株式会社テイチクエンタテインメント
代表取締役社長 飯田久彦 氏
商品ではあっても中身はマインド

●会社の態度は手のひらを返したように変わりましたか。
いや、でも宣伝部長とか偉い人がね「俺はこんなのは売れるとは思わなかった」とかね、「こんなものを取りやがって」って、怒った事はその宣伝部長も潔く謝ってくれたりしたんですけどね。でも100人中95人は「売れない」って言ってましたから。関係ないけど、そういうのって多いですよ。半分以上ありますよ。スターになってる人ほとんど、例えばサザンオールスターズだってデビュ−の時は同じような記憶をしています。
●最初のジャケットって顔写真も出てない。
そんなもんですよ。でも誰かの信念があったんですよ。
●担当者の信念は強いと。
信念ですよ。そういうものが大きくなる。それが良い悪いっていうより、スタッフが責任と信念持ってやるっていうのはすごく大事ですし、僕はビクター20数年いましたけど、移籍とかあんまりなかったでしょ。
●そう言えばビクターのアーティストは安定してますね。
いや、安定してるわけじゃない。苦しい時代もあるんですよ。でも、一発二発売れなかったからって、はいサヨナラって言うような事だったらこの仕事辞めた方がいいよって、僕はここ(テイチク)へ来ても言ってるんです。
●でも今は音楽業界全体がそういう見切りが早くなりましたね。
そうですね。でも、それはね失礼ですよ、人間を扱うのにね。これもいつも言ってるんですが、コップだとか鍋とか茶碗だとか作るんだったらそれでいいけど、人間の場合はそれじゃいけないと思うんです。僕はスタッフになった時にね「歌い手あがり」とか「歌い手くずれ」だとか言われて、いろいろ苦しい思いをしたんですよ。まぁ多くは語りませんけどね(笑) 
●ご自身の経験からくるお言葉なんですね。
ミュージシャンの人達がこういう所で働くってそんなに簡単な事じゃないんです、特に男性がミュージシャンから裏方になった時は、人生賭けてやるわけじゃないですか。それでも上手くいかない率の方が九割以上あるわけですから。でも売れなかったけどお互いにこの仕事やってよかったねって言えるように、これを反省材料にして次のステップへ行けるようじゃないと…。
●途中で辞めたりすると、無念だし、悔しい結果になりますよね。
でもそういうケースの方が圧倒的に多い訳ですから。何かが残る仕事をしないと。恨みつらみでね、人間扱いしないで一発二発やってあんた売れないからもうサヨナラですよって、これはね違うと思うんですよ。やっぱりCDは商品ですけど中身はマインドですから。血の通った感情のある人間がやってる訳ですから。
●社長業でそれを貫き通すのは大変ですよね。
それは大変ですよね。でも、やる気ですよ大事なのは。本当に責任持って出来るのかと、信念持って出来るのかと。それを重視したいですね。
●ビクターからテイチクに来られる時の心境っていうのは?
それはね、色々な思いがあって一口では言えないですよ。
●当然ビクターに対する愛着も強いですよね。
もちろんそうです。僕はあんまり会社変えるの好きじゃないし、アーティストもよっぽどの事がない限り変わっちゃうのは良くないって言ってるし、ビクターでも売り上げがない時にお金はたいてアーティストを獲得する。これもよっぽどの事がない限りはダメだと。もちろんディレクターなりプロデューサーなりがアーティストと一緒に同じレベルとは言わなくても、きちんとクリエイティブな考え方が一致して、よしこれだったら一緒にやってみようっていう以外はね、移籍はまかりならんと。それはアーティストの為にもよくないと。お金で移ったら、お金で獲得したら、必ずまたお金で移られますよって。
●そういうやり方したら、そうなりますよね。
全部が全部それがNGって事ではないんですけど。
●確かにビクターの中でそういう話はあんまり聞かなかったですね。
一からみんな立ち上げてますし。まあ上手くいかなくて移ってった人もたくさんいますけどね。
●ビクターの中に飯田さんの考え方っていうのが行き渡っていたんですね。
僕の考え方はみんな持ってくれてると思います。
●そこは大きいですね。
だから僕はね電気会社から来た人達がよく会議で使うスクラップ&ビルドとかリストラって言葉はね、アーティストに使う言葉ではないと思ってる。
●簡単に使われちゃってますよね。
うん、簡単に使われてますよね。僕は会議で言った事がありますよ。スクラップ&ビルドってのは車とか物だったら良いけど、アーティストがそれを聞いたらどういう思いをするかって、僕一回怒ったことありますよ。
●これは飯田さんがおっしゃると説得力ありますよね。山本譲二がテレビで泣いてました(笑) そういう風に言って頂いて嬉しいって。

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