『未来は音楽が連れてくる』〜日本が気づかないソーシャルミュージックの大席巻

榎本幹朗氏榎本 幹朗(えのもと・みきろう)

1974年 東京都生
上智大学英文科出身。大学在学中から映像、音楽、ウェブのクリエイターとして仕事を開始。2000年、スペースシャワーTVとJ-Wave, FM802、ZIP-FM, North Wave, cross fmが連動した音楽ポータル「ビートリップ」にて、クロスメディア型のライブ・ストリーミング番組などを企画・制作。2003年、ぴあ社に入社。モバイル・メディアのプロデューサーを経て独立。現在は、エンタメ系の新規事業開発やメディア系のコンサルティングを中心に活動中。
Facebook:http://www.facebook.com/mikyenomoto
Twitter:http://twitter.com/miky_e


リアルロックス 青木高貴氏青木 高貴(あおき・たかよし) 株式会社リアルロックス代表

学生時代に出会った木根尚登、宇都宮隆がプロデビューを目指し結成したロックバンド「スピードウェイ」のマネージャーとなる。その後、小室哲哉が参加し「TM NETWORK」を結成。1984年にEPICソニーからデビューした彼らを、マネージャーとして陰で支えた。「TM NETWORK」解散後は、宇都宮隆、木根尚登、葛城哲哉のソロデビュー、浅倉大介のユニットaccessなどを手掛ける。1996年、木根尚登、宇都宮隆の独立を機に、葛城哲哉、浅倉大介とともに株式会社リアルロックスを設立。その後、TM Revolution、岡村靖幸、宮本浩次、馬場一嘉などのプロデュースやマネジメントを手掛ける。2009年、iTunes Storeとパートナーレーベル契約を締結。現在は音楽ストリーミングステーション「MUMIX.net」を運営し、400組超のアーティストの作品を世界中にディストリビュートしている。

Facebook:http://www.facebook.com/takayoshi.aoki1
Twitter:https://twitter.com/TakayoshiAoki


【特別対談2】 アメリカはSpotifyではなくPandoraとiTunesで回復


日本の音楽業界に起きた情報鎖国

青木:レコード会社の上層部にもたくさん知人がいるのでいろいろ聞いてみるんですが、ほとんどその種のことに関しては知らないのか隠してるのか?というぐらい皆要領を得ないんですよね。

榎本:音楽放送の将来ってレーベルにとっても大事な課題なんですけどね。

青木:ちょっと大げさかもしれませんが、聞きたくもない、知りたくもないっていう雰囲気ですよ。

榎本:僕、連載してて「こんな情報どっから取ってきたの?」ってよく言われるんですよ。「よく知ってるね」って。ひどいときは「情報操作してるんだろう」って。でも僕が記事に載せてる情報ってbillboard.bizとかguardianとか、インターネットのニュースにぜんぶ載ってるんですよ(一同笑)

青木:英語で全部オープンになってる情報ですよね。

榎本:で、3分の1ぐらいはIFPI(国際レコード産業連盟)とかBPI(イギリスレコード協会)、RIAA(アメリカレコード協会)のレポートから取ってきてて。でもそういうのって業界じゃ基礎情報のはずですよね。でも、そこから取ってきて掲載すると「えー!?そうなの!?」みたいな反応が返ってきて。僕は「ちょっと待って下さいよ」と(笑)。

少なくもIFPIが出しているようなレポートは日本でも共有して欲しいなと。なんで日本語になってないのかなと、いま僕もびっくりしてる状態です。

ーー国内のセミナー等でIFPIのレポートがテキストに使われてるとか、そういう話はないのですか?

榎本:エイベックス・ミュージック・パブリッシングの谷口さんみたいな国際派の方が、講演の資料に使われてるのは、拝見してます。IFPIのレポートを見てると、SpotifyとかPandoraの話ってふつうに出てくるんですよ。いまスウェーデンはSpotifyで調子がいいぞとか、アメリカはPandoraとiTunesががんばってるぞとか。

「マイナス成長してる物理売上のシェアを減らして、急成長してるストリーミング売上のシェアを伸ばすのがレコード産業復活の鍵」ってSpotifyの章でまとめましたが、これ、僕独自の過激な意見じゃなくて、イギリスだったらBBCの記事に載ってるような話なんです。それが全く日本に伝わってきてないというのは…。

青木:一番よくないのは、IPで日本からのアクセスを遮断されてるじゃないですか? SpotifyもPandoraも。We7やgroovesharkくらいがなんとかアクセスできるぐらいで。あとはVPN等を使ってアクセスしないとだめだし、VPNでアクセスできたとしても、「グリーンカードの番号を入れてください」とか、アラートが次から次へと表示されて嫌になっちゃう。こうした遮断が始まる前に、もっとみんなに見てもらえば早かったと思うんですよ。IPの遮断で鎖国みたいになったかなと。

ーーそうですね。

青木:アクセスを遮断している理由は、ライセンス契約の維持を目論む海外レーベルの意向でしょうね。

榎本:海外の客に聴かせると、広告モデルが成り立たないというのもありますけど、そうかもしれません。

青木:世界で一番高いライセンス料を払ってくれる国との契約を維持したいと思うのは当然でしょうね。まさに、鎖国です。音楽業界の人たちが実体験できる環境なら理解も進むんだろうけど。

ーー日本の音楽業界じゃ皆がリアルな体験をしてないまま話が進んじゃったって事ですね。

青木:そうです。そこなんです。

榎本:だから今、エージェントさんはレコードメーカーのIPだけでも開けてもらって、社内からは体験できるように進めてるそうで。レコードメーカーの社内に出島をつくってるような話です。


音楽フェスとストリーミング

青木:それって、テレビ番組をFacebookで共有するという話題に通じてくるんです。最近、放送業界がSNSとの距離を近くして、SNSを使って新たな時代に入るみたいな情報を出してるじゃないですか? SNSにアップされるユーザーのコメントだけ共有してるだけなのに。番組のオリジナル映像をそのまま共有できない限り、ヨーロッパやアメリカみたいにはならない。

榎本:欧米の放送だと映像もネットに解放してますね。

青木:ところが日本じゃ映像は共有させないで、自分たちに都合のいいコメントだけ。

ーー放送局がコメントを選んで載せてるわけですね?

青木:あくまでも「テレビを見て、感じたことをばんばん書いてね」っていう話しで、「ばんばん書いてくれたらそれをまとめるからね。まとめてまたみんなに見せてあげるから。で、また感動したりいいなと思ったらまたテレビ見てね」っていう。

もう、なんなのこれって(笑)。だけどヨーロッパもアメリカもそういうことで、今やSNS発のオリンピックが行われてるとか言われてるわけですよ。

NHKはがんばって18番組くらいストリーミングをやっているんですけど、それだって全部網羅してない。カヌーはあるけどボートがないとか、しかもオンデマンドがない。ライブばっかりでしょ?

榎本:アメリカのコーチェラ・フェスがライブ映像をネットに全部流したじゃないですか。「日本の音楽をどう世界に出そうか」って話題、よく出てきますけど、フジロックやサマソニをネットでライブストリーミングして、洋楽の大物バンドの合間に、アジカンやサカナクションみたいな日本のバンドの中継がスポスポッて入ってきたらそれだけで、日本の音楽を世界に告知できると思いますよ。だから、流してあげればいいと思うんですけど(笑)

青木:番組自体を共有できちゃえばいいわけじゃないですか?日本人の大好きなタイムラインも、あってもいいけど、基本的にはタイムシフトですよ。24時間いつでもじゃないと「こんないいイベントがあったんだ」と思ってぱっと見ても終わってたんじゃ意味ないじゃないですか。だからそのどっちも含めて直に共有できればいいんですよね。

榎本:ニコニコ動画のように、画面の上にコメントをかぶせるのは、本来、音楽ビデオにはあまり合ってないですけど、ニコニコのおかげで、タイムシフトであっても時間を共有するカルチャーは、日本ではもう出来あがりました。そういうのを上手く使っていけば世界に伝わると思うんですよね。

青木:そうですね。だから誰が見てるかわからないようなテレビなんかは当てにしてないんだから、どんどんインターネットをやってほしいわけですよ。出演者としては全然、賛成だと思う。そのほうが有り難い。でも、高い放映権料をもらえない限りライセンスしないとか…

ーーフジロックもネットは無い?

榎本:本格的なのはないですね。

ーーネットで中継したら見に来る客が減ってしまうのではないかと心配してるからなんでしょうか?

榎本:コーチェラ・フェスみたいに、海外に配信する分には特に差し支えないはずなんですけどね。

ーー国内はともかくね。逆に海外に流したら、海外、特にアジアから見に来てくれる人が増える可能性もありますよね。

榎本:そうです。

ーーちょっともったいないですよね。あれだけのアーティストが集まってるんですから。

青木:世界中のサッカーの試合って、リアルタイムでヨーロッパの最高峰の試合からメキシコリーグに至るまで、全部ライブストリーミングやってるんですよ。

ーーそこにいかなきゃダメですよね。

青木:(音楽も)そこにできる限り近づきたいものですね。


特別連載企画『未来は音楽が連れてくる』榎本幹朗氏 NEWマーク画像【音楽業界関係者必見!】
日本の音楽産業は鎖国状態?
世界の最新音楽ビジネスモデルを分析した特別連載特集。

連載第62回 日本は「次の大物」を創りうるのか〜スティーブ・ジョブズが世界の音楽産業にもたらしたもの(14) <11/30 更新!>

NEWマーク画像【特集】ミレニアル世代のアーティストが創る新たな音楽シーン
2015年に世界の音楽産業で史上初めてデジタルの売上がフィジカルを上回り、ライブ市場が急拡大するなど…

「ヒット」を再定義して音楽の未来を描く『ヒットの崩壊』著者 柴 那典氏インタビュー
音楽ジャーナリスト・柴那典氏による著書『ヒットの崩壊』が発売された。CD時代の終焉が迫り、オリコンラ…

独立系レーベルの楽曲をメジャーと同等の条件で世界に配信 デジタル・ライツ・エージェンシー「マーリン」インタビュー
世界中の独立系レーベルのデジタル権利を支援する団体マーリンの日本オフィスであるマーリンジャパン…

「歌詞を味わう」体験をアップデートする 〜歌詞が浮き出る革新的スピーカー『Lyric speaker』インタビュー
音楽と同期して歌詞が表示される次世代型スピーカー『Lyric speaker』が各所から注目を集めて…

「音楽オタク」としてファンの望む音楽映像を届け続ける WOWOW 取締役コンテンツ本部長 山下浩志郎氏インタビュー
開局当初よりビックアーティストからマニアックなアーティストまで、硬軟入り交じった番組プログラムで、音…

【後半】『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー スタジオ・ミュージシャンの生演奏の素晴らしさを伝えたい 梶田昌史
70〜80年代の活気に満ち溢れたレコーディング・スタジオで音と格闘を続けていた編曲家に焦点を絞り、た…

【前半】『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー「熱い音楽をどうやって作っていくか」川瀬泰雄×吉田格
70〜80年代の活気に満ち溢れたレコーディング・スタジオで音と格闘を続けていた編曲家に焦点を絞り、た…

日本人として世界で戦うハイブリット企業 ディグズ・グループ 代表取締役 工藤与明 × 音楽プロデューサー 今井大介 対談
STY(エス・ティ・ワイ)、HIROを筆頭に次世代クリエイターが数多く所属するクリエイティブ・チーム…

世界のトップ・アーティストが指名するマスタリング・エンジニア ー メトロポリス・スタジオのスチュアート・ホークスに会ってきた
過去25年間におよぶマスタリング・エンジニアとしての経験とノウハウを持って、無名の新人からトップ・ア…

【後半】新たな音楽&才能との出会いは一種の“麻薬”である
モダンフォークカルテット、ソロとアーティスト活動を通じて、60年代後半のアメリカを“実体験”した麻田…

利用者の約7割が「CD / DVDを購入するきっかけになる」と回答 パッケージの価値を高める「プレイパス」サービスが拡大 利用者の約7割が「CD / DVDを購入するきっかけになる」と回答 パッケージの価値を高める「プレイパス」サービスが拡大
CDやDVD/ Blu-ray Discに封入されているパスコードを入力することで、リッピングなしに…

インターネットテレビの視聴“体験”を“習慣”に変える AbemaTV 編成制作局長 藤井琢倫氏 インタビュー インターネットテレビの視聴“体験”を“習慣”に変える AbemaTV 編成制作局長 藤井琢倫氏 インタビュー
2016年4月に開局したインターネットテレビ局「AbemaTV」が11月に1,000万ダウンロードを…

日本初!ダンス・ミュージックの国際カンファレンス&イベント「TOKYO DANCE MUSIC EVENT」開催 日本初!ダンス・ミュージックの国際カンファレンス&イベント「TOKYO DANCE MUSIC EVENT」開催
ダンス・ミュージックに焦点をあてた日本初の国際カンファレンス&イベント「TOKYO DANCE MU…

【13th TIMM】BABYMETAL、スカパラ・・・日本人アーティスト海外公演の舞台裏を語る「キー・プレーヤー:ザ・ブッキング・エージェント」 【13th TIMM】BABYMETAL、スカパラ・・・日本人アーティスト海外公演の舞台裏を語る「キー・プレーヤー:ザ・ブッキング・エージェント」
10月24日〜26日にかけて開催された、日本音楽の海外進出を目的とした国際音楽マーケット「第13回東…

新しい時代を鳴らす楽器クリエイターを輩出したい オリジナル楽器のコンテスト「THE 楽器 DE SHOW!?」が開催 新しい時代を鳴らす楽器クリエイターを輩出したい オリジナル楽器のコンテスト「THE 楽器 DE SHOW!?」が開催
ソニーミュージックによるエンタテインメントの学びの祭典「SONIC ACADEMY FES 2016…

【チケット不正転売問題】「コンサート文化について考え直す岐路に立たされている」 — ACPC会長/ディスクガレージ代表取締役社長 中西健夫氏インタビュー 【チケット不正転売問題】「コンサート文化について考え直す岐路に立たされている」 — ACPC会長/ディスクガレージ代表取締役社長 中西健夫氏インタビュー
8月23日、日本音楽制作者連盟(以下、音制連)、日本音楽事業者協会(以下、音事協)、コンサートプロモ…

多彩なビジネスセミナーで海外進出の糸口をつかむ 「第13回 東京国際ミュージックマーケット(13th TIMM)」10月24日より開催 多彩なビジネスセミナーで海外進出の糸口をつかむ 「第13回 東京国際ミュージックマーケット(13th TIMM)」10月24日より開催
日本音楽の海外進出を目的とした「第13回 東京国際ミュージックマーケット(13th TIMM)」が1…

ニューミドルマン座談会「ナイトエンターテイメント」と「フェス」、注目シーンの最先端から見た、新時代音楽ビジネスの可能性 ニューミドルマン座談会「ナイトエンターテイメント」と「フェス」、注目シーンの最先端から見た、新時代音楽ビジネスの可能性
IT、デジタル化の波は、音楽、エンターテイメントにも訪れている。新しい時代に対応した人材を育成するこ…

バザール12020701【居抜スタジオ】 プロユーススタジオ機材を大放出中!
新商品【居抜スタジオ】が出品されました!NEWマーク画像