『未来は音楽が連れてくる』〜日本が気づかないソーシャルミュージックの大席巻

連載第13回 次世代音楽放送の王者Pandora Radioに挑むSpotify


■echonest、あるいはSpotifyラジオ

Pandora Radioの創業者Tim Westergren(ティム・ウェスターグレン)
▲Pandora Radioの創業者Tim Westergren(ティム・ウェスターグレン)。プロのジャズピアニストだったティムは、究極の楽曲レコメンデーションエンジンを開発。ユーザーの趣味嗜好を忠実に反映した音楽をかけることで『放送』の概念をも変えた。全米で月間アクティブリスナー数5300万人(※1)を誇り、地上波ラジオを含めたレーティングでもトップに君臨(※2)。史上初めて地上波放送に完勝した次世代音楽放送のチャンピオンだ
出典:Pandora Media
(※1 http://investor.pandora.com/phoenix.zhtml?c=227956&p=irol-newsArticle&ID=1702994&highlight= )
(※2 http://rbr.com/pandora-largest-adult-18-49-radio-network/ )


Spotifyプラットフォームをローンチさせた日。Spotifyは、ラジオ機能をリニューアルした。iPhoneにはアップル社製のアプリ、たとえば『音楽』や『天気』がデフォルトで搭載されているが、同じように『ラジオ』アプリを、Spotifyはデフォルト・アプリとして再登場させた。

『ラジオ』は、Spotify音楽アプリのなかでも別格の存在といえる。この『ラジオ』だけは、エックはサードパーティにまかせられなかった(以降、『Spotifyラジオ』と呼ぶ)。このアプリひとつで、Spotifyのビジネスモデルを左右するほどの重要度を持っているからだ。

Spotifyラジオには、Pandora RadioやLast.fmでおなじみのシード・ソング機能も備わっている。

リニューアル以前のSpotifyラジオは、Last.fmやPandora Radioを経験した耳には、選曲力が低すぎた。だが、今回のリニューアルで、耳の肥えた多くのユーザーが「使える」と思ってくれるレベルに到達した。


■Spotifyラジオのメリット1 『セレンディピティ』の世界

Spotifyラジオが「使える」レベルに達したことで得ることができる、大きなものがみっつある。ひとつめはソーシャル・ミュージック・メディアの質を決める、このセレンディピティを大幅に改善できることだ。

セレンディピティは、ソーシャルミュージックの中核を成す大事なコンセプトだ。ソーシャルミュージックは、音楽の感動を共有すること始まる。そしてセレンディピティが高いサービスであるほど、この感動を創出するドライブが強い。

読者のみなさんもfacebookやTwitterをイムラインを見ていて、YouTubeのビデオクリップがお知り合いから紹介されているのを見て、チェックしてみる、あるいはスルー、という体験をしていると思う。

もともと好きだったり、話に聴いていたアーティストのビデオならチェック。よくわからないのはスルー。でも、複数の知り合いが投稿してたり、Likeが集まってたりすると、はじめは興味がなかったアーティストの音楽ビデオもチェックする。このとき、知り合いから背中を押されて、もともとは興味が無かったが、新しいお気に入りのできる機会が訪れる。ソーシャルメディアのもたらすセレンディピティの一例だ。

ここでSpotifyがあると、ビデオクリップを見て気に入ったアーティストの人気曲TOP5や最新アルバムを通して聴いてみようか、という流れが起こる。ここで起こるセレンディピティは、同じアーティストの違ったお気に入り曲との出会いである。

ここまでが、Spotifyラジオ以前のセレンディピティだ。Spotifyラジオがあるとこの先にさらなる出会いが起こる。

あなたは、いまの気分に合ったお気に入り曲を右クリックして「ラジオをスタート」を選ぶ。そうすると、その曲をシード(種)に、自分の趣味と似通った曲が、様々なアーティストのアルバムから選曲されたプレイリストが自動作成され、再生される。これがSpotifyラジオだ。結果、iTunesの自動プレイリスト作成では起こらない出会いが起こる。今まで買ったこともないし、そもそも名前すら知らなかったアーティストの曲を聴いて、感動を覚える機会が訪れるのだ。

ここで重要なのは、選曲のセンスである。リスナーの趣味に合った形で、かつリスナーの想定外のアーティストを紹介しなければ、「感動」は起こらず、セレンディピティは発生しない。つまり、セレンディピティを起こすには、音楽のレコメンデーション・エンジンの質が問われるのである。

Spotify音楽アプリの登場にあわせて、Spotifyはもともとあったラジオ機能をリニューアルしたわけであるが、見た目や機能面は以前とさしたる違いがあるわけではなかった。大幅に改善されたのは、選曲力、すわなちレコメンデーション・エンジンの質だった。

インターネット登場以前、新たな音楽との出会いは、おもに音楽放送が起こしていた。音楽放送を聴いて、CDを聴く。Spotifyラジオの選曲力が実用レベルに到達したことで、Spotifyひとつだけで、カーステやコンポの役割を一手に担うことが出来るようになったわけだ。

結果、ユーザーがSpotifyにだべっている滞在時間は大きく伸びる。そうすると、じぶんと同じ時間にSpotifyで音楽を聴いている、Facebookフレンドが増えることになる。結果、更なるセレンディピティが起こる機会が訪れる。友人が聴いている音楽をチェックするチャンスである。

Spotifyプレイヤーの右側には、FacebookやTwitterと同じようなタイムラインがある。ここにFacebookフレンドがSpotifyで聴いている曲が次々と流れてくる。じぶんのプレイリストにも飽きてきたとき、このタイムラインを眺め、友だちがある曲に、お気に入りの星マークをつけたり、プレイリストを作成していたらチェックしてみたりする。タイムラインを見て、似た趣味の音楽を聴いている顔アイコンをクリックして、その友だちのお気に入りTop5を聴くのも、手っ取り早く新しい音楽をみつける機会を与えてくれる。

つまり、YoutubeとTwitterで起こっていたソーシャルメディアの起こすセレンディピティが、Spotifyの中でもおこる訳だ。こうしてセレンディピティの良循環がSpotifyの中で起こることになる。これが、Spotifyラジオが、他のSpotify音楽アプリと一線を画して重要な理由のひとつめだ。


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