コンポーザー/プロデューサー/ミュージシャン
佐久間正英 氏
秘技!素人耳の会得

たぶん、どちらが良いかって時の決断がものすごく早いんだと思います。

そう。それでこれではアカンと思って途中で出て。もう疲れちゃって (笑) これはやばいんじゃないかと思って、真剣に音楽を辞めた方が良いんじゃないかなと思って。その頃にそれから逃れる方策として、きっかけはなんだったかよく覚えてないんですけど、突然、全く素人耳で音楽を聴く方法を会得したんですよ (笑)
●その方法は思い出せないんですか?
きっかけはね。意図的に始めたのかもしれないんだけど…。あぁ、ちょっと覚えてるのが、フリオ・イグレシアスかなんかを家で聴いてて、音もへったくれもなく、素朴に良かったんですね。全然普段聴くようなジャンルじゃないやつが。それ以降スタジオでミックス・チェックや何かの時がすごい楽になって。それまでは重箱の隅をつつくような聴き方になっちゃてたんで。
●良かったですね (笑)
素人判断。バック・トウ・素人みたいな (笑)
●素人は理屈じゃないけど、わかってますよね。「なんか違う」とか (笑)
「なんだかわかんないけど好きじゃない」とか (笑) そういう見方をしますよね。
●「なんかちょっといまいちノれない」とか。実際ズレてたりするんですよね(笑)
「なんか楽しくない」とかそういう表現で (笑) それ以降エンジニアの人に対して僕は困った人になったと思いますね(笑) それまでは何とかの何とかがどうのこうのでとか言ってましたから。
●さっきのリズムの話ですけど、ピッチの方も相当シビアに?
でも、ピッチは三味線の影響で逆に救われてる部分ありますね。
●三味線はピッチ正確なんですか?
正確ですけど、洋楽のピッチと違うんで…。良い意味の曖昧さ。
●最近みんな使ってると言われてるオート・チューンってあるじゃないですか、あれについてどう思われますか?
良い場合とダメな場合ありますね。もちろん上手く使えば効果的だし、効率的に良い表現をしてるテークを生かせるっていうメーカーの宣伝文句みたいな利点があるのは確かだけど、それと同時にどうしても何かが無くなりますね。っていうのは例えば音質面だけで考えても、ソロで切り換えて比べてわからなくても、オケ中で実際乗せてる時に何かが希薄になりますね。僕の場合一瞬とか一文字だけそれを通したやつにしたりとか、割とそういうやつにしますね。
●ニュアンス殺しちゃったらおしまいですものね。
あとはハーモナイザーで昔ながらに追いかけていった方がもうちょっと自然にはなるかな?僕はハーモナイザーでピッチベンドして追いかけるという荒技が上手なもんで (笑)
●色々制作の要素があると思うんですけど、はじめに曲ありきからマスタリングまで。その中でわりかし重視している要素とかあるんでしょうか?
全部重視してますよ。結局、良い曲があって、良い歌詞があって、良い歌があって、良い演奏があって、良い楽器使うから良い音が出て、良いエンジニア使うから良い音になって、良いパワーが出て、良いスタジオでないとそれは出来ないし、良いマスタリングでないと良い結果にならない。ただその中で言うとマスタリングに関してはなんとなく世の中過剰に評価してるというか、気にしすぎてるという気はしますね。ミックスした段階でそのままでも…。要するに、昔のアナログのマスタリングと今は意味が全然違っちゃってますから。あんまり意識しすぎたり、あるいはマスタリングに過度の期待をしすぎてマスタリングでどうにかなると思っちゃったりとか、何か人の話を聞くと極端な感じを受けますね。
●マスタリングには立ち会われるんですか?
僕は行かないですね。というか、行ってそこでの違いをわかる様になりたくないっていう。さっき言ったように素人耳でいたいから。素人耳で行ってそこで大きな違いがわかるとしたら、素人耳でわかるようなマスタリングをしたらいけないなと思うんですね。
●達人の耳と素人耳の両方を持つ事が出来たからバランス良くなったんですね。
随分楽になりましたね、それがなければこんな仕事量出来ない気がしますね。仕事中にボーっとした人になってられますからね (笑) 詰めなきゃ直らない時だけそうやって、例えばボーカルのディレクションやなんかとか。だいたい自分でやるんですけど。そういう時だけそういう耳で聴いて、一端曲の終わりまで作り終えて頭まで戻して、戻してる間に素人耳に頭の中を切り替えて (笑)、それでボーっと聴いて。それで気になる所があれば止めるし、気にならなきゃ実際にはピッチ越えてようが、リズムズレてようが…。
●気になるところだけ玄人になれて後は一音楽ファンとして聴けるわけですね。
●佐久間さんへの仕事依頼の仕方っていうのはどういったものが多いんでしょうか?
最近は「こういう風にしてくれ」とかはほとんどないですね。「何とかして下さい」っていうのはありますけど (笑) 昔一番多かったのは、BOOWYやった後ぐらいの時代のビートロックっていうかビートバンド物の時は「BOOWYみたくして下さい」っていう直接的な言い方はありましたけど (笑) 「じゃあ、氷室君と布袋君呼んで下さい」みたいな (笑)

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