗花落:まず制作会社やDJから毎月、洋楽1曲・邦楽1曲を推薦してもらいます。その中から編成部で決めています。2曲ずつで4曲選んでいた時期もあるんですが、その半年後くらいに今の形に固まって、それから20年間ずっと同じやり方でやっています。

−−それだけの実績を上げたことで、東京や他の地方からFM802のヘビーローテーションに対して熱い視線を感じたりしませんか?

栗花落:最近はCDが売れなくなってきているので、FM802のヘビーローテーションから売れたということがなかなか示せなくなってきています。私は終始3割くらいの打率でヒットに繋がって欲しいという気持ちがあったんですが、最近はなかなか難しいですね。そういった中でも、植村花菜の『トイレの神様』はFM802がかけたところから始まっています。9分の長い曲を朝のDJが初めてフルでかけたんです。この曲にはものすごく反応があって、大ヒットにつながりました。他では阿部真央とかアーティストとしては今すごくブレイクしてきていますが、昔と比べると打率があまり良くない状況になってきているんだと思います。

−−ただ、それは音楽業界全体のことですよね。

栗花落:特にウチの場合「三重苦」と言っているんですが、ジャニーズ、AKB、韓国POP、この3つをあえて外して、今ではほとんどかけていません。ということでなかなか厳しい状況なんですが、先の’96〜’97年の話と一緒で、いつまでも同じ状況が続くわけではないでしょうし、お陰様でこれらをかけないでもレーティングは堅持しているのであまり問題ないのかなと思っています。

−−昨年12月に発表されたFM COCOLOのFM802への事業譲渡というニュースには驚いたんですが、そもそもどういったいきさつだったんですか?

栗花落:もともとFM COCOLOはInterFMと同時期に外国語のFMとして誕生した局なんですが、FM802の子会社で制作を行う「802メディアワークス」という会社が一昨年の4月からFM COCOLOの編成・制作を委託されていたんです。

−−2年前からFM802が制作していたんですか。

栗花落:ええ。90%くらいそうでした。委託を打診されたときに、外国人だけがターゲットですとビジネス的に難しいので、「Over45のためのミュージックステーション」というキャッチフレーズに代えて、リボーンさせて頂けるのであればと要望を出したんです。そのとき、ちょうどFM802が開局から20年経ったころですから、FM802のリスナーもDJもスタッフも全部20歳年をとっていたんですね。ですから18歳の感性で若い人をターゲットにするミュージックステーションというコンセプトだけでは難しくなってきている時期でもあったので、もしFM COCOLOがOver45ということであれば、DJも自然にそちらへ移行できますし、Over45なリスナーもこちらを聴いて下さい、20年前のFM802の開局当初のイメージがそのままありますからと。

−−それは面白い試みですね(笑)。

栗花落:今のFM COCOLOでしたら「FM802の選曲がキツくなってきたな」という方にも聴いてもらえます。また、ウチのメインDJも何人か移行して、そっちでやっているんですよ。東京にもそういう局ができると面白いなと思っているんですよね。

−−その編成・制作の委託を経ての事業統合なんですね。

栗花落:そうです。経営も含めて全て事業譲渡したいという話がありまして、昨年の12月に発表しまして、今年の4月からはFM802が日本で初めてラジオ2波をやることになりました。