プロデューサー/ミュージシャン
ホッピー神山 氏
ミュージシャン兼アメリカ担当プロモーター、ホッピー

●何度もアメリカの音楽業界の現場を踏まれてると思うんですが?
アメリカの場合は国が大きいので州ごと町ごとっていう単位の音楽の在り方があります。例えばニューヨークで売れるものがロスで売れるかって言ったらそうでもないし、西海岸、東海岸っていう大都市にある音楽っていうものがミッドウエストって呼ばれる真ん中のあたりで売れるかって言ったら全く売れないわけですよ、やっぱりミッドウエストではカントリー&ウエスタン一色で、それしかないんですよ。
●国が違う様なもんですよね。
そう。特にテキサスなんかは大きい一つの国ですから、他の州と相容れない考え方とか人間性があって、まだ開拓精神があっていわゆる「白人以外は敵だ」って言って銃をバンバンやるところですから (笑)、またメキシカンがすごく多いですから、普段我々が考えるアメリカとは違う像がありますよね。だから日本みたいに東京から発信した情報がその日のうちに日本中の田舎まで網羅して、テレビを見た人間が翌日にCD屋に行くって事は有り得ないんですよね。要は情報源とすると大きすぎて、幾つかのメジャー雑誌っていうのもありますけど、ラジオにしても国営放送や全国ネットはありますけど、ほとんどが地域ごとのラジオで。
●ローカルメディアですね。
ローカルのほとんどがカレッジラジオとコミュニティーラジオで、構成されてるんですよ。しかもスポンサーの息のかからないDJが自分の判断で好き勝手に流せる。だから日本みたいにスポンサーが全て曲を決めるなんて事は有り得ないですから。そういう事で言うと、リスナーが良いと思えるようなものとか音楽がわかってる人間が良い音楽を電波に乗せられるっていう。情報源とするとそれしかない。あと娯楽もあんまりないですから、ケーブルテレビ以外はラジオ聴くしかないんですよね。だから家にいない時はみんなラジオを聴いている。
●ラジオがしっかり生きているんですね。
それで日本みたいに電化製品がすぐ新しくなったりしないですから。例えばMDなんて未だに全然ないですし、未だに大きいカセットウォークマンを聴いてて、CDウォークマンを聴く人もあんまりいないです。だからラジオを聴いててもメディアとしては全然問題ないっていうか、それで充分。それとラジオ局もいっぱいありますから、このラジオ局を聴いてれば自分は満足なんだっていうチャンネルさえ探せば、それを一日中聴いてれば楽しいわけですよ。コマーシャルは無いは、DJのしゃべりもちょっとしかなくて、ほとんど曲が流れてて、ニューウェーブかかってるチャンネルだったら一日中ニューウェーブかかってて。自分がCD買うより聴いてた方が楽しいぐらいで。それを聴いてる人間がそこから情報を知って、CD屋に行ったり、もちろんライブに足を運ぶって事もありますから、雑誌の告知よりは非常に強力ですね。DJが「良い」って言ってかけたものが地域的なヒットに繋がる。その地域的なヒットが他の地域とリンクした場合は全国的なヒットになる。だから、なぜグラミーを取ったかわからないBECKみたいなものが全国ネットで広がったのは地域ごとに同じ現象が起きてそれがリンクした結果だと思うんですよ。
●向こうではPUGSとしてやられたんですか?
PUGSでもやってますし、ビジネスとして関わってるインディーのバンドも私がオーガナイズしてラジオ局と雑誌とパブシスト( 媒体に対してプレゼンテーション・プロモーションする人達)とやりとりして。カレッジラジオでヒットが生まれてくるのは間違いないので、どのラジオ局でも新人バンドとかインディー、メジャーを問わずCDが送られてくるわけですよ。そんなものは全部聴けないですから、そこをどうやって選ぶかっていうとほとんど個人的なコネクションとかになるので、私は個人的にDJと仲良くしてDJ名指しでどんどん送ったり、コンタクトとったり。
●インディーズの数もラジオ局の数もすごいわけだし、大変ですよね。
ニューアルバムが出た時にプロモーションで配る枚数は最低200枚ですよね。それで200ぐらいを網羅すればめぼしいところは全部行く。500ならほとんど網羅出来る。
●全米ですか?
ええ、ロック、ポップスかけるところは。
●手慣れてる人がやってもすごくハードですよね。
何百って規模になるとパブリシストって規模じゃないと出来ないですね。影響力のあるカレッジラジオのステーションもあるんですよ。そこでかかったものはすごく信用があって他のカレッジラジオに飛び火する事がある。そういうキーステーションになってるようなところを攻めていけばそこから枝分かれしていくのは間違いないのでその中でも一番面白い番組作ってる人間には個人的になるべく情報を流すようにしてるんですよ。
●ミュージシャンの傍らそのへんの事をやるのが大変ですよね。
でもこちらから行動を起こさない限りは向こうは何もわからないですから、お金があれば、プロフェッショナルなパブリシストやそういう人材を使いますけど、お金が無い状態では心意気と忍耐しかないんですよ。
●でも、アメリカの音楽の育ち方には真っ当さがありますよね。
そうですね、新しいものが生まれてくる土壌の中にはその真っ当さはあります。ただ、それを越えたところのビッグビジネスのところは日本以上に厳しい。日本ではなあなあで済むところが済まないようなビッグビジネスの領域がある。アメリカ人でも難しいと思いますが、私なんかメガヒットで売れてるような部分には全く入り込めない。

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