アップルがネットラジオ参入か、WSJ発表でパンドラ株が急落

先週金曜日(9月7日)、ニューヨーク証券取引所に上場しているパンドラ・メディア株が急落した。昨年(2011年)6月に上場。7月には最高値の20.04ドルをつけたが徐々に下落、最近は10ドル台を低迷していたが、8月に入ると株価は上昇し12ドル台につけていた。しかし金曜日、株価は16.71%も下落し10.47ドルで引けた。

パンドラ・メディアはインターネット・ラジオの「パンドラ」を運営する会社。インターネット・ラジオ・サービスでは一人勝ちをしている。パンドラ・メディアの2012年上半期の決算報告によると、6ヶ月間の売り上げは約146億円(1$80円換算)。広告収入が88%の128億円。有料会員からの会員料が12%の18億円だった。

パンドラに好きなアーティストや好きな音楽ジャンルを設定し、自分のラジオ局を最大100局まで持つことが出来る。設定すれば後はパンドラが勝手に選曲してくれる。この「勝手」というところがミソだ。既存のラジオ局が曲を押しつけてくるのに対して、パンドラは設定しさえすれば自分好みの曲が流れてくる。聴取時間が月間40時間という制約はあるが広告が入るので無料。広告のない高音質のサービスは有料で受けられる。ユニーク・ユーザー数は5000万人を超えるという。

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先週の株価急落の原因は、7日に経済新聞ウォール・ストリート・ジャーナルが、「アップルがパンドラに挑戦するかもしれない」という見出しで、アップルがインターネット・ラジオに参入する為にレコード会社と交渉を始めていると書いたからだ。iTunesを運営するアップルはiTunes Storeに続くビジネス・モデルとして、従来から何度も噂されていた、1曲を1ドル前後でダウンロードして買うよりも10セントくらいなら買わずに聴くだけのストリーミング・サービスでいいという消費者向けのビジネス・コンセプトがあった。

音楽をインターネットでタダで聴きたかったら既にアメリカにはメディア最大手のクリアー・チャンネルが運営するiHeartRadioやスウェーデン生まれのSpotifyがある。アップルがiTunesストアーを始めたのが2003年。アップルのインターネット・ラジオ・サービス、無料なのか広告が入るのか、iTunes StoreやiCloudとどう連動するのかウォール・ストリート・ジャーナル紙は明らかにしていない。いずれにせよパンドラにとっては大きな脅威になるだろう。レコード会社にとってはアップルがパンドラ並みに原盤使用料を支払ってくれるのなら大ウェルカムだ。アップルなのでグーグル(アンドロイド)向けにはアプリを提供しないという。

また先週4日、業界誌ビルボードはフィンランドの携帯端末メーカーのノキアがマイクロソフトと組んでウインドウズフォン8用のスマートフォンを発売する計画を明らかにした。それに付随して無料の音楽ストリーミング・サービス、「ノキア・ミュージック」をスタートすると発表した。今年(2012年)の後半から来年(2013年)にかけて、アメリカのストリーミング・サービスやインターネット・ラジオは戦国時代になる。

余談だが、インターネット・ラジオやストリーミング・サービスが既存のラジオ局を駆逐するという馬鹿げた意見がある。アメリカでラジオを聴いた事がない人達の発想。アメリカのラジオ局はいかに地域に密着した放送をするかが基本中の基本。その町がどんな人種で構成されていて、年齢層、収入、文化等を勘案し、曜日や時間帯で、天候等で選曲する。

月曜日の朝雨が降って会社や現場に行きたくない労働者にはブルース・スプリングスティーンの「明日なき暴走」をかけ、ケツを叩く。普段カントリーをかけないロサンゼルスのTOP40ステーションKIIS-FMが、テイラー・スウィフトの「ウィー・アー・ネヴァー・エヴァー・ゲッティング・バック・トゥギャザー」をかけてリスナーを驚かす。全てラジオ局の選曲者の腕。IT関係者はラジオが地域密着メディアという事が理解出来ないのだろう。日本では東北大震災で最も信頼されたメディア、それがラジオだった。

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